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[ career-働き方 ]

リアルタイム就活ストーリー(10)OB・OG訪問が続く毎日
周りの人と比べてあせったら

西山昭彦 authored by 西山昭彦一橋大学特任教授
リアルタイム就活ストーリー(10) OB・OG訪問が続く毎日周りの人と比べてあせったら
写真と本文は関係ありません

 インターンで知り合った2人の3年生は、会社説明会の帰り大手町駅で再会してから情報交換のメールのやりとりを始めた。そして、就一が声をかけて、この日初めて一緒にごはんへ。

「あれ、もうこんな時間か」

 待ち合わせは18時。2人ともその日はOB・OG訪問の後でスーツだった。というより、会うのは3回目だが、すべて就活がらみだったのでいつもスーツ姿だ。会話がぎこちなかったのも最初の5分だけで、すぐに話は盛り上がった。

 就一は、今一番進んでいる会社の話を始めた。「インターン先の大手IT企業が熱心で、先日担当課の課長の面接を受けた。来週部長面接で、うまくいけば内定1号になるかも」。

 活子は、早くも気負けしそうになる。誰でも知るIT大手。自分ならそこが決まればもう就活を終えたいようなところだ。心なしか小さい声になってしまう。「あのう、私はB to Bの会社で、たぶん知らないと思うけど、伸びている電子部品企業と運輸の会社。やっと1回目の面談が始まったところ」

 「そこなら両方、俺知っているよ。それぞれ、業界2位と1位じゃん。渋めの優良企業だよね」

 就一が社名を知っていてくれたのが、素直にうれしかった。心が開き、それからの2時間はあっという間だった。料理はパスタとサラダだけで、あとはドリンク。食べ終わっても話し続けていたが、就一が「あれ、もうこんな時間か。今日も帰ってES出さないといけないからなあ」と言い出した。

 それは活子も同じだったが、もう帰るのが残念だという気持ちのほうが強かった。でも、それを隠して「そうね。そろそろ行きましょうか」。支払いは割り勘。別れ際、「また話そうよ。でも俺、酒飲みながらのほうがいいんだけど」。「わかった。でも次に会う時までに、就一君は何社も内定とってるでしょうね。私もがんばってみる」。

人の何倍もやらないと

 就一は第一志望群の会社を業界問わずトップクラスの30社をリストアップし、ESを毎日のように出し続ける。一方で、その中の企業と着実にリク面、面接をこなし内定に向かってまたたく間に近づいている。活子は「確かに、就一君は話がうまくて、私も時間の経つのを忘れるぐらいだから、社員の評価も高いはず」と思う。

 それに比べて、自分は小心者で話下手で、いけないと思っているのにすぐ「えーと」「あのー」と言ってしまう。彼との間に大きな差を感じる。「できる人って、皆ああなのかな。私なんて勝てっこないよな」。少し落ち込み、ノートに今日のまとめを書く手がいつものように進まない。

 そんな時、大学キャリアセンターからの一斉メールが来た。「来週、グループワークの模擬練習があります。よかったら参加しませんか」。活子は、手帳で他の予定がないことを確認すると、即座に申し込んだ。

 「人の何倍もやらないと、私なんてだめだから。こういう機会は全部出席しよう」

 そのすぐ後、前回面談した上場企業だが地味で堅実な会社から電話が来た。「あなたのような人に会社を受けてもらいたいと思っています。女性管理職を紹介するので、会ってみませんか」。自分の将来像を考えるうえでも、会ってみたいと前から思っていたので、こちらも「ぜひお願いします」と即答した。

 ところが電話を切った後、「社員と会うのはすべて自分が評価される場でもある」という先輩の言葉を思い出し、急に緊張感を覚えた。再びノートに向かい、当日聞きたい質問を書き出した。「経理の仕事の概要は説明会で聞きました。私は2年のときに簿記2級を取得したのですが、てきぱきできるほうではないのでちょっと心配です。経理の仕事にはどういう難しさがありますか」。気づくと、質問は9つにもなっていた。
(2017年4月19日現在)