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歌う看護師(5)就職活動から歌手デビューまで

瀬川あやか authored by 瀬川あやか看護師、シンガーソングライター
歌う看護師(5) 就職活動から歌手デビューまで

 3度の飯より好きだけど、カレーよりは好きじゃないゴールデンウィークが終わってしまいました(3度の飯がカレーになりがちだった実家は、やはりいろんな意味で天国でした)。みなさんの大型連休はいかがなものだったでしょうか。どうも、初めてのワンマンツアーを終えた「歌う看護師」瀬川あやかです。第5回は大学から実際に看護師として働きながら歌手としてメジャーデビューするまでのお話をさせていただこうかと思っています。今回もどうぞ最後までお付き合いくださいませ。

就職先の条件は?

 大学4年生になった私は、みんなと同じ就職活動を諦め、1年後の国家試験合格後、つまり大学を卒業してから働ける場所を探すというスタイルに切り替えていました。私が歌う看護師として働くために就職先に求めていた条件は次のようなものでした。

1.夜勤がないこと
2.午後にシンガーソングライターとして活動できる勤務時間であること
3.専門スキルは身につけておきたかったため、点滴や採血などの頻度が多い内科希望

 しかし、この条件では入院病棟がある病院で働けないとわかっていたので、国家資格を取得した後に都内の病院を探してみようと思っていました。そのため私の大学4年生のスタートは周りと大きく違っていました。学生の友達はみんな髪が黒くなり、スーツで学校に来てはそのまま説明会や進路相談室へ行く人がほとんどなのにも関わらず、私は明るめの茶髪のままでした。

 説明会にも何も参加していない私には就職活動のいろは等わかるはずもなく、しかも「みんながやる気のところに水を差してしまうのでは?」と考えてしまい(私もやる気でしたが)、自然と進路について学校の人と話すのを避けるようになっていきました。先生に対してもそうです。むしろ先生方には座学や実習でたくさんお世話になっていた分、期待に応えられない罪悪感から進路調査書すら提出できていない状況だったのです。

多くの応援をいただいて

 親は私を信じ、全力で応援してくれました。「あやかならできると思うし、あやかがやりたいならやった方がいい」と愛情いっぱいに受け止めてくれていました。しかし、私は親に心配をかけていいのか、周りに後ろめたさを感じながら夢を追いかける意味はあるのだろうかといろんな考えが頭に浮かんできました。そのたびに自問自答し、「歌う看護師になるんだ」と強く決意していたのにも関わらず、迷ってしまうことも少なくありませんでした。

 進路調査書の締め切りが迫ってきた頃、私は専攻していた小児ゼミのA先生に就職活動はしないということ、国家資格は取る気でいるが同時にシンガーソングライターとしても活動していく決心をしたと報告しに行きました。ずっと言えなかったと落ち込む私に先生は「なんでダメだと思うの? 素敵なことじゃない! 歌、聴いてみたいなあ」と優しく背中を押してくださり、とても嬉しかったのを覚えています。友達も友達で、単に私が勝手に自信をなくしていただけで、話をすると先生と同じように応援してくれたのです。

 私の考え方が変わった瞬間でした。夢を追おうとするとき必要なのは臆病や罪悪感ではなく、なりたい自分を想像し、信じることなのだと思うことができました。そこには漠然としていても説得力のあるちょっとしたビジョンとやはり周りの人や環境に感謝する気持ちを持っていることが大切ですが、自分の夢に自分が一番胸を張っていないでどうすると強く向き合う覚悟ができた瞬間でもありました。

いよいよ看護師と歌手に

 看護師国家試験直前を覗き、それからはたくさんの楽曲を書きました。書いたこともない楽曲を独学でとにかくたくさん書きました。世の中の音楽をやっている人たちへの勝手なイメージから、私には知識もスキルもないと思っていたので、学ぶにしろ経験するにしろ数を生みださずには自分にあったやり方すらわからなかったので、まずはそこから追求していくことしました。

 国家資格取得後は病院に何件も電話をかけては断られるを繰り返し、ようやく見つけた今の職場で働きながらピアノ・ギターの練習、ボイストレーニング、ライブをしながら更に曲を書きまくっていきました。ライブではお客さんがゼロのことも多々ありましたし、知らない専門用語が飛び交うリハーサルで戸惑ったり、本番は緊張してお客さんの方をまったく見られなかったりしてとても情けない状態でした。

 看護師の方も覚えること、勉強することがたくさん山ほどあったので、頭と心がはちゃめちゃになりそうになったこともありました。しかし、それでも自分の大好きなお仕事ができる今が幸せで、しかも2つという贅沢さに「もう嫌だ」と思ったことは一度もありませんでした。そんなふうにして瀬川あやかは少しずつ少しずつ「歌う看護師」になっていったのです。いや、なっていったというよりも皆がそうあれるようにしてくれているのだと思っています。

 「毎日は誰にとっても夢を追いかけていい夢日和なんだよ」という想いを込めて書いた「夢日和」にはこういう迷いや葛藤、劣等感、大切なもの、諦められない気持ち、希望など当時の感情が等身大に詰め込まれています。いつか私の歌や姿が私と同じように悩んでいる人のもとへ届き、その人の背中を押せますようにと願いながら、これからもいろんな曲を書きまくっていきたいです。