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[ career-働き方 ]

未経験者も即、農家に
農業ベンチャーが就農支援

未経験者も即、農家に農業ベンチャーが就農支援

 農業ベンチャーのseak(シーク、東京・港、栗田紘社長)は農業未経験者の就農を支援する。農地探しから販路開拓まで新規就農に関わる一連の業務をパッケージで提供。就農のハードルを下げることで、農業人口の増加を後押しする。

 シークが運営するビニールハウスは神奈川県藤沢市の田園地帯にある。外観や栽培している作物に目新しさはないが、育てる側が農業未経験者という点に特徴がある。

 新卒で就農しトマトを育てる猿渡遥さん(22)もその一人。2年前、友人を通じて同社がパッケージで提供する総合就農支援サービス「リープ」を知った。農家になるための費用やノウハウに悩んでいたが「ゼロからポンと就農できた」と打ち明ける。

 現在は週休2日で働く。隣り合う畑の農家と休日をずらして助け合う。休みの日でもセンサーを使って遠隔からビニールハウスの湿度や温度を確認できるので安心だ。栽培方法などで分からないことがあればリープのネットを使ったサービスの一つであるチャットで相談に乗ってもらう。

 リープは農業未経験者でも即日農家として活躍できるようにしたサービスで、2016年9月に提供を始めた。栗田社長は「農家になる圧倒的な(高い)ハードルを解決できる」と強調する。

新規就農者向けの農地を一括管理している(神奈川県藤沢市のシークの圃場)

 例えば農家になるための準備。同市では2年程度の事前研修が必要だが、同社が農家として法人認定を受けており研修の必要がない。野菜を栽培する間はチャットを通じ進捗管理を手伝う。農地も同社が市から耕作放棄地を買い取り、ビニールハウスを用意する。

 買い取った畑は土壌のバランスが崩れている可能性があるため、袋の中に土を入れて苗木を育てる方法を採用した。土はタジキスタン出身の最高開発責任者(CDO)の主導で独自開発。お茶や米ぬかを発酵させた液体酵素を混ぜて光合成の効率を高めたという。一般的なトマトの栽培方法に比べ収穫量は2.4倍、単価は2倍に上がった。

 収穫した野菜の販路も同社が開拓する。現在は東京・二子玉川の高級スーパー明治屋の店舗にトマトを卸しており、年内に首都圏の高級スーパー50店舗への出荷を予定する。トマトを600平方メートルで育てた場合、年間の売り上げは600万円程度が見込めるという。

 シークによると、一般的に1千平方メートルの畑を始める場合の初期投資額は3千万円程度だが、同社のサービスでは1千万円程度。畑を分割して1人当たりの面積を通常の5分の1程度の600平方メートルに抑えるからだ。ビニールハウス代も独自規格で部品数を減らして半分程度に下げた。初期費用は同社が提携する金融機関から借りられる。トマト栽培なら3~4年で完済できる額という。

 現在農家としてサービスを利用しているのは12人。規模が小さいため社員として雇っているが、将来はフランチャイズにし農地代や売り上げの15%を手数料として集め収益化する予定だ。猿渡さんも「将来は祖父母のいる熊本県で農家のオーナーになりたい」と話す。

 栗田社長も起業するまで農業の経験がなかった。06年に東京工業大学を卒業後、電通を経て電動車いすベンチャーのWHILL(ウィル、米カリフォルニア州、杉江理最高経営責任者=CEO)の立ち上げに関わった。病気になった家族や同僚を支えるうち、食を通じて健康に貢献したいとの思いが芽生えた。

 初めは農業用センサーのようなIT(情報技術)分野での起業を模索した。ところが就農しようとすると、思わぬ参入障壁があった。「農家になりたい人の目線で就農を助けたい」と立ち上げたのがシークだ。

 当面の目標は農家とやりとりするチャットアプリや温度センサーなどを独自開発することだ。開発を進めるため、3月にはグリーベンチャーズ(東京・港)などから2億円を調達した。18年度に売上高3千万円を見込んでいる。
(企業報道部 吉田楓)[日経産業新聞4月13日付、日経電子版から転載]

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