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チェック!今週の日経(7)住友商事が水ビジネス
インフラ輸出に挑むワケ

チェック!今週の日経(7) 住友商事が水ビジネス インフラ輸出に挑むワケ

 日経の研修・解説委員や日経カレッジカフェの編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。この1週間も、北朝鮮に対する米国の力の外交を示す一連の動きが大きなニュースになる一方、東芝問題でも監査意見なしの決算発表や事業売却を巡る様々な動きがニュースになるなど、大きなニュースの続報が相次ぎました。そんな中、日本企業はどんな動きを見せていたのか。今回は大手商社による海外事業のニュースを取り上げてみましょう。

新興市場で水ビジネス

 4月11日の朝刊企業総合面にこんなニュースが掲載されました。

住商、ブラジルで上下水道参入 民間最大手に280億円投資(4月11日)

 大手商社の住友商事がブラジルで水ビジネスに参入することを報じたものです。ブラジルの上下水道事業は米国、中国、日本、フランス、ドイツに続く世界6位の規模。ですが、下水道では普及率50%程度とまだ低く、成長余力が巨大なマーケットです。そこに効率的でトラブル対応にも強い日本流の管理システムを導入して、市場の拡大を進めようというわけです。買収する事業の規模は年間670億円の規模ですが、これを5年間で倍増させるのが住友商事の計画です。

 水ビジネスは日本の成長戦略に掲げられているインフラ輸出のひとつです。インフラ輸出というと、新幹線プロジェクトのように政府を相手に巨額のシステムを一括受注するイメージですが、様々なバリエーションがあります。上下水道は公共事業体が手がけるのが一般的でしたが、最近では民営化して効率よい経営をしようという流れが世界的にあり、ブラジルでも衛生公社による運営を民営化していく流れにあります。そこを参入の機会と住友商事はとらえたわけです。

記事
日本式の管理ノウハウを提供する(サンパウロ州の下水処理場)

 住友商事は20年以上、トルコや中国、英国などで水ビジネスを展開しており、有望な新市場としてブラジルに目をつけました。他の商社も丸紅が2014年に官民出資ファンドの産業革新機構と組み、ポルトガルの水事業最大手を買収。伊藤忠商事は16年、中東のオマーンで海水淡水化施設の運営に参画するなど、世界各地でビジネスを広げています。水ビジネスの世界市場は水メジャーといわれる海外勢が強い分野ですが、高い技術力を背景に各地で日本勢が食い下がっている状況です。

 政府や地元自治体などとの調整が欠かせないインフラ事業だけに商社の持つ総合的な調整能力がカギになります。商社のビジネス領域はこうした公共的な事業領域でも大きく広がっていることを示すニュースです。

原発輸出でも新たな動き

 もうひとつインフラ輸出をめぐるニュースを紹介しましょう。

日本原電、英で原発運転・保守 米社と合弁(4月13日)

 日本原電は正式社名を日本原子力発電といい、日本の電力会社9社が過半を出資する原子力発電専業の会社です。国内の原子力発電所はほとんどが稼動を止めており、同社が運営する発電所も同様。非常に厳しい経営環境にあります。海外事業が活路ということで、英国の原発運転・保守という事業に乗り出そうというわけです。

 この英国の原発は2020年代前半の稼動を目指し、日立製作所の英子会社が計画しているものです。日立のもつ設備の技術に日本原電の持つ運転ノウハウを組み合わせることで、建設から運転・保守に至る一貫した体制ができ、よりスムーズなプロジェクトの進展が図れると期待されています。合弁会社の設立で組む相手の米国企業は電力会社で、米国で23基の原発を運転している実績があります。両社のノウハウを組み合わせることで様々な原発運転に対応することが可能で、英国のプロジェクトだけに留まらず、多くの原発プロジェクトに参画することを目指していきます。原発輸出では韓国、ロシアなどが設備建設から運転・保守までの一貫体制で受注を獲得するケースが多く、日立と日本原電の動きはこれに対抗できる体制をつくる意味合いもあります。

 東日本大震災以降、逆風が吹く原発ビジネスですが、世界ではなお主要な電力源としての期待があり、さらには稼動を止めた原発を安全な形で解体する廃炉事業という需要もあります。日本原電は日本初の商業炉の運転を手がけ、その商業炉を廃炉にするプロジェクトに震災前から時間をかけて取り組んできました。運転・保守での海外進出は蓄積した技術を生かす第一歩ともなるもので、成長戦略として期待が高いインフラ輸出の可能性を広げることになるでしょう。

(企画委員 水柿武志)

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