スタンプラリーでプレミアム説明会へ?!
就活生座談会2018(5)
経団連が会員企業に対して示した選考(面接)開始時期は6月1日。4月下旬、就職活動の現状を5人の就活生による座談会を行いました。前回は現在の内定状況とインターンシップと参加による選考優遇策などについて話してもらいました。今回は採用選考についてです。
Aさん(女性、公立大学、文系)
Bさん(女性、私立大学、文系)
Cさん(男性、私立大学、文系)
Dさん(男性、国立大学、文系)
Eさん(女性、私立大学、文系)
――みなさんにとって「3月開始、6月解禁」というのはどうですか?
Aさん やはり以前の12月解禁で3年の3月ぐらいには決まっていてほしいと思います。私だけかも知れませんが、4年は卒論のために海外に調査に出なければいけないので、今のスケジュールだと遅すぎると感じます。
Eさん 私は今のままがいいかと思います。これ以上遅すぎれば夏が暑いですし、早すぎると3年の後期にかかるので、今のスケジュールがベストだと思います。6月解禁というのはありますが、密かに選考が進んでいるというのが。基準はあるけど、自分の意志でスケジュールを早めることもできるという点がいいのではないかと思っています。
――現在、業界や企業、インターンシップ参加の有無で、選考の進み具合がバラバラですが、混乱などはありませんか?
Eさん 各社の選考が同じように進むよりも、人それぞれタイミングが違うから「自分はこれをやる!」と気持ちを決めて進めるから焦りや迷いは逆にありません。
Bさん 3月になって友人が内々定をもらった時に「あ、やばいな」と思ったんですけど、ある企業の社員さんと話しているときにその話をしたら、「早く決まれば言いというわけではなくて、内々定に時間がかかるほどお互いのギャップが埋まっていい。6月いっぱいまで時間をかけて自分の気持ちを整理すればいい」という話をされて納得しました。企業としても時間をかけて納得して入社してもらった方がすぐに辞めないのでいいんだと思います。
――今、企業は学内セミナーに力を入れていますが、学内セミナーには参加しましたか?
Bさん 私はスタンプラリーがあるので、今は志望していなくても学内セミナーに来た銀行には参加しました。名前を書いたり、インターネットで番号を入力したりと。
――スタンプラリーって何ですか?
Cさん スタンプラリーはあるメガバンクであったのですが、本社でのセミナーに呼ばれた際に、私についていたメンターさんに「C君は学内セミナーにも来ているし、マイページも3月1日の何時に作っていたよね」と言われました。他にも学生がいたんですが、「君はこれに来てないね、君は来てるね」とメンターさんが把握していました。説明会も職種ごとにコースに分かれていて、各説明会に参加してることを見ていると言われました。
――それは、企業がインターンシップ、エントリー、学内セミナー、個別セミナーなどへの参加状況をすべて把握して、評価の対象にしているということ?
Eさん銀行だけでなく旅行会社でもスタンプラリーがありました。セミナーに行った回数ではなくて、参加したセミナーでどれだけ多くの人に話を聞いたのかでスタンプを押すことができ、たくさん持っている人はプレミアムの説明会に参加できるみたいなものでした。
Aさん 地銀もあります。説明会までに「Aさん、こんにちは」というように人事に顔を覚えられてないとダメと言われています。私は地銀のインターンで覚えてもらえたのですが、個別説明会までに合同説明会などに参加してどれだけ顔を覚えてもらうかが重要になっています。覚えてもらえると「エントリーシート出さなくてもいいよ」なんてことにもなります。
また、ある生保の内々定を持っている友人はスタンプの数が増えるともらえる粗品が変わってくると話していました。交通費代わりにスタバカードをもらったと。粗品で内々定が近づいていることが分かるそうです。
――スタンプラリーとは大変ですね。さて、これから内々定が増えていくと思いますが、最終的に就職する企業を選ぶ基準はどうなりますか? 業界の売上高順位とか気になりますか?
