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お悩み解決!就活探偵団2018リクルーターたちが明かす
フライング採用最前線

authored by 就活探偵団'18
お悩み解決!就活探偵団2018 リクルーターたちが明かすフライング採用最前線
(写真はイメージ)

 短期決戦の就活で優秀な人材を確保するために重要な役割を果たすのがリクルーターだ。若手から中堅まで多くの社員が投入されるが、表向きは「採用活動」と言えずに学生に接触しなければならない悩みも抱える。リクルーターはどんなことを考え、学生のどんなところを見て、どんな行動をしているのか。

「名刺もメアドも渡さない」

 「学生と接しているときに『これは採用活動なのですか』と聞かれることはよくあります。会社から、選考ではないと答えるように言われています」。こう教えてくれたのは、大手システム会社のリクルーターをつとめる30代の男性社員、Aさんだ。Aさんは「学生にはどのように解釈されているか、分かりませんが」と付け加える。

 リクルーターは出身大学や出身地域別に約10グループに分かれている。人事部が、入社3年目から部課長クラスまでの社員をリクルーターとして募集。所属長の許可が下りたら参加できる仕組み。Aさんは慶応大学出身のグループに所属する。

 リクルーター面談を受けるための「選考」が存在する。まず3月に、大学別の説明会を開催しOB、OGが学生に話をする。4月上旬に、適性検査(筆記試験)があり、通過した人がリクルーター面談を受ける。内容は面接官1人、学生8人のグループディスカッションだった。適性検査をパスした60人が臨んだが、面談に残ったのは20人。ここまでくると、6月以降の本番の選考で、1次面接なしで2次面接に進める。学生にとっては一歩有利になる。

 こうしたプロセスとは別に、めぼしい学生とは個別にも会う。Aさんが使うのは喫茶店が多いという。名刺を渡すことはないし、メールアドレスも教えない。1~2時間程度、一対一で面接の練習をしてあげたり、会社の事業説明をしたり、就活の悩みを聞いてあげたりする。学生とやりとりは社内の専用プラットフォームを使い、学生のメッセージは人事部も見るが、最終的に議事録としてまとめて提出しなければならない。

イラスト=篠原真紀

 言うまでもなく、経団連に加盟している大手企業は、6月1日の選考解禁まで選考は行ってはいけない取り決めになっている。だがAさんが語る同社の採用活動はかなりフライング気味だ。

 リクルーター面談では学生をどのように評価するか。Aさんによると、論理的に話せているか、コミュニケーション能力があるかなどをチェックするという。3人に1人という狭き門のリクルーター面談。内定が少しでも近くなるのであれば、選考と解釈する学生がいても不思議ではない。

チェックシートで5段階評価

 もちろん、Aさんには営業という本来業務がある。貴重な時間を充てて採用活動に貢献しているのだから、人事評価にプラスになってもいいはずだが、「プラスになることは一切ない」ときっぱり。割にあわないように思えるが、得るものもあるという。学生と話すたびに、自分が就職活動をしていたときのことを振り返ることができる。出身大学ごとのリクルーター活動であるため社内で横のつながりができるのもメリットだという。

面接の練習をしてあげるのもリクルーターの大事な仕事だという

 電機大手の女性リクルーターBさん(25)によると、リクルーター面談をするときにチェックシートがあるという。「入社の熱意や志望動機がきちんとしているか」「話に具体性があるか」「印象は良いか」などを5段階評価をする。それぞれの項目に自由に書き込めるスペースがあり、「笑顔がある」「人の目を見て話せる」などをリクルーターが自由に書く。Bさんは、「チェックシートを見ながら、一緒に働きたい人を選んでいく」という。

 リクルーター面談をパスした人には「面接で何を聞かれるかを教えるし、会社のことも詳しく伝えている」(Bさん)。お酒を飲みながらじっくり話す機会が増えると「面接を通らせたい思いが強くなっていった」。内定をあげても、辞退する人がでれば、リクルーターとしては今までの苦労が水の泡だ。それでもBさんは「教えたことが他の会社の入社試験でも役立ったのならそれはそれでうれしいです」と話す。

