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ニュースの見方(47)文系・理系問わず 自動車革新支える人材

ニュースの見方(47) 文系・理系問わず 自動車革新支える人材
authored by 戸崎肇首都大学東京特任教授・経済学者

 日本において、自動車メーカーは常にトップ産業として経済をけん引してきました。また、その競争力は世界においてもいかんなく発揮されてきました。特にトヨタ自動車の存在は大きく、今年3月末時点での時価総額において、トヨタは19兆7,150億円と日本の企業の中でトップにたっています。従業員数は34万人を超え、自動車の販売台数では世界でトップを走っています。ホンダも海外で知名度が高く、国内はもとより、その強さを世界市場において、トヨタ同様に発揮しています。そして、こうした日本のメーカーの努力によって、日本車の性能の高さに対する評価は国際的に完全に定着しました。

文系・理系問わず活躍

 トヨタは「かんばん方式」という名前で有名になった、いわゆるジャスト・イン・タイムシステム(生産ラインの各段階において、必要なタイミングで必要なだけの部品を供給することで在庫管理の無駄を図る仕組み)を世界に先駆けて導入し、効率的な生産体制を築き、企業経営の面でも世界をリードしてきました。自動車メーカーは文系、理系、どちらの人材にとっても大いに能力を磨き、それを発揮していくことのできる舞台です。

 トヨタの経営陣ともなれば、経団連の会長を務めるなど、財界の中でも中心的な役割を果たします。部品メーカーなど、関連会社、グループ会社も多く、多くの雇用を生み出しています。そのため、政治への影響力も大きく、国際的にも注目されます。

 さて、就職先としての人気度を見てみると、キャリタス就活2018の総合ランキングでは、トヨタが12位、ホンダが46位、日産自動車が59位にランクインしています。航空会社や商社などに比べれば地味なイメージがあるからかもしれませんが、企業の実力から言えば控えめの評価といえそうです。しかし、それでも上位に位置づけられていることは確かです。

今後も有望市場

 では業界としての将来性はどうでしょうか。
最近は若い人たちが車を所有しなくなったと言われています。その反映として、日本でもカーシェアリングが普及してきました。こうしたことから、車の売れ行きは悪くなってくるのではないかと思われるかもしれません。

4月に開催した上海モーターショーでは電気自動車など新エネルギー車が注目された

 しかし、海外ではまだまだ経済が発展途上の国があり、これからモータリゼーションが進んでいくところも多くあります。そして、そうした地域で生産を行うことで、その国の人々の雇用を生み出すこともでき、社会貢献にもつながります。最近の米国では、自国中心主義によって自国の会社の雇用を優先させようとしていますが、それも限定的なものにならざるを得ないほど、すでに国際経済の相互依存関係は深まっています。海外で活躍したいと考えている皆さんにとっては、自動車メーカーはそのためのチャンスを数多く提供してくれるでしょう。

 そして日本でも新たな車に対する需要が高まっています。

 まず地方では、過疎地を中心に人口が減少していることから、鉄道やバスといった公共交通機関が営業できなくなり、マイカーに依存せざるを得ない地域が依然として増えています。

進む自動運転化

 その一方、高齢化も急速に進んでいます。最近、認知症の疑いのあるドライバーに対する免許の更新基準が見直され、厳格化されましたが、高齢者の運転する自動車が引き起こした大事故がたびたび発生し、社会問題化しています。このため、高齢者でも安全に運転でき、また利用できるような自動車の開発が進められています。

自動運転技術の開発が急ピッチで進む(国内メーカーの自動運転車)

 その代表的なものが自動運転化です。すでに相当なところまで技術開発は進んでおり、実際の路上での運行実験も行われています。

 現段階では、自動運転中に事故が起きた場合の法的取り扱いをどうするか、保険についてどう扱うかといった難しい問題がまだ解決されていないため、実用化には相当な時間がかかりそうですが、こうした自動車が本格的に市場に投入されることになれば、自動車メーカーも新たな成長段階に入っていくことになるでしょう。

 また、環境への取り組みもあります。エコカー(環境対応車)の開発です。環境意識は全世界的に高まってきており、自動車に対する環境規制も強化されています。その基準を満たすために、従来の車からの乗り換え需要も発生しています。

スマートシティー担う

 エコカーの代表的なものは電気自動車です。電気自動車は二酸化炭素(CO2)の排出抑制につながります(ただし、発電のためにCO2が発生することは考慮しなければなりません)。ガソリンのもとである原油もいつかは枯渇するときが来るでしょう。それにガソリンの価格は原油価格の変動に左右されます。現在のように世界情勢が不安定化し、特に中東情勢が不透明化している状況では、紛争の勃発などの緊急事態の発生によって自動車の保有コストの大きな部分を占める燃油費が高騰すれば、車をもつ家庭、あるいは自動車を使って商売をしている企業にとって大きな負担となります。電気については猛暑時など、エアコンの使用によって電力不足の事態を迎えることもありますが、風力発電の推進などによって、今後、電気エネルギーのより安定した供給が期待できます。

 そして、電気自動車は省資源化を徹底した環境配慮型都市であるスマートシティーを形成していくときの重要なパーツとなります。スマートシティーが形成されていく中での自動運転化はよりスムーズに展開される可能性があります。

 このように、自動車産業はこれからも大きく発展していくことでしょう。その中で、どのような可能性を自分であれば追求していきたいか、広い視野をもって考えてみましょう。

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