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[ liberal arts-大学生の常識 ]

気候変動の今2017(3)研究を通じて温暖化問題を解決したい

authored by Climate Youth Japan
気候変動の今2017(3) 研究を通じて温暖化問題を解決したい

 こんにちは! Climate Youth Japan(以下CYJ)副代表、東京大学大学院修士1年の新荘と申します。CYJでは、若者が地球温暖化などの気候変動問題に関心を持ち、自ら解決へと導くために、日本国内のさまざまな政策について議論し、提言を提出する活動をしています。

CYJの合宿では、議論を通して、CYJの活動の先にある持続可能な未来が、はっきりと見えてきました

 その一方で、エネルギー分野の研究を通じて問題の解決に貢献することをめざして、日々研究に取り組んでいます。自分の将来の目標に近づくきっかけをつかむために、昨年の11月・12月の2カ月間、ドイツのシュトゥットガルトにあるマックス・プランク固体科学研究所に滞在し、研究を行いました。

 そもそも私がなぜ、地球温暖化に関心を持ったのか、ドイツでの研究を通じて何を学び、感じたかについて、お話ししたいと思います。

地球温暖化への危機感と研究者への夢

 私が地球温暖化にはじめて関心を持ったのは、小学生の時でした。テレビの報道番組で、地球温暖化がもたらす可能性がある未来について取り上げられていました。すでに起き始めていた海面の上昇に加えて、異常気象によって洪水が増加したり、感染症が拡大したり、水不足が深刻化したりすると知って衝撃を受けました。自分の子どもたち、孫たちが生きている間に、地球は人間が住みにくい星になってしまうのではないか、という恐怖を感じました。

高校の文化祭で、燃料電池ゼミの同期とともに。ポスター発表だけでなく、太陽電池のエネルギーでクリーンな水素を作り出し、それで燃料電池を動かす実演も行いました(左から2番目が筆者)

 私は幼い頃、森に囲まれた幼稚園で虫とりをしたり、家では図鑑に夢中になってひたすら魚の名前を覚えたりなど、生きものが大好きでした。小学1年生の時、小学校の文化祭のステージで全校生徒を前に、100種類の魚の名前を何も見ずに言う、という特技アピールをしました。今はもう頭脳的にも精神的にもそんなことは不可能です(笑)。そこから、生きものについて学ぶ科学に自然と興味が湧きました。

 また自分ではあまり覚えていませんが、身の回りのことをすぐに疑問に思って、両親を質問攻めにしていたそうです。そのような興味と性格から、自分の身の回りの疑問について好きなだけ深められる科学者になり、研究を通して地球温暖化という問題を解決したいと漠然と考えました。

 私の母校である清真学園高校(茨城)は文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受け、理系の学生の多くは、課外活動でゼミという単位で研究をしています。その一つとして、燃料電池を研究するゼミがありました。そのころの私は燃料電池について、発電の時に地球温暖化の原因となる温室効果ガスを出さない、クリーンなエネルギー、というイメージしか持っていませんでした。そのようなエネルギーなら、地球温暖化に歯止めをかけられるかもしれない。そう思って燃料電池のゼミに所属し、放課後に研究をするようになりました。

高校の燃料電池ゼミにて。燃料電池で一番大切な材料を準備しているので、カメラには気づいていません(笑)

 しかし実際に燃料電池について詳しく調べたり、自分で燃料電池を作って実験を行ったり、研究所を訪問したりする中で、今の燃料電池には白金という高い金属が使われていること、燃料の水素が天然ガスなどの化石燃料から作られていることなど、色々な面で問題があることを知りました。それはとても高校生の私に解決できそうな問題ではありませんでした。そのような問題を解決するためには、大学でしっかりと科学を学び、最先端の研究の現場に身を置かなければならないと考え、東大を目指して受験勉強に打ち込みました。

 無事に東大に合格しましたが、大学に入って物理や化学を高校とは異なる考え方で学び直す中で、燃料電池そのものよりも、その背景にある化学反応のメカニズムの研究に関心がわきました。燃料電池の技術に直接関われる工学系の研究を行うことも考えましたが、それよりもエネルギーを生み出す根本的な原理を追究したいと思い、理学部化学科に進学しました。

「これだ!」と思った瞬間

 ある日、授業の課題のレポートを書くために、図書館で論文を探していました。そのときに偶然、燃料電池についての論文が目に留まりました。その論文は、白金を使わずに、燃料電池の中でとても重要な化学反応を起こすことに成功したことを報告するものでした【参考文献】。私は「これだ!」と思いました。高校生の時から3年間、心の中で温めていた夢が実現できるかもしれない、という興奮が身体中を駆け巡りました。

CYJは自然エネルギー財団常務理事の大野輝之氏と、意見交換を行いました。自然エネルギーを普及させるための政策について議論し、最後に若者へのメッセージもいただきました

 ちょうど理学部では、学部生を海外の研究室にインターンシップ生として派遣するプログラムが始められていました。そのプログラムは、行きたい研究室の先生に自分で連絡し、受け入れの許可をもらってはじめて応募できるものでした。そのため、私はその論文の責任著者である教授に直接メールを送り、受け入れてほしいとお願いすることになりました。自分のそれまでの研究内容や、燃料電池の研究への思いを震える手でせいいっぱい書きましたが、海外の研究者にメールでお願いをするなどというのは初めての経験だったので、まず断られるだろうとダメ元で送りました。

 ところが意外に、返事はとても好意的なものでした。「滞在を歓迎する。私のグループの研究では操作が難しい手作りの装置を使っていて、研究には時間がかかるから2カ月ではあまり進められないかもしれないが、それでもいいならおいで」と。そのときの感動は今でも鮮やかに思い出すことができます。そのお返事を初めて見たのも図書館の中だったので、ガッツポーズをして「よっしゃ!」と叫びたくなるのをこらえるのに必死でした(笑)。こうして、私は憧れのマックス・プランク研究所で研究できることになったのでした。

【参考文献】
Grumelli, D. et al. Nat. Commun., 2013, 4, 2904.

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