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曽和利光の就活相談室就活生の「東西格差」はあるのか

曽和利光の就活相談室 就活生の「東西格差」はあるのか
authored by 曽和利光

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。今回の模擬面接は特別に京都で開催し、関西の就活生に3人集まってもらいました。首都圏と関西、あるいはその他の地方では、就活への取り組みに差がついていないか。今後の就活で意識すべきポイントは何なのか。3人への模擬面接で探ってみます。

今回の参加者
▽奥山明彦さん(関西大学外国語学部4年)
▽中野健人さん(京都大学農学部4年)
▽山下茜さん(京都大学大学院修士2年)
※希望する方の氏名を仮名にしてあります。

面接に慣れていない

今回は関西圏の学生3人に集まってもらった(模擬面接する曽和さん=日本経済新聞京都支社で)

――まず奥山さんにお尋ねします。学生時代にはどんなことを頑張ってきましたか?

奥山さん はい。イギリスに留学したとき、サッカーの指導者ライセンスを取得することに力を入れました。講習会では、参加者が15人から20人ほどいたんですが、そこでライセンスを取得することの概念から学びました。

――なるほど。そこでどんな苦労があったんでしょうか。

奥山さん 言葉の壁というものが、思った以上に大きかったです。今まで日本で学んできた英語とまったく違った英語だったもので、慣れるのがすごく大変でした。

――中野さんはどうですか? どんなことを頑張りましたか。

中野さん 僕は体育会のバレーボール部で、入部時にはとても手が届かなかったレギュラーに、3年かけてなることができました。中高の6年間も取り組んでいたんですが、あまり上達しなくて。そこで、大学ではありとあらゆることを頑張って、トライしてきました。

 今回、連載で初めて関西圏の就活生だけを集めて模擬面接をするわけですが、早くも首都圏の学生との違いが出てきたようです。「あ、問われることに慣れていないな」と、強く感じました。1月か2月ごろに会った就活初期の首都圏の学生にくらべても、まだ慣れていない印象です。首都圏以外の地域では、選考をすでに進めている外資系やベンチャーが少ないせいもあるのでしょう。さまざまな人が集まる首都圏と違ってそれぞれの地域の文化的同質性が高いので、「言わずともわかる」世界で暮らしている背景もあるかもしれませんね。

 問われ慣れていないとどうなるか。端的に指摘できるのは、「言葉が足りない」ということです。どんなことをどのように頑張ったのか、初めて会った面接官に、イメージしてもらえるだけの具体的な情報を示せていないのです。その取り組みがどれほど大変ですごいことなのかを伝えられなければ、ふーん、そうなんだ、で終わってしまうかもしれません。

 例えば奥山さんのケースでいえば、いきなり「講習会」という言葉が出てきましたが、それがどんなものか説明しないと、どんな苦労をしたのかも面接官にはわかりません。そこで私は、重ねて「どんな苦労があったのか」と尋ねたのですが、やはり具体的な情報は出てきませんでした。日常会話ならば、言葉の壁といえばこういうことだね、とわかってもらえても、面接官には生々しい経験談でなければ通じません。

 中野さんの答えも似た部分があります。3年頑張ったと教えてくれたところはよかった。ただ、もしかすると「もともと下手だったからそれぐらい時間がかかったのかな、それなら到達点もたいしたことないかもしれないな」と面接官は疑います。もっと疑問の余地のない形で、どんな苦労の末に実績を残せたのかを教えてほしかったですね。

努力のプロセスこそが人間性

――続けます。中野さんのバレーのチームはどのくらいの規模なんですか?

中野さん 15人です。6人制のバレーですので、レギュラー以外の9人の中から、レギュラー6人の中に入れたということになります。

――そのレギュラーに入るために、具体的にはどんな方法で取り組んだんでしょうか。

面接官がイメージできる情報をあらかじめ示すべきだ(就活生を模擬面接する曽和さん)

中野さん はい。まず、自分のレベルが低いのは自覚していました。そこで、先輩後輩問わず、ひたすら助言を聞き、その内容を実践するように心がけました。毎日反復を続けた結果、技術が身について、うまくなったなと感じられるようになりました。そんな粘り強さで、仕事にも取り組みたいと思います。

 面接官がイメージできるような情報を示すべきだと指摘しましたが、例えばここの「15人のうちの6人」という言い方だけで、果たして情報は足りているでしょうか。その6人が素人に毛の生えたレベルだったら、レギュラーでもたいしたことはなさそうです。逆に、インターハイにも出ていたような6人に追いついたのなら、ものすごく頑張ったといえるかもしれません。面接官の理解を助ける尺度を、問われる前に伝えるべきでしょう。

 私はよく「あった問題、とった対策、出た成果」という言い方をしています。頑張ったことを語る上で、この3点しか話さない学生が非常に多い。まさに中野さんとの問答もそうでしたが、面接に慣れていない学生の典型的な答え方です。目の前の問題をどのように捉えて、どういう考えを経て、どうやって取り組んだのか。そうしたプロセスの情報がすっぽり欠落していますが、これこそが実は大切なのです。その説明を通じて、自分がどんなときにどんなことを考え、どのようにして頑張る人間なのか、という人となりを伝えられるからです。面接での質問はすべて、「あなたはどんな人ですか」という質問の変形だということを忘れないでください。

 中野さんは「粘り強さ」を訴えたかったようですが、私が感じたのは、決めたことをこつこつ続けられる計画性の高さです。「アピールしたい看板」と、それを描写するエピソードがずれてしまっていますね。言葉のニュアンスを意識して、適切な組み合わせで説明するようにしましょう。

「他には?攻撃」に耐えられるか

――奥山さんはライセンス取得の他に頑張ったことはありますか?

