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ニュースの見方(46)「好き」だけじゃだめ 
ディズニーリゾート支える仕事

ニュースの見方(46) 「好き」だけじゃだめ ディズニーリゾート支える仕事
authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者

 1983年に開園して以来、多くの人々をひきつけてきた東京ディズニーランド(TDL)。2001年には東京ディズニーシー(TDS)もオープンし、一層多くの人々が訪れるようになりました。このTDL、TDSを中心とする東京ディズニーリゾート(TDR)を運営・管理するとともに、その他の関連会社を統括するのがオリエンタルランドです。オリエンタルランドは周辺のホテルやショッピングモールである「イクスピアリ」なども所有し、それらの運営・管理も行っています。

就職先としても人気

 TDLやTDSへの人気、あこがれから、オリエンタルランドへの就職人気も非常に高く、極めて狭き門となっています。2018年卒を対象とした「キャリタス就活」の人気ランキングでは、オリエンタルランドは39位にランキングインしています。同調査の業種別ランキングでは、「その他サービス」の部門でJTBグループ、アクセンチュアに続いて第3位になっており、パソナグループやエイチ・アイ・エス(HIS)よりも上位にランクされています。

職種はアトラクションだけでなく多岐にわたる

 社内での職種も多岐にわたっています。アトラクションやフード、セキュリティ、CS推進、エンターテイメント、キャスティングなど、TDLやTDSが大好きな皆さんにはどれも魅力的な職場に思われるでしょう。

入場者数は減少傾向

 ただ、その一方でオリエンタルランドは4月末、TDRの入場者数が3年連続で減少し、2018年度の来場者数は5年ぶりに3000万人を下回りそうだという予測を発表しました。3年連続で入園料を値上げした影響ではないかと見られていますが、ここにこの業種の経営の難しさの一端を垣間見ることができます。

 どれだけ人気を集めるアトラクションであっても、またエンターテイメントであっても、いつかは陳腐化していきます。そして、リピーターであればあるほど、同じような体験には飽きてくるでしょう。ですから、適当なタイミングで投資を行い、新たな集客のための施設を建設しPRしていかなければなりません。そのための投資資金を内部留保としてきちんと積み立てていく必要があります。これは、主な関連会社が持つ施設であるホテルや商業施設についても同様です。

 しかも、昨今は東京五輪・パラリンピックのための施設の建設資材の需要の高まり、また東北の震災復興のための資材の需要もまだまだ高いことから、資材費の値上がり、建設コストの上昇が、各企業にとって、設備投資を行う上の負担を重くしています。その結果、TDRとしても入場料も値上げする必要があったのでしょうが、値上げもあまり続けていると、入場者数の落ち込み幅がこれまで以上に拡大しかねません。

ライバルUSJが急伸

施設間競争が激化するなか、多角的な戦略が必要に

 また、最近では大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が大幅に集客数を伸ばしてきています。2014年に人気小説・映画である「ハリーポッター」シリーズをテーマとした「ウィザーディング・ワールド」をオープンしたことが大きな反響を呼び、急増しているインバウンド観光客も殺到したことから、2016年度は1460万人が来園し、3年連続で過去最高を記録しました。もはやTDRにとっては強力なライバルといってよく、超巨大都市東京の近郊にあり、ディズニーというブランドを活用できるからといっても、そうした好条件にあぐらをかいていられる状況にはなくなってきています。

 さらには、労働力不足が社会問題化している中で、「キャスト」と呼ばれる優秀なアルバイトをどのように確保していくかという問題もあります。TDRの魅力の大きな部分は「キャスト」の方々の献身的な労働によって作り出されています。彼らは、ディズニーの世界へのあこがれから自ら進んで優れたサービスをお客様に提供し、またそれぞれの持ち場において貢献しています。しかし、いったんその「幻想」が崩れるような事態が発生すれば、特別待遇がいいわけではないので、一気に人材が離れて行き、運営がなりたたなくなる可能性も否定できません。これは何もTDRだけの問題ではなく、非正規労働者に依存している業態の企業にはどこもあてはまることですが、TDR、ひいてはオリエンタルランドにおいては、今後極めて大きな課題となってくるでしょう。オリエンタルランドへの入社を目指すのであれば、この点についてどう考えるか、しっかりと自分の意見をまとめておきましょう。

IR・インバウンドどう対応?

 さらに、これからIR(統合リゾート)法も、実施に向けた取り組みが本格化していきます。各地方自治体ではこの政策に大きな期待をかけており、地方創生のための起爆剤として位置づけようとしています。

 ただし、これは、下手をすれば1980年代のバブル経済期に推進された「リゾート法」による大型リゾート施設の建設ラッシュの二の舞になる危険性も秘めています。たとえば、当時大いに話題を呼んだ大型リゾート施設である宮崎県の「シーガイア」は、巨額の投資を行って開業したものの、利用客が低迷し、2001年に会社更生法の申請をするまでになりました。これ以外にも同様の事例は多数見ることができます。

 とはいえ、当時とは違ってインバウンド観光客の増加もあり、また過去の反省も踏まえて、これから非常に魅力的なリゾート施設が地方に誕生してくる可能性は否定できません。むしろ大いに期待したいところです。そうした状況下で、TDRがそれらとの相乗効果を図りながらどのようにしてさらなる高みを目指していくのか。それは案外難しいことかもしれません。であるからこそ、そこにどのような展望を語れるかに、就職面接で勝ち抜く鍵があるのではないかと思います。ただTDRが好きというのではなく、是非多角的な観点からオリエンタルランドとしての未来戦略を考えてみてください。

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