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[ career-働き方 ]

大学生が見たカイシャ(5)三井倉庫HD
世界の動きと直結する仕事

authored by 国学院大学学生キャリアサポーター
大学生が見たカイシャ(5) 三井倉庫HD世界の動きと直結する仕事

 もともと港町での倉庫業から始まった倉庫会社ですが、現在では自社で配送部門まで手掛ける総合物流企業として我々の生活を支えています。今回は三井倉庫ホールディングスを訪ね、オペレーション部門関東支社オペレーション部東京通関課の古賀大史さん、オペレーション部門関東支社東京支店東京港第1事務所の榎本咲紀さんのお二人にお話を伺いました。

――倉庫業について教えてください。

古賀 文字通りモノをお預かりして、お戻しするまで入庫したときのままの状態で保管するというのが、本来の倉庫業です。貨物もいろいろ扱うので、それぞれの特性に合わせた適切な保管をしています。例えば常温で保管してよいもの、一定の温度を保たねばならないもの、低い温度でなければならないものなど、貨物の特性に合わせた倉庫での保管サービスを提供しています。

 しかし今やそれだけでは十分な付加価値があるとは言えない時代なので、保管だけでなく輸送なども合わせて行っています。例えばあるメーカーさんが原材料を保管している場合、そこから商品に加工するために工場へ持っていき、さらに加工した既製品をスーパーなどに配送するとなると、前後に物流がついてきます。その輸送や、国をまたぐ際の通関などをあわせて提供するというのが、今の倉庫業界の基本的な内容です。

世界経済や語学を学んでほしい

――では、この業界で働く上で必要な勉強などは何かありますか。

榎本 三井倉庫は海外から貨物を輸入して、外国貨物として保管するという仕事が多いので、海外の動静が貨物の動きにつながります。ですから国際経済は頭に入れておいて損はないですね。あとは海外に派遣されることもあるので、もちろん語学は学んでおいてほしいです。しかしこれを学んでおけば役に立つと言い切れるものはなく、いろいろな経験や知識を持ってほしいと思っています。

古賀 ソフトスキルということになると、「とりあえず飛び込んでみるガッツ」と「粘り強さ」が大事だと思います。私は研修生という立場で海外に赴任していたので、現地スタッフがいる中で地位としては自分が一番下ですが、同時に現場をマネジメントしなければならない立場でもありました。そのため、現地スタッフたちが言うことを聞いてくれないという状況でも、臆することなく現場の作業員と話していくガッツが必要になります。また海外だと日本ほどきめ細やかではないことも多いです。そして、たとえ50パーセントでも「イエス」と言ってしまいがちです。彼らが提示した情報が確かなのか、自分なりに突き詰めていく粘り強さも海外でやっていくには大事なことなのかなと。

左から聞き手の大和田実紗、吉原良祐、三井倉庫HDの榎本咲紀さん、古賀大史さん

――会社の未来について教えてください。

古賀 国内のマーケットは縮小傾向にあるので、海外に目を向けないと事業も拡大していきません。当然我々としてもメーカーさんと一緒に海外に出て物流サービスを提供することは、今後も積極的に取り組んでいくことのひとつです。では国内に拡大余地は全くないのか、と言われれば決してそうではなく、今までやってこなかったような分野、例えば管理が難しい医薬品など新しい分野に進出していくということが、今後の国内での動きなのかなと思います。


――古賀さんは通関課に配属されているということですが、そのための学問などは何かしていましたか。

古賀 私の場合、はじめは通関の部署に配属されるとは思っていなかったので、通関にかかわる学問などはしていなかったですね。しかし最終的な申告は通関士の資格がなければならないので、私はそれまでの過程を行っています。

自立を感じた海外研修

――三井倉庫HDの研修制度について、特色のあるものを教えてください。

古賀 例えば私が参加した海外実務研修に特化して言うと、一年間、特に伸びているマーケットを中心に毎年5名ほど派遣しています。派遣先としては中国や香港などアジアが多く、インドネシアやタイなど東南アジアもメインのひとつになっています。

長時間にわたりお二人のお話を伺った

 もちろん研修生の今までの経歴や、派遣先のニーズに合わせて取り組む仕事は変わってきますが、基本的には実務というより、マネジメントに軸足を置いて研修をしています。この研修のいいところは、例えば新しいマーケットであるタイやインドネシア、上海などなかなか英語も通じないようなところに何の知識もない状態で行くこともありますが、そのような場合でも会社の費用で派遣先の語学学校に一定期間通い、基本的な語学力をつけてから研修に臨むことが出来るところです。

 もう一つ特色のある研修としては、入社一年目の新入社員には一年間の研修期間を与えていることです。数カ月ずついろいろな倉庫やターミナルの現場を回ってもらい、知識を得てもらうのが目的です。その一年の研修を経ることで、二年目以降の実務に生かしてもらえるような取り組みをしています。

