日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

食の訪問記(4)豆腐処味匠くすむら(上)39歳の5代目社長は田楽焼きも

食の訪問記(4)豆腐処味匠くすむら(上) 39歳の5代目社長は田楽焼きも
authored by 平井幸奈株式会社フォルスタイル代表取締役CEO

 ブリュレフレンチトースト、黄金比グラノーラ、ドラフトコーヒー......。笑顔と美味しいを作りだす食のプロデューサー、株式会社フォルスタイル代表取締役平井幸奈です。本企画は私が日頃から注目している日本の食の老舗ブランドを訪問し、体当たりでインタビューする企画です。長く愛される"日本の一流の食"の秘訣、伝統の守り方、育て方、そして新たなる挑戦と描いている未来についてじっくりとお話を聞いていきます。

 2カ所目の訪問先は、豆腐処味匠くすむら。大正3年から豆腐の製造、販売を手掛け、創業100年を数える。創業以来、歴史に裏付けされた伝統製法により作られている豆腐の製造・販売が主な事業。自社で作った豆腐を懐石料理として提供する料亭「豆腐懐石くすむら」や、豆腐を使った惣菜を販売する惣菜小売店なども営む。地域の人々はもちろん、日本全国の人々に高く評価されている。

柘植一憲社長
会社概要
株式会社くすむら
事業内容:豆腐製品の製造・卸・販売および新製品の開発、豆腐料理の専門店経営
設立:大正3年(1914年)
従業員数:90人
売上高:5億6000万円
平成5年7月 NIKKEIプラス1 おすすめ豆腐全国8位に選ばれる
平成27年6月 伊勢神宮外宮に奉納
平成28年1月 愛知県豆腐商工業協同組合主催の豆腐品評会にて名古屋市長賞を受賞

きっかけは名古屋高島屋の部長さん

 名古屋高島屋の部長さんが、「名古屋でお豆腐といえばここ!」と紹介してくださったのが豆腐処味匠くすむら。私自身、くすむらさんの「百年とうふ」を初めて食べた時、度肝を抜かれました。真っ白に煌めくお豆腐の弾力と、豆乳に包まれたまろやかなお豆腐は絶品です。お豆腐の製造・販売だけにとどまらず、予約が必須の料亭や惣菜の販売まで、次々と幅広く展開されている現場を訪ね、柘植一憲社長に話を伺いました。

平井 社長はお若いですよね。昨年お父様、現会長から継がれたと伺っています。

柘植 39歳になりました。私で5代目です。大学を卒業して、海老煎餅屋さんに1年間勤め、23歳からこの会社に入りました。

平井 継がれるということは、いつ頃から意識されていたのですか。

柘植 幼稚園の卒園アルバムには「お豆腐屋さんになる」と書いていましたね。曾祖母にはお風呂入るたびに「お前はくすむらの5代目だぞ」と言いきかされていました。幼稚園の頃から、トラックの助手席に乗って豆腐の配達について行っていましたし、その後もアルバイトで製造を手伝っていました。今の本社工場は平成元年、私が小学校6年生の頃にできました。それまでは長屋の手前にお豆腐の製造工場があって、その奥が母屋でそこで暮らしておりました。工場を通らないと家に帰られませんでしたし、母屋に従業員がお昼ご飯を食べに来られたりしていたので、現場には小さい頃から慣れ親しんでいましたね。

百年とうふ(紅白)

お弁当

 先代の社長である私の父は豆腐屋を継ぐことが嫌だったそうなのですが、私は逆に小さい頃からアットホームな環境で豆腐に親しんでいたこと、父親や叔父の背中を見ていたので「継ぎたい」というのが自然な気持ちでした。私は3人兄弟なのですが、3人とも会社に入っています。三男は惣菜部、次男が懐石料理店、私が製造工場と社長という役割です。私は4月に代表になりました。

百年とうふイメージ

プレッシャーは心地良い刺激

平井 若くして社長就任、プレッシャーはありませんでしたか。

柘植 もちろん従業員が約90人いますので、プレッシャーはありますが、逆に心地の良い刺激でもあります。私自身、社長に就任してから考え方が変わりました。それまではもっとちゃらんぽらんだったのですが(笑)、社長としての自覚が湧き、物の見方捉え方というのはだいぶ変わったと思います。社長に就任して1年経ちましたが、この1年で成長させていただきました。

平井 社長に就任されてからも、現場でも働かれているのですよね。くすむらさんの規模感で社長さんが自ら現場に立たれているなんて驚きました。

柘植 ちょうど先ほどまでも近くの公園の花見イベントで若い社員と一緒に田楽を焼いていました。工場長が休みの時に代打で現場に入ったり、もちろん現場を見回ることもあります。自分自身の仕事がマンネリ化してしまい日々終わっていくことには恐怖感をも覚えるんです。社長としてのいわゆる経営の仕事だけではなく、現場に立ち、現場の社員とコミュニケーションをとりながら美味しい豆腐を作ることも大切な仕事です。バランスをとりながら、メリハリのある仕事をするように心がけています。