Eさん 順位よりもまずはつぶれない会社です(笑)。
Bさん やっぱり東芝のことを見ると怖いです。ちょっと前まで「つぶれない会社ランキング」の上位にいた東芝が今のような状況ですから、何も信じられない。
Eさん 世界一高い広告料といわれるタイムズスクエアに広告を出している東芝が、って思いますよね。
Bさん 就活を始めたときには年収を見ていたんですが、就活が進むにつれて自分らしく働けるところがいいと思ってきました。インターンシップや説明会、選考などで社員さんと会う機会も多くなってくると、気が合うなって思えるところが出てきます。こういう方たちと一緒に働いたら一生懸命頑張れるなって思うようになりました。就活ではいろいろな業界を見てきて、業界でもそうですし、同じ業界でも企業によって雰囲気が全然違うことが分かりました。自分に近い人がいる企業であれば、自分を受け入れてくれるのではないかと思っています。
Cさん 僕は第一志望でなければ、メーカーなら製品の将来性があるか、収益性が高いかを見て決めたいと思います。具体的にはAI(人工知能)やIoTへの対応や海外売上高の比率などをみます。あとは社員の人が自分の仕事をどう話しているかを見ています。ある業界では自分の仕事について失敗談なども含めて笑顔で話してくれますが、違う業界では仕事の話をしたがらないことが多いです。例えば、「仕事は遅くまであるんですか?」と聞いているのに、「仕事はチームでするものだから」とか話をはぐらかされたこともあります。
Eさん 私は就職するなら長く働きたいと思いますので、女性管理職の比率や国が定めている以上に育休期間を設けているか、どのくらいの女性が育休を利用して復帰しているかなどを見ています。
Aさん 私は研修制度などです。海外で働きたいという希望があるので、どれくらいで海外に行けるのかなどを見ています。
――初任給などは見ない?
Cさん 初任給より、住宅手当などの福利厚生が気になります。
Eさん 初任給よりも給料がどれだけ上がっていくのか、昇格するのかが気になります。初任給が高くても昇給しないのでは意味がないので。初任給や年収は見ますが、会社を選ぶ基準ではありません。
Cさん 低すぎなければいいという感じです。
――みなさん、これから6月1日に向けてどう過ごしますか? 何か今、不安なこととかありますか?
Bさん 5月は何をすればいいですか?
Aさん そう。空白の1カ月。
――「6月1日に来てください」という企業ばかり? 5月中に引き留め策はないんですか? お食事会とか。
Bさん 食事会はもう終わりました。
Dさん 僕もES(エントリーシート)の山はもう過ぎました。
Aさん 私は来週がピーク。なんで、ESって集中するんですかね。もう少し分散してくれればいいのに。
――みなさん、どうもありがとうございました。5月を有意義に過ごして6月1日を迎えてください。
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最後は、6月1日までの1カ月をどのように過ごせばいいのかという話になりました。そこで、就職支援に力を入れている大学1位として知られる明治大学の就職キャリア支援事務室、滝晋敏さんに就活生の現状とこれからの就活の進め方についてアドバイスをもらいました。
リクルートキャリアの調査では4月1日時点の内定率は14.5%と昨年に比べて5ポイント近く上回っています。それだけ就活の進みが速くなっています。エントリーシート(ES)の締切も昨年よりも2週間ほど早くなっているという印象を持っています。説明会に行って翌週にはES提出の締め切りのため、企業のことを十分に理解せずにESを提出してる学生が多く見られます。また、ESの設問も各社個性的になっているので、コピー&ペーストできずに間に合わなくなっている学生もいます。
内々定を持っている学生も多いのですが、反対に5月を前にすでに持ち駒が少なくなっている学生も出てきている状況です。今まではリクナビ、マイナビなどで企業を探していたと思いますが、これからはどう視野を広げるかが大事になります。明治では独自の求人サイトを持っており、そこには5500件の求人情報があります。どこの大学でも独自の求人情報を持っていますから、そちらに目を向けるようにしてください。
5月までESや筆記が終わり、6月1日の選考(面接)を待つのみという人もいますが、この1カ月をどう過ごすかで最終を乗り越えられるかどうかが決まってきます。最近では最終面接でも通過するのは50%と言われます。なぜこの業界を選び、この会社を選んだのか、日本にある400万社の中から、なぜその1社を選んだのかを説明できるようにしなければなりません。有価証券報告書を読むなど同業他社と比較検討し、最終面接を担当する役員たちをうならせる必要があるでしょう。
また、6月1日を過ぎて持ち駒がなくなる人も出てくると思いますが、慌てることはありません。6月中旬頃から内定辞退が多く出た大手企業も採用を再開するはずです。それまで見ていた業界だけでなく他の業界に目を向け、特に顧客が企業であるBtoB企業なども候補に入れることです。「○○業界しか見ていません」というような人は注意が必要です。
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