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「トランプ・ショック」から立ち直るまで

アジア人は私だけ~米大学留学記(7)

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大波乱のアメリカ大統領選を経て、トランプ新政権発足から早3カ月が経ちました。今回は番外編として、黒人大学コミュニティの中で体験したアメリカ大統領選とその後についてレポートさせていただきます。

「トランプ」と口に出すだけで村八分?

言うまでもなく、スペルマンはそもそも圧倒的に民主党支持者の多いコミュニティです。とりわけ今回の大統領選に関しては、「民主党候補者であり、女性であり、何より"トランプでない"」という理由でクリントン候補に入れる以外の選択肢はないと当然のように考えられていました。キャンパスのあちこちにクリントン候補の選挙シンボルが張られ、「トランプ」の4文字を出すだけで村八分にされそうな空気すらありました。

ジョージア州は元々保守派の支持基盤で、実際の選挙も共和党が取りましたが、少なくともこのキャンパス内にいる限り、トランプ大統領誕生の可能性を感じることは全くといっていいほどありませんでした。

投票当日には、隣の大学で大々的に開催された開票中継イベントに参加しました。例によってDJも登場し、大スクリーンに青い州が増えるたび皆歓声をあげ、逆に共和党がひとつ州を取れば士気を上げるダンスをして、会場全体でクリントン候補を応援する空気がありました。しかし、結果は皆さんご存知の通りで、「葬式会場」と化した大ホールでのイベントは結局12時をまわったあたりで打ち切られ、最後は残った数人で友人のパソコンに張り付き、結果を見届けました。

静まり返ったキャンパス

選挙から2、3日はキャンパスが不気味なくらいに静まりかえっていました。選挙翌日の政治学の授業も全員魂が抜けているようで議論どころではなく、先生が気を確かに持て、となだめ始める始末。いつもうるさすぎるくらいににぎやかな皆の姿を見ていた分、さすがに私も気が滅入りました。

しかし一方で、選挙直後から今に至るまで、カリフォルニア等一部の地域で見られた抗議運動がキャンパス周辺で起こることはなく、学生たちは案外冷静に結果を受け止めているように見えました。選挙結果について、少なくとも公の場で感情的になる人は少なく、むしろ私が感じ取ったのはどちらかというと落胆と、ある種の諦観のようなものでした。

最も印象的だったのが、ある学生の言葉でした。「この8年間が私たちにとって快適すぎたんだと思う。今の状況は私たちにとって決して喜ばしいものではないけれど、それは裏を返せばこの8年間ずっと"快適でなかった"人たちがいるということ」

開票翌日にキャンパスで行われた選挙に関する討論会は、「今回の大統領選は私たちコミュニティにとって"悲劇"だった」という言葉から始まり、淡々と結果の分析・今後の対応が話し合われました。そこで何人もの参加者が口にしていたのが、「選挙だけではない」ということでした。たとえ選挙結果が望んだものではなかったとしても、黒人コミュニティとして声を上げる方法は他にもあり、政治運動でも何でも、あらゆる方法で意見を表明し続けることが大切だ、との主張に、会場にいた多くの人が涙を流しながら拍手を送っていました。

これは完全に私の主観ですが、黒人コミュニティはおそらくこれまで同じような落胆を何度も味わってきたのだろうと感じました。そもそも数の上で負けている黒人コミュニティにとって、自分たちの理想を叶える一番の手段はいつの時代も選挙ではありませんでした。公民権運動から今日のBlack Lives Matter運動に至るまで、アメリカの黒人たちは常に、自らの権利を自らで掴むために苦悩と努力を続けてきました。今回の選挙は黒人コミュニティにとって、マイノリティとしての団結を再確認し、再び立ち上がろうとするひとつの通過点であるように思えました。

と、ここまで書いてきましたが、実は、私は選挙の翌日に「トランプに入れた」という学生が他の学生と言い争いをしているところを目撃したことがあります。詳しいことはよく分かりませんが、「この国には彼のような人間が必要」と述べ、非難の言葉を浴びせられる彼女がこれまで「隠れトランプ支持者」でいた理由は容易に想像できました。前回書いたように、人種・階層で住む地域も生活レベルも明確に異なるアメリカで、トランプ大統領を支持する声が一切聞こえてこない環境にいると、アメリカの「分断」とはこういうことか、と少し怖い気持ちになります。

実は少ない「外国人」学生

新政権発足後、世界中で非常に大きな関心を集めたのが特定国からの入国禁止措置を定めた大統領令だと思います。が、実際のところ大学としての反応はそれほど大きくはありませんでした。

学長から大統領令への遺憾の意を表明するメールが届いたのは大統領令署名から約1週間後のことで、1、2日中に抗議の意思を示し、学生へのサポートを開始した大学があったことを考えると比較的遅れての対応だったといえます。さらに、メールの本文に留学生に対する言及はなく、「本学学生へのいかなる影響も確認していない」という記述すらありました。

しかし、スペルマンにはアフリカ移民1世・2世の学生も在籍しており、指定国のひとつであるソマリア出身の移民を母に持つ学生や、グリーンカードを取得したばかりのクラスメートもいたので、彼女たちが「大学は学生のことを何も知らないの?」と激怒していたのはとても印象に残っています。

ムスリムの友人がいるなどの理由から、個人レベルでは怒り狂っている学生もいましたが、大学全体の空気として、やはり当事者ほどの深刻さで問題を捉えている人はそこまで多くなかったように思います。理由を推測するならば、スペルマンは元々留学生が20人程度と極めて少なく、外国籍の学生はおそらく全体の1%に満たないので、実際のところ外国人に対する入国禁止令にそこまでの関心を払っていなかったというところはあるのかもしれません。それ以上に、話題が多すぎていちいち構っていられなかったのかもしれませんが。

マイノリティに寄り添えるリーダーを目指す

では、スペルマンで新政権の何が注目されてきたかというと、それは「人事」です。大統領が要職にどのような人物を置くかについては皆注意を向けているようで、授業で話題になることも多くありました。特に司法人事は、裁判で何かと不利になりやすい黒人にとって、1人の存在が非常に大きな影響をもたらします。また、男性を重用する大統領の姿勢を批判する意見も非常に多く、マイノリティにとって「誰がリーダーになるのか」ということは想像以上に大きな意味を持つのだと感じました。

もちろん、マイノリティが世の中のあらゆるマイノリティを尊重しているとも、マジョリティが全員マイノリティの気持ちを理解できないとも思いません。そもそも、様々な要素を併せ持つ人間を「マジョリティ」と「マイノリティ」と切り離すことも厳密には不可能でしょう。それでも、骨折してギブス生活をしてみて初めてその不便さが理解出来たり、目を閉じて歩いてようやく点字ブロックの意義に気づくようなもので、黒人として社会に埋め込まれた差別の構造を理解しているからこそ、人種マイノリティに真に寄り添ったリーダーになれる。スペルマンが黒人女性のリーダー育成を続ける意義はそこにあるのだと思います。

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