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賃金が支払われるのはどの範囲まで?

意外と知らないバイトの常識(2)

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NIKKEI STYLE

前回はバイト選びを取り上げました。今回は賃金と労働時間の関係を取り上げます。バイトをすると、まとまったお金が手に入るため、「お金をもらっている立場だから......」と、不当な扱いにも寛容になってしまいがちです。けれども、バイトをするときには皆さんは労働者であり、労働基準法などの労働法が適用される対象であることは前回に見た通りです。

労働時間に応じて適切に賃金が支払われているかどうかは、皆さんが労働者として正当に扱われているかどうかという、大事な問題なのです。

まずはクイズを2問

まずは次のクイズを考えてみてください。

Q1:店長に言われて開店の準備や片付けをしていますが、お店と合意した仕事はあくまで「接客」なので、接客以外の業務については、時間も短いし、アルバイト代は払わないことになっていると言われました。でも実際にお店のために働いたんだからアルバイト代はもらえますよね。 ○か×か。

Q2:アルバイトで毎回タイムカードに記録された時間のうち、15分未満が切り捨てられてアルバイト代の計算がされています。短時間でもちゃんと働いていることに違いはないのだから、アルバイト代の計算に入れるべきですよね。 ○か×か。

いかがでしょう? これらはいずれも、厚生労働省が作成した教材(※1)から抜粋したものです。

(※1)厚生労働省「『はたらく』へのトビラ~ワークルール20のモデル授業案~」(問題は第3章労働法クイズA・Bのp.14、解説はp.15)

準備や片付けも労働時間

Q1とQ2、いずれも正解は○です。

けれども実際には、準備や片付けの時間には賃金が支払われず、賃金は15分未満は切り捨てで計算されているといった事例は多くあります。そういう事例は、なぜ問題なのでしょうか。

開店の準備や片付けに要する時間は、一般的には労働時間と考えられます。「使用者の指揮命令下に置かれている時間」は労働時間であるからです(※2)。

(※2)厚生労働省リーフレット「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」p.3参照

お店で接客の業務をしている時間だけでなく、使用者の指示により、業務に必要な準備行為を職場で行った時間も労働時間にあたります。ですので、制服に着替えることや、引きつぎ記録を確認することなども労働時間であり、賃金が支払われなければなりません。

さらに接客業務が終了したあとにレジ締めを行ったり、店内を清掃したり、ゴミ出しをしたり、引きつぎ記録を書いたり、そういう業務を使用者の指示に従って行う場合も、それに要する時間は労働時間であり、賃金が支払われなければなりません。

例えばあなたの勤務時間が次のようである場合を考えてみましょう。

・シフト上の勤務時間は17時から21時まで。

・ただし、制服に着替えてからタイムカードを打刻し、5分前には職場に到着しているように求められている。

・9時に勤務を終了したあとは、タイムカードを打刻してから店内清掃をして、私服に着替え、帰宅している。

・時給が支払われるのは、17時から21時までの勤務の4時間分。

制服に着替え、5分前には職場に到着できるように「16:50」から着替え始めなければいけないとすれば、タイムカードの打刻は制服に着替えてからではなく、制服に着替える前の「16:50」に本来は行う必要があります。そこから労働時間は始まっているからです。5分前には職場に到着していることが求められるなら、その5分間の間に実際に業務を行うことがなくても、その5分間も指揮命令下の時間であり、労働時間です。

また、21時の勤務終了後に店内清掃を行って私服に着替えるのに10分を要するなら、私服に着替え終わった「21:10」にタイムカードを打刻するのが本来です。そこまでが労働時間だからです。

タイムカードは実際の労働時間に応じて打刻される必要があり、また、タイムカードに記録された労働時間について、15分未満切り捨てといった処理は認められておらず、1分単位で賃金は支払われる必要があります。

この場合、本来の労働時間は「16:50」から「21:10」までの4時間20分です。時給が960円だとすれば、1日の賃金は4,160円です。もし、17時から21時までの4時間分しか支払われないならば、3,840円です。1日あたり320円の違いがあります。同じ条件で週3日働いていれば、切り捨てられる額は、1カ月で4,000円近い額になります。

もし、あなたが働いて得た毎月の給与から、よくわからない名目で4,000円が差し引かれていたら、とんでもないですよね。でも実際は、準備や後片付けをタダ働きで行うことを求められていたり、15分未満切り捨てという処理が行われたりしているということは、それと同じなのです。

塾などの「コマ給」に注意

上記の例では勤務時間の前後に10分ずつのタダ働きが求められていた事例を紹介しましたが、より長時間のタダ働きが求められる場合もあります。塾などで「コマ給」分しか賃金を支払わないという場合がそうです。

「コマ給」とは、授業時間に対応した給与、という意味です。例えば60分の授業に対して1,500円という時給が設定されているとしましょう。他のバイトに比べれば、好条件に見えます。

けれども授業終了後にテストの採点を行い、生徒の質問に答え、さらに毎回の業務日誌をつける必要があり、それらに30分を要するなら、実際の労働時間は90分であり、実際の時給は1,000円です。中間試験・期末試験の予想問題の作成や、保護者との面談まで無給で求められるような場合もあり、そうなれば実質的な時給は最低賃金を下回る、ということにもなりかねません。