榎本 今、私は主に外国貨物を取り扱う倉庫にいるのですが、一年目の研修ではコンテナヤードに行きました。コンテナヤードとは海外から船で運ばれてきた荷物が初めて陸にあげられるところです。物流において日本にモノが入ってくる流れではコンテナヤードが最初のステップになり、そこから外国貨物として倉庫に運ばれます。今いる倉庫だけでなく、研修ではじめの部分を見られたことで物流の流れを理解でき、視野が広がりましたね。例えば天候などで船が遅れているトラブルがあったとします。そのとき倉庫にいるだけだったら遅れている理由を考えずにいるだけなのですが、コンテナヤードで働いた経験があるおかげで、遅れた原因を理解して、そのあとどういった対応をすればいいのか、ということが想像出来るようになりました。

――自身の自立を感じた瞬間はいつですか。

古賀 私が自身の自立を感じたのは海外研修の中でです。初めは駐在員がいるところにいって、その方の指示である程度動いていきます。ですから何かあった時、最終的には駐在員に頼れる立場で過ごしますが、私の場合、半年目から駐在員の方が日本に帰任しましたので、完全に日本人一人でそこの現場を見ていくような状態になりました。頼れる人がいなくなって、自分が主体的に現地スタッフを巻き込んで業務をつくっていったり、改善していったりする必要がありましたが、自分なりの方法を考えて、それが出来たときが、ある程度海外で自立が出来たのかな、と感じた瞬間でした。

榎本 今の部署に配属になったとき、最初は先輩と一緒にお客様の担当をしていたのですが、途中から一人で任せてもらえるようになりました。自立を感じたのはその中でお客様の悩みに対して、今までになかった提案ができたことですね。そしてそれが採用されて「よかったよ」と声をかけてもらったとき、学んだことが生かせたのかなと感じました。

――ご自身のキャリアプランはどのようにお考えですか。

三井倉庫HDの古賀大史さん(左)と榎本咲紀さん

古賀 今は通関に携わっているということで、まずは通関の実務経験を積んで知識を蓄えることが目標です。今後はそれを踏まえたうえで海外に駐在したり、営業に行ってその知識を使いお客様に最適なサービスを提供する仕事ができたらと思っています。

榎本 今いる現場で経験を積んだ後、他の部門を見てみたいと思います。やはり研修で他の事務所を見ることで視野が広がり仕事がやりやすくなったので、今後他の事務所もしくは現場だけでなく管理部門も見てみたいですね。見させていただくことで、もっと今以上に自分らしい提案をお客様にできるようになったらいいなと思っています。三井倉庫はジョブローテーションが活発で、何年かに一度異動もできますし、自分から申告することも一年に一回あるのでアピールしていきたいと思っています。


――倉庫業というと男性のイメージがありますが、女性が働きやすい環境にありますか。

榎本 制度の面では育児休暇や、子供が生まれてからの時短勤務がありますし、実際に利用している人も多いです。管理職については、やはり男性社会の会社であるイメージが強かったためか、昔はあまり女性が就くことはありませんでした。しかし最近では女性も増えてきて、所長、課長だけではなくその上の支店長を担う人が出てきました。さらに上の管理職、役員にあがっていく方もいらっしゃいます。男女関係なくキャリアを積めるということは目標になりますね。

――就職活動を頑張っている学生に一言お願いします。

古賀 あまり就活だけにのめり込むのではなく、まずは大学生活を充実させ、やりたいことがあればなるべくその中でやってしまうのがいいと思います。それは勉強でもいいし、アルバイトでもいいし、どこか外国に行くのでもいいです。その中で自分なりに目標を立て、そのことについて頑張っていく。そういった自由なことが出来る4年間なので、就活に専念するよりもそっちに専念して、自分の視野やスキルを身に着けることを頑張ってほしいなと思います。あくまでそのベースがあったうえで、面談で話したり、経験を生かして会社を選んだりすることが重要だと思います。 

榎本 就職活動をしていると、うまくいかないことがあって苦しい時期が続くと、内定をもらうことがゴールになりがちです。しかし実際は内定はゴールではなく、スタートですらないんですね。内定をもらってもまだ大学生活が続きますし、4月に入社してやっと社会人としてのスタートが切れる。ですから内定をもらうことをゴールとせずに、そのあとのスタートをどうすれば一番自分らしく切れるのか、ということを考えてほしいなと思います。学生の中で人気の高い企業から内定をもらうことが、はたして自分にとっていいことなのか、お給料がいい企業がいいのか、自分にとって何が一番いいのかということを考えて就職活動を続けてほしいです。長期戦にもなると思うので、息抜きもしながら頑張ってください。

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