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career-働き方

食の訪問記(5)豆腐処味匠くすむら(中)「素材がいいから、何もたさない」
がコンセプト

平井幸奈 authored by 平井幸奈株式会社フォルスタイル代表取締役CEO
食の訪問記(5)豆腐処味匠くすむら(中) 「素材がいいから、何もたさない」がコンセプト

 「名古屋でお豆腐といえばここ!」と言われる、豆腐処味匠くすむら。同社の柘植一憲社長へのインタビュー2回目です。豆腐作りへのこだわりについて詳しく聞いています。

 大正3年から豆腐の製造、販売を手掛け、創業100年を数える。創業以来、歴史に裏付けされた伝統製法により作られている豆腐の製造・販売が主な事業。自社で作った豆腐を懐石料理として提供する料亭「豆腐懐石くすむら」や、豆腐を使った惣菜を販売する惣菜小売店なども営む。地域の人々はもちろん、日本全国の人々に高く評価されている。

柘植一憲社長
会社概要
株式会社くすむら
事業内容:豆腐製品の製造・卸・販売および新製品の開発、豆腐料理の専門店経営
設立:大正3年(1914年)
従業員数:90人
売上高:5億6000万円
平成5年7月 NIKKEIプラス1 おすすめ豆腐全国8位に選ばれる
平成27年6月 伊勢神宮外宮に奉納
平成28年1月 愛知県豆腐商工業協同組合主催の豆腐品評会にて名古屋市長賞を受賞

豆腐の80%以上は水。木曽川の伏流水を使用

平井 「素材がいいから、何もたさない」。このコンセプトに惹かれました。くすむらさんのお豆腐のこだわりを教えてください。

柘植 豆腐はそのまま食べて一番美味いんです。だから素材の味が素直に出る。そこに妥協や手抜きは一切許されません。大豆の輸入が自由化されてから国産の大豆を使うところも少なくなってきた時代の中、もう一度昔ながらの製法で素材にこだわった豆腐を作ろうと考えました。私たちが厳選した大豆は、豆腐作りに適した愛知県産のフクユタカと、北海道産の大袖の舞をブレンドです。フクユタカ大豆はタンパク質が多く、大袖の舞大豆は甘みの強い大豆でして、風味豊かな大豆でして、この比率と寄せの技術が、くすむらの豆腐の味を作り出すのです。

平井 お豆腐というと、大豆とお水、苦汁(にがり)からできあがりますよね。大豆以外にもこだわりはありますか。

柘植 実は豆腐の80%以上は水です。会社の地下には、木曽川の伏流水が流れていますので、それを井戸水として汲み上げています。ミネラルが豊富なまろやかな水です。苦汁は海水を精製した瀬戸の浜にがりを使っています。苦汁とは塩化マグネシウムなのですが、大豆の甘みや旨味をさらに引き出してくれるものなのです。豆腐は豆乳に苦汁を打って凝固させます。その融合と寄せの技術は微妙で固くなったり、ゆるくなったり、大きく味に影響するので職人の技が必要です。

職人は夜中の0時から作り始める

平井 重要な工程は機械化せずに、手で作られているということにもこだわりを感じます。

柘植 職人は夜中の0時に出勤し、朝には豆腐できあがり、出荷できる状態になります。私どもは大豆の旨味をしっかり伝えるために生豆腐にこだわっていますので、無駄なものを一切入れず、消費期限を伸ばすためにボイルするなどしてないんです。なので夜中に製造をして、午前中には出荷するという無駄のないスキームを組んでいますね。

平井 そんなストイックなのですか。どおりでお昼前の今の時間に、作業が終わっているのですね。

柘植 そうなのです。こちらの油揚げの工程と惣菜だけまだやっています。

平井 この工場ができたのはいつですか。

柘植 平成元年、私が小学6年生の時でした。

平井 平成元年に工場が出来て、それは一気に拡大されたタイミングでもあるのですね。

柘植 そうですね。それまでは公設市場を3~4店舗開いているだけだったのですが、当時公設市場よりも百貨店やスーパーなどが台頭してきてお豆腐がお手頃に買えるということからうちも色んなことをやらないと考えました。先代の社長である父が「お豆腐の素晴らしさをもっと伝えたい」という想いを持っていて豆腐の総菜やデザートなどの商品展開をはじめました。それが昭和60年頃です。当時は豆腐ハンバーグ、豆腐餃子や豆腐焼売などがブレイクして、その手伝いをした記憶もあります。

平井 その頃からお豆腐屋を活かした幅広い商品展開をされているのですね。

柘植 先代社長の父が豆腐を使った惣菜や料亭など新しい試みを次々と仕掛けてきました。私はその後継として「次何やるの?」という周りからのプレッシャーはありますが、常にアンテナを張り、時代を見極め時代に先駆けて挑戦していきたいと思っています。