日本経済新聞 関連サイト

OK
liberal arts-大学生の常識

電子ブロックで学ぶIoT、
ソニーが塾とタッグ

電子ブロックで学ぶIoT、ソニーが塾とタッグ

 ソニーが教育分野で子どもの創造性を養っている。学習塾大手のZEホールディングス傘下の栄光とタッグを組み、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を子どもたちに説き始めた。文部科学省は2020年度に小学校でプログラミング教育を必修化する方針。独創的なアイデアを促すソニー製品を通じ、「課題解決力」を身につけてもらう狙いだ。

こどもの自由なアイデア促す

 栄光が開催している理科実験教室「栄光サイエンスラボ」で、ソニーの電子ブロック「MESH」を使ってもらい、子どもたちの自由なアイデアを促す取り組みを始めた。

 MESHはソニーが15年に発売した、ものづくりができる電子工作玩具。電子回路を内蔵したブロック型の電子タグと無料のアプリを無線でつなぎ、身の回りのモノと組み合わせて電子機器を作るものづくりが実践できる。

「MESH」の操作画面と加速度センサータグ

 例えば「人感タグ」のブロック部品は周囲2~3メートルの人の動きを察知する。ドアに取り付けてスマホと無線でつなぎ、外出時に玄関のドアを開けるとスマホがその日の天気を知らせてくれるような仕掛けが可能になる。アプリはタブレット(多機能携帯端末)やスマートフォン(スマホ)上で操作できるため、プログラミングの知識がなくても家庭内のネットワークを介して簡単に家電を操作できる。

 MESHを開発した新規事業創出部の萩原丈博統括課長は「消費者次第でタグを使っていろんな機器を生み出せるため、アイデアは無限に広がる」と語る。発売後は企業のエンジニアたちが新製品開発のアイデアを試すツールとしての需要が多かったが、「子どもたちの教材としても活用できるのでは」と思ったMESHの開発メンバーが栄光に電話をかけて提案。栄光側も「おもしろい」と受け入れた。

 さっそく16年12月~17年1月の冬休み中に、首都圏9カ所で開いたサイエンスラボでMESHを導入。計約110人の子どもたちが参加した。

 実際の授業はこうだ。小学1~3年生と4~6年生に分け、1クラスの定員は6人。まず冒頭で「IoTとは何か」をイラスト付きの資料で分かりやすく解説する。次にMESHの仕組みを説明し、1時間かけてMESHを使って「デジタルおみくじ」を自由に作ってもらう。最後の30分は自分でプレゼン大会だ。

栄光の「サイエンスラボ」の授業ではソニーのMESHを使ってIoTを学ぶ

 授業の最後には、光ったり音声が出たりする豊富なおみくじが形になった。萩原氏は「短時間でそれぞれの個性が表れた。特に発光ダイオード(LED)を使って光る『パワースポットおみくじ』に驚いた」と振り返る。栄光のサイエンスラボ課、大渕千紗子係長も「子どもたちは普段からタブレットを使いこなしているので、MESHも抵抗なく受け入れていた。家でもやりたいという声が多かった」と手応えを語る。

 実際、保護者からも「知識だけではなく知的好奇心を養えそう」と好評だったという。そこで7~8月の夏休みにも開催することが決まり、開催教室も16カ所に増やす。これでサイエンスラボを開催する全ての教室で開かれることになる。

 栄光事業開発本部の横田里美本部長代理は「MESHは『やり方』が決まっていないので、結論まで自分で試行錯誤する必要がある。実験を通して問題解決方法を学んでもらうサイエンスラボの理念と一致している」と分析する。

 MESHはソニーの新規事業創出プログラム「SAP」から生まれた。萩原氏はネット接続事業を手掛ける旧ソネットなどで、電子商取引(EC)サイトの開発やアルゴリズム研究などに携わっていた。転機は米スタンフォード大学への留学だ。

 消費者に近いところで開発研究するシリコンバレーのベンチャーをみて「アプリやソフトだけでなく、消費者の身近なアイデアを形にするツールを作りたい」と刺激を受けた。そこで初めてハード開発に挑戦し、誕生したのがMESHだった。

 MESHは決して教材として開発したわけではない。萩原氏は「子どもたちには『MESHはおもしろい』と思ってもらうのではなく、MESHを使った経験を発想力に生かしてほしい」と語る。全国の学校や教育委員会から引き合いが強いだけでなく、10以上の大学でも採用されている。大学では文系授業での活用も多いという。今後も教育の場面でソニー流のイノベーションを吹き込みそうだ。
(企業報道部 中藤玲)[日経産業新聞から転載、日経電子版2017年3月23日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>