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「アイマス」キャラが道案内、
ヤフーの使いたくなるカーナビ

「アイマス」キャラが道案内、ヤフーの使いたくなるカーナビ

 ヤフーは3月2日、カーナビアプリの音声案内をアニメやゲームの人気キャラクターに切り替える新機能を追加した。意味や内容は同じでも、声主が違うだけで音声案内の受け取り方はがらりと変わる。20XX年、人工物のロボットは人間に寄り添い、共存する存在になれるか。解決の糸口は2次元の中にある。

「島村卯月」がしゃべりまくる

 ヤフーが始めたのは「きせかえボイス」。「1日あたり利用者(DAU)をサービスの評価指標に据えるが、よく知った道を走る日常生活ではカーナビを使わない」とカーナビサービスマネージャーの兵藤安昭氏。遠出する行楽シーズンだけでなく、毎日使いたくなるカーナビをと、考えた。

現在地表示も「渋谷凜」などのイラストに変更できる

 第1弾に人気スマートフォンゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ(デレステ)」のメンバーを起用した。「島村卯月」(声は大橋彩香)、「渋谷凛」(同福原綾香)、「本田未央」(同原紗友里)の3人だ。100種類以上のオリジナル音声を収録した。

 生活メディア事業本部事業開発2部の浅井克文氏は「ヤフーカーナビが弱い20~30歳代の人気作を探した」と話す。アイドルを育てる「プロデューサー」(デレステプレーヤーの総称)が、3人と車で移動するという自然な設定になるのも好都合だった。

 このカーナビ、とにかくよくしゃべる。「島村卯月、17歳です」と急に自己紹介。「アイドルのお仕事をしていると、毎日いろんなことが起きるんです」と身の上話も始める始末。午後3時には「おやつの時間だ」と騒ぎ出す。通常のカーナビは不要な発言を控え、寡黙を貫く。話し好きの音声案内は煩わしく、恋人や家族との会話の邪魔になるからだ。

 「そろそろ休憩しようよ。未央ちゃんもずっとナビしてると疲れちゃうから」。出発から2時間。お決まりの一言も、本田未央の頼みでは従わざるを得ない。ヤフーはカーナビの精度や安全安心を磨いてきた。今はその機能性を土台に、新しい価値をどう生み出すかの局面。キャラクターを媒介にして運転手の心に響く情報伝達で、事故減少にもつなげたい考えだ。

ソニーの「エクスペリアイヤー」は話しかけやすさを追求した

 ソニーの「エクスペリアイヤー」は声に反応し、メール送信やネット検索を実行する耳装着型のウエアラブル端末だ。3月17日に近未来を描いたアニメ「ソードアート・オンライン」のヒロイン「アスナ」(同戸松遥)がスケジュールを読み上げ、ねぎらいの言葉をかけるサービスを始めた。

 音声操作はタッチパネル代替の注目分野だが、無機質な機械に話しかける動作には違和感や気恥ずかしさも残る。エクスペリアイヤーも音声に声優を起用するなど話しかけやすさに気を配ってきた。さらに一歩踏み込み、アスナというキャラクター性を持てば、一日中でも話しかけられるデバイスになると考えた。

ソニーは「ソードアート・オンライン」のヒロイン「アスナ」を起用した

 キャラクターを持つことで、ロボットは人間に寄り添う存在になる。この観点に行き着いたのは、シャープが早かった。

 2013年に開いたハッカソンで、お掃除ロボ「ココロボ」と連携するガジェットを募ったところ、ココロボを「ツンデレ」にするアイデアが飛び出した。15年にはアニメ「黒執事」に登場する執事「セバスチャン・ミカエリス」(同小野大輔)の声を搭載した限定品に発展している。

 実在しないアニメキャラクターは不完全な存在だ。不完全だから、人間は音声を聞いて欠落している場面や物語の設定を想像で補う。音声の感じ方も、その後の行動も変化する。人間とロボットの間にある溝。その溝を埋めるのは感情認識などのテクノロジーではない。人間の妄想力だ。
(企業報道部 新田祐司)[日経産業新聞から転載、日経電子版2017年3月30日付]

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