入社までに信頼をつなぐ役割

合わない会社に入って、会社も学生も損をするのが一番不幸。そのために会社を知ってもらうのが重要なミッションだ

 Aさんの会社のように名刺を渡したり、メールアドレスを学生に教えることを禁じている会社がある一方、学生に名刺を渡して、質問などを受け付ける会社もある。不動産関連企業に勤めるCさん(28)は入社3年目のリクルーター。採用担当から「会ってほしい人がいる」といわれれば、時間をつくる。1時間ほど話し、名刺を渡す。学生がいろいろと聞きやすくするためだという。「学生には、どんな質問でもしてほしいといっている」(Cさん)。入社できたとしても、会社に合わずに退職してしまえば、学生はもちろん会社にとっても損は大きい。会社のことを知ってもらって面接を受けてほしいという思いが強いのだ。

 こんなふうに、企業が学生に丁寧に接するのは、業績好調な企業が採用を増やしていることが背景にある。リクルートワークス研究所(東京・中央)によると、2018年3月卒業予定者の大学・大学院卒の有効求人倍率は1.78倍。前年と比べると0.04ポイント上がった。全国の民間企業の求人総数は、75万5000人と前年から2万1000人(2.8%)増えた。一方、学生の民間企業への就職希望者数は42万3000人と前年と比べて0.3%増加にとどまっている。内定を出した学生に入社してもらうために、企業には学生といかに信頼関係を構築するかが求められるようになっている。

6カ月間専従も

 大手シンクタンクD社は、5年前からリクルーター制度を導入。リクルーターは、夏から冬にかけて実施するインターンシップでの学生のフォロー、選考直前に実施する学生向けの「就活相談会」に参加する。就職相談会は、受けたい業界などを1時間程度かけて一対一で学生と話し、相談に乗る会のこと。本当に行きたい会社はどこなのかを徹底的に考えてもらい、納得した上で入社してほしいという。

リクルーターの女性は「一緒に働きたいと思えるような学生だと、相談にも熱が入る」と打ち明ける

 D社のリクルーターは入社3年目から5年目程度の若手社員が担当する。ふだんは採用に関わっていない社員だが、採用時期になると採用担当部門に配属される。この間やるのはリクルーターとしての業務のみで、長い人は6カ月くらいいることになる。

 学生のフォローも手厚い。D社はほとんどの学生にリクルーターがつく。インターンシップにきた学生はもちろん、受けていない学生も選考の過程でリクルーターがつき、学生の悩みを聞いたり、事業内容を説明したりする。面接後のフォローをして内々定まで学生に寄り添う。

 企業のこういった姿勢を、学生はどう感じているのか。私立大学に通う男子学生Eさんは、志望する地方銀行のリクルーターに4月に会った。志望動機などを聞かれた後、業務内容について具体的に教えてくれた。地方は人口減という構造的な課題を抱え、地銀が地方の活性化に果たす役割はますます大きくなっている。「地銀の仕事には漠然としたイメージしかなかったので、いろいろ話を聞けてよかった。知識が本番の面接に役立ちそう」と笑顔で話す。

 採用コンサルタントの谷出正直氏は、リクルーターが増えている理由を、「内定辞退や早期離職防止、採用する学生の質や人数の確保、情報開示に積極的な企業としてPRするため」と指摘する。谷出氏は「いまの学生は業務内容以上に、働き方やプライベートを重視しているため、社員に会ってみないと判断できないのだろう」と話す。就活サイトに掲載される社数が増え、自分に合う企業を見つけ出すのが難しい時代。リクルーターが直接学生に企業情報を伝える機会は不可欠となっている。

経団連加盟企業も3割がフライング

 日本経済新聞社がまとめた採用計画調査では、「経団連解禁日」の6月1日より前に面接などを始めると答えた企業は58.9%。昨年を6ポイント上回った。経団連加盟企業に限っても、30.3%に上り、昨年の7.9ポイント増となった。内定を6月より前に出す企業も13.9%と3.5ポイント増えた。

 もはやルールは形骸化しているといわざるを得ないが、企業側がリクルーターを人材確保の一環としてとらえるならば、学生も割り切ってリクルーター対策をする必要がある。谷出氏は「事前にホームページなどで企業について調べ、聞きたいことをまとめておくとよい。内定を得たら、この会社に決めたと伝えてもよいのではないか」という。リクルーターと学生は採用という短い期間とはいえ、お互いをよく知ってもらおうとともに努力した同志といえる。マナーや節度ある態度で接することはいうまでもない。
(斎藤公也、鈴木洋介、松本千恵)[日経電子版2017年5月11日付]

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