このように「コマ給」分しか支払わない、ということは違法であり、指揮命令のもとに行われる業務に要する労働時間に対しては賃金が支払われる必要があります。にもかかわらず、「コマ給」という支払い形態が従来は多かったため、厚生労働省が2015年12月に学生アルバイトの労働条件の確保に関する要請を行った際には、特に学習塾業界に対しては別途の要請文を出して適切な対応を求めました(※3)。

(※3)厚生労働省「学生アルバイトの労働条件の確保について要請しました」(2015年12月25日)

それに応じて、授業前後の業務にも賃金を支払うように対応を変えた学習塾もありますが、そうでない学習塾もあります。働いている学生が何も言わないなら、そのままにしておこうと考える会社もあるのが実情です。

休憩時間も「待機」が求められているなら労働時間

また、休憩時間に電話対応が求められていたり、お客さんが増えた場合には休憩を切り上げてお店にすぐに入ることが求められていたりする場合には、その休憩時間も労働時間に該当します。

労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を使用者は労働時間の途中に与えなければなりません(労働基準法34条1項)。この休憩時間は、自由に使えるものでなければなりません。

「電話がかかってきたら対応してもらう必要があるから、外に食べに行ったらダメ。お昼ごはんは、お店の控室で食べて」

このような指示がなされているなら、その時間は休憩時間ではなく「労働時間」に該当します(※4)。その時間が労働時間に該当するなら、その時間分は賃金が支払われる必要がありますし、本来の休憩時間は別途、与えられる必要があるのです。

(※4)上記の「※2」のリーフレットのp.3を参照

労働時間と賃金の関係について、他にも知っておくべきこと

研修やミーティングなども、それに参加することが強制であるなら、労働時間に該当し、賃金が支払われる必要があります。

深夜労働(夜10時から朝5時まで)には25%以上の割増賃金が必要なので、昼間の時間帯の時給が1,000円なら、深夜の時間帯の時給は1,250円以上であることが必要です(労働基準法37条4項)。

また、1日に休憩を除いて8時間を超えて労働した場合には、その時間外労働分についても、25%以上の割増賃金が必要になります(労働基準法37条1項)。普段の時給が1,000円なら、時間外労働には1,250円以上の支払いが必要なのです。

さらに、賃金はその全額を、労働者に直接、通貨で支払わなければならないことになっています(労働基準法24条1項)。ですから、タイムカードを打刻したあとでお店の片付けを求められ、「ありがとう、これ、お礼ね」と商品の売れ残りをもらっても、それで喜んで満足してはいけないのです。

記録を取って給与明細と照らし合わせて確認しよう

このように、働いた分の正当な賃金を受け取るために知っておくべきことはいろいろあります。ただし、実際に自分がどれだけ働いているかを把握していなければ、正当な賃金が支払われているかどうかを確認することもできません。

ですから、新しいバイトを始めた当初は、ちょっと面倒でも、毎日の勤務の記録を手帳につけてみてください。そして給与が出たら、その給与が実際の労働時間と対応しているか、確認してみることをお勧めします。

給与明細書は必ず渡さなければいけないことになっていますので(所得税法231条)、もらえない場合は遠慮なく求めましょう。会社によっては職場のパソコンから確認することになっている場合があるかもしれません。その場合も、遠慮なくパソコンで調べて、プリントアウトするなり写真を撮るなりして、よく確認してください。

「おかしいな」と思ったら、相談や対処行動を

「おかしいな」と思うことがあったら、早めに勤務先の責任者に確認しましょう。もし勤務先の責任者が誠実に対応してくれないなら、従業員向けの相談窓口に相談するなり、公的な相談窓口に相談するなり、対処行動をとってみましょう。公的な相談窓口としては、都道府県労働局が設けている総合労働相談コーナーや、厚生労働省が設けている労働条件相談ホットラインなどがあります。

お金に関する要求をすることには、皆さんは躊躇があるかもしれません。でも、お店で買い物をしておつりが少なかったら、「おつり、足りないんですけど」と言いますよね。商品の売買と同じように、皆さんは労働契約のもとで自分の労働力を提供しており、それに対する正当な賃金を得る権利があるのです。

摩擦を恐れて黙って我慢してしまうとしたら、それは人件費をできるだけ節約したいと考える使用者にとって好都合な事態でしょう。「従順な労働者」だと思われれば、さらに強く出てこられるかもしれません。

「相談する勇気」・「権利主張する勇気」を持ちたいものです。

法律監修:嶋崎量(弁護士・神奈川総合法律事務所)

上西充子(うえにし・みつこ)
 法政大学キャリアデザイン学部教授。法政大学大学院キャリアデザイン学研究科教授。1965年奈良県生まれ。労働政策研究・研修機構で7年あまり調査研究に従事したのち、2003年より法政大学へ。若者の学校から職業への移行過程と初期キャリアに関心。近著に、石田眞・浅倉むつ子との共著『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社、2017年3月)。

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