奥山さん うーん、他に......高校時代のことなんですが、高校で漫才の大会がありまして。友達にコンビで出場しようと誘われたのですが、大会の1週間前に突然「やっぱりやめる」と言われたんです。仕方ないので、ドタバタだったんですが、何とか頑張って独りで出場を果たしました。

 特に「頑張ったこと」や「強み」を答えるときに、皆さんに注意してほしいのは、他のエピソードを要求される「他には?攻撃」です。サッカーが大好きで、海外での指導ライセンスまで取得してしまった、その行動力を評価してほしい、というのが奥山さんの趣旨のようです。しかし、面接官は「好きなことだから頑張ったんだろうが、その行動力は仕事でも発揮できるのか」と疑います。そこで、「このとおり、自分は他の場面でも頑張れます。行動力は筋金入りです」と証明し、他には?攻撃を跳ね返せるように、複数のエピソードを用意しておくべきでしょう。

 高校時代に遡って語ること自体は一般的に言って悪くないと思います。むしろ、ごく最近の話をするより、「筋金入り」と納得してもらいやすいかもしれません。ただ、この奥山さんの答えはちょっと残念でした。頑張ったこととして、一過性のイベント的な話をしがちなのは、学生に共通の傾向です。そのほうが何か派手でキラキラしたイメージがあるからでしょう。でも、本当に「刺さる」のは、平凡なことであっても長期にわたって地道に取り組んだ経験なのです。

志望動機には「why」が不可欠

――どんな業界に行きたいのか、志望動機についてもうかがいます。山下さんはいかがですか。

山下さん はい。ちょっと抽象的なんですが、子どもがいきいきと生きるのを応援できる企業に就職したいと思っています。子どもがいきいきと生きるには、家族や周囲の人と安心できるつながりをつくれることと、夢中になれるものを持っていることが必要だと考えていまして、その2点に関われる企業を志望しています。

「what」ではなく「why」を(模擬面接を講評する曽和さん)

――そういう考えを持ったのはなぜですか?

山下さん アルバイト先で子どもと接する機会があります。そこで、いきいきと目を輝かせている子とそうでない子の違いは何だろうと考え、先ほどの2点が大切だなと気付いたからです。

 非常にもったいない答え方ですね。「子どもを応援」というのは、その企業や業界が何に取り組んでいるのかについての説明にすぎません。以前も、何に興味を持ったのかという「what」ではなく、そのwhatになぜ引かれたのかの「why」を語るべきだと指摘しましたが、山下さんにとってのwhyが、重ねて聞いても伝わってこないのです。あえて厳しく言いますが、これではバツです。

 確かに子どもがいきいきと生きられることはすばらしいことですが、志望動機としてみれば、単なる理屈にすぎません。理屈を並べるのがなぜダメかというと、山下さんの人間性とはまったく関係ないからです。自分がこんな人生経験をして、その中でこんな思いを持った、だから志望しているんだ――。こんなふうに答えられるようにしておいてほしいと思います。

「東京の人材でないとダメ」の幻想

 期せずして、これまでの連載であがった課題の総ざらえのようになりましたね。自分が頑張ったことを具体的にイメージしてもらえるよう言葉を尽くす。取り組みのプロセスを説明して人となりを伝える。アピールしたい特長とそれを物語るエピソードがずれないように気をつける。「他には?」の問いに答えることで、身についた能力であると証明する。できるだけ長期にわたって取り組んだエピソードを取り上げる。志望動機は経験に基づく「why」を盛り込む。どれも大切なポイントですので、しっかり復習しておいてください。

 首都圏の学生は場数を踏んでいますので、こうしたポイントにもそれなりに対応できているケースが多いものです。実は、そういう格差を踏まえずに、「やはり東京の人材でないとダメだ」と思い込んでいる企業も少なからずあります。東京以外にも、単にここで挙げたような「面接の作法」を十分に身につけていないだけで、本質は優秀だという学生は数多くいるのに、です。

 「あ、自分はまだまだだな」と感じた人は、面接対策に念を入れて、そんな企業側の思い込みを吹き飛ばしましょう。とにかく基本は「言葉が足りない」にならないように、丁寧に伝えることです。実際の面接でも、あるいはOB訪問でもかまいませんので、「自分のことをよく知らない社会人との問答」の経験を積むことを勧めます。例えばスカイプ(ビデオ通話ソフト)を使った面接に対応してくれる東京の企業に応募して、「言わなければわからない」という東京の流儀に触れてみるのも一つの方法かもしれません。

 学生時代のエピソードについても、いろいろなイベントがある首都圏にかなわないかもしれません。でも、あれもこれもつまみ食いするかのような経験よりも、地道にこつこつ打ち込むことのほうが、面接では評価されます。自分はつまらないことしかしていない、たいした実績もない、などと臆せずに自分の人物像をさらけ出してほしいと思います。
[日経電子版2017年4月18日付]

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。
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