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チェック! 今週の日経(10)ソニーが7年ぶりに
有機ELテレビを売り出すワケ

authored by 日経カレッジカフェ 
チェック! 今週の日経(10) ソニーが7年ぶりに有機ELテレビを売り出すワケ
有機ELテレビを紹介するソニービジュアルプロダクツの高木社長(中)

 日経の研修・解説委員やカレッジカフェ編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今回は日本の電機メーカーにとって久しぶりの明るいニュースを取り上げます。ソニーが7年ぶりに「有機ELテレビ」を売り出すという話です。でも、確か有機ELを使ったテレビはソニーが2007年に世界で初めて発売したのに、全然売れなかったことで販売をやめたはず。どういう環境の変化があったのでしょうか。

ディスプレーをより薄く、軽く、色鮮やかに

 このニュースは5月9日付の日経新聞の15面「企業総合面」に大きく取り上げられていました。

「ソニー、『自前』捨て有機ELテレビ再参入 LGから調達」(5月9日)

 ところで、この有機ELテレビと、普通の液晶テレビとの違いって、分かりますか。液晶テレビは画面である液晶パネルの裏側でLEDなどを点灯させて、映像を見せます。一方、有機ELというのは電圧をかけるとホタルのようにそれ自体で発光するので、LEDのような光源が必要ありません。だから液晶テレビより薄く、軽く、消費電力も抑えることができるのです。色鮮やかでくっきりした映像も特徴です。スマホではすでにサムスン電子製の「ギャラクシー」シリーズに使われているので、お持ちの方がいるかもしれません。

 こうした特性から薄型テレビ用ディスプレーとして注目されましたが、先に述べたソニーの商品化世界第1号は、11型と小さいのに20万円もしたことから販売が振るわず、2010年に販売を中止しました。ご存知のように、この間、大型の液晶テレビは価格が急落して国内家電メーカーのテレビ事業はどこも経営不振に陥ってしまいました。世界のテレビ市場では韓国のサムスン電子やLG電子がシェアで1、2位を占め、さらに中国メーカーが追い上げるという図式で、日本メーカーのシェアは1割足らず。新興国が勃興した2000年代半ばでも4割を占めた強いメイドインジャパンの面影はありません。

 そんな中で、なぜソニーは有機ELテレビに再参入したのでしょうか。発表記者会見で、ソニービジュアルプロダクツの高木一郎社長は「従来の液晶テレビでは不可能だった新たなたたずまいと視聴体験を提供していく」と語ったそうです。つまり映画やスポーツをより高精細の大画面で楽しみたい人やマニア向けの商品ですね。実際、6月に発売する有機ELの「ブラビア」は65型が80万円前後、55型が50万円前後と、同じクラスの液晶テレビの3倍以上。裏返せば、これが売れれば利益は大きいという見方もできます。うまくいけばテレビのコモディティー(汎用品)化から抜け出せるのです。

LG電子からパネル供給、「実を取る」

 もうひとつ重要なポイントは、心臓部である有機ELのパネルが韓国のLG電子製であることです。ソニーは2010年の撤退以降、有機ELパネルの生産をやめてしまいました。他の国内メーカーも同様で、テレビ用有機ELパネルはLG電子が独占的に供給しているのが現状です。ただ、「調達したパネルの性能が納得いくレベルに達した」(高木社長)ことで、「自前主義」を捨てる決断ができたようです。画質や映像の動きを左右する画像技術で他社と差異化できるという自信があるのでしょうが、「名を捨てて実を取る」わけですね。

 かつてのシャープもそうであったように、ソニーなど日本の家電メーカーは自前技術にこだわり、テレビでも液晶から生産する「垂直統合」のスタイルでした。それが、いまでは品質がよければ基幹部品でも海外製を使う「国際分業」に変わりつつあります。そうでないともはや生き残れないのは確かでしょう。

 ソニーの発表の翌々日、ライバルであるパナソニックも有機ELテレビを国内で売り出すと発表しました。

「パナソニック、有機ELテレビ国内投入」(5月11日)

 やはり、有機ELパネルはLG電子製で、価格も50万円前後から90万円前後までとソニー同様、高価です。生産台数が月間1550台と少なめなのは、まだ様子見という感じかもしれません。

有機ELならではの視聴ニーズをつかめるか

パナソニックは有機ELテレビを最上位モデルに位置づける

 それでは、今後有機ELが液晶に代わってテレビディスプレーの主流になるのでしょうか。ソニー、パナソニックに先駆け東芝も3月に参入しているので、今年を「有機ELテレビ元年」と呼ぶ業界関係者もいるようです。しかし、テレビ市場での有機ELテレビのシェアは金額ベースでまだ1%程度。液晶との価格差を薄さや性能でカバーできるのか、まだ未知数です。さらに、若者を中心に小さなスマホの画面でも映像コンテンツを満足して視聴する傾向が強まる中、どのような視聴ニーズをくみ取ることができるのか、メーカーは当分、手探りを続けることになりそうです。
(研修・解説委員 若林宏)

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