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career-働き方

大学受験は全敗
甘え許さぬ桜蔭、育んだ自立心
経沢香保子・
キッズライン社長が語る(下)

大学受験は全敗甘え許さぬ桜蔭、育んだ自立心経沢香保子・キッズライン社長が語る(下)

 ベビーシッターサービス事業を展開するキッズラインの経沢香保子社長(43)が語る「リーダーの母校」。女子校で東京大学合格者数トップを誇る桜蔭中学・高校に入った経沢氏だったが、見事に落ちこぼれ生徒に。だが、転んでもただでは起きなかった経沢氏は、桜蔭時代の経験を生かし、最年少(当時)の女性上場社長への道を歩み始める。

桜蔭で落ちこぼれた私が得意だったこと~経沢香保子氏(上)から読む

大学受験は全滅だった。

 まわりがみんな大学に受かるので、自分も簡単に受かるものだと思っていたら、10校くらい受けて全滅しました。もう自分もまわりもびっくりです。東大目指しての浪人なら桜蔭にもいますが、こんな形で浪人するなんて正直恥ずかしかったです。

 父から、「お金がかかるから浪人はさせない」と言われていたので、ある予備校を受け授業料免除の特待生に選ばれたのですが、すると、父が今度は、「どうせやるなら一番いい予備校へいけ」と言ってくれ、結局、駿台予備校に通うお金を出してくれました。

 心を入れ替えて勉強し、1年後、慶応義塾大学経済学部に合格しました。

 実は、桜蔭高校のときからずっと慶大に憧れていて、指定校推薦制度を利用して慶大に行こうと考えたこともありました。ところが、先生に電話で相談したら「あなたは成績が足りないから推薦できない。自力で行きなさい」と、門前払いにされていました。

 先生のおっしゃる通り過ぎて、自分の甘えた考えを恥じました。最終的にはリベンジできてよかったです。

 慶大に入ってからは、いろいろなアルバイトをし、やはり自分は「仕事が好きだ」ということを確信するようになりました。

卒業後はリクルートに就職。その後、楽天を経て2000年、20代半ばでマーケティング会社を設立。2012年、39歳の時に東証マザーズに上場し、当時「最年少の女性上場社長誕生」として話題となった。

 就職当時の目標はスーパーサラリーマンになること。起業はまったく考えていませんでした。ところが、楽天を辞めてフリーで仕事をしたら、結構うまくいき、知り合いから法人にしたらとアドバイスされて、何となく起業。これが、1社目のトレンダーズを設立した経緯です。

 トレンダーズは女性に特化したマーケティング会社で、それまで誰も本格的にやっていない領域でした。まさに、桜蔭時代、誰もやっていないことをやってみようと考えていたことを、実現できました。

「女子校は男子に頼ることができないので、何でも自分たちだけで解決しようという自立心が育まれる」と話す

 もう一つ、今もそうですが、仕事をしていく上で桜蔭に行ってすごくよかったなと思うのは、自分で何とかしなくてはという気持ちを常に持つことができることです。桜蔭に限りませんが、女子校というところは、男子に頼ることができないので、何でも自分たちだけで解決しようという自立心が育まれます。

 そういう理由で、今の会社でも前の会社でも、女子校出身の人は、自分と空気が似ているなって思います。みんな、期待を裏切らない働きぶりです。

上場してほどなくトレンダーズを離れ、2015年、キッズラインをスタートした。

 キッズラインは、料金が1時間1000円からで、スマホで24時間、当日でもベビーシッターが予約・手配できるサービスです。通常のベビーシッターサービスの値段の3分の1で、大変好評をいただいています。

 このサービスをやろうと思ったのは、私自身が育児で苦労した経験があるからです。当時ベビーシッターを探しましたが、すごく高くて、気軽に使えないのが難点だと思いました。なので、テクノロジーの力を活用した、今までにないベビーシッターサービスを展開したいと、そのころからアイデアはありましたが、命を預かる仕事なので、もっと経営者として経験を積んで、自信を得た時にやりたいと、心の中にあたためていました。

 とはいえ、キッズラインを立ち上げて最初のころは、月の売り上げが5万円くらいしかなく、これでは食べていけないかもなんて、自分で笑っちゃうほどでしたが、その後は毎月、着実に売り上げが伸び続けていて、今はかなりの手ごたえを感じています。

 昨今、待機児童が社会問題となっていますが、私たちのサービスが待機児童問題の解決に貢献できるのではないか、ひいては女性が本当に輝く社会に変わるために何かお手伝いできるのではないかと考えています。

 実は、キッズラインを立ち上げてしばらくしたころ、桜蔭から、創立記念日に講演してほしいという依頼が来ました。落ちこぼれだったのに声を掛けてもらい、その意外性にびっくりしました。

 私が選ばれたのは、桜蔭生はどうしても勉強ばかりで視野が狭くなるから、卒業生で変わった活動をしている人の話を聞き、視野を広げてもらおうという趣旨だったようです。確かに、自分で会社を経営しているのは、桜蔭出身では珍しいタイプかもしれません。

 講演では、桜蔭時代の思い出などを話し、最後に「桜蔭生はみんな優秀なのだから、ぜひ将来は社会を変えるような仕事に就いてほしい、多くの女性たちのロールモデルになってほしい」と語り掛けました。

 後輩たちにとって、子供を産んで子育てをしながらも自分らしく生きることができるという私の体験が大きな希望になったみたいで、とても嬉しかったです。
(ライター 猪瀬聖)[日経電子版2017年4月3日付]

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