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[ career-働き方 ]

サステナブルな会社選び(1)業績だけでは分からない
企業の値打ちとは

authored by 「オルタナ」編集部
サステナブルな会社選び(1) 業績だけでは分からない企業の値打ちとは

 今日から連載「サステナブルな会社選び」を始める、ソーシャル・イノベーション・マガジン「オルタナ」編集長の森摂と申します。この連載は単に営利の追求だけではなく、社会的課題にも積極的に取り組む企業を、皆さんの就職先候補として紹介する企画です。私のほか、オルタナS編集長の池田真隆ら、オルタナ編集部の記者たちが執筆します。

サステナビリティは日本が発信地だった

 まずは自己紹介です。「オルタナ」は2007年3月に創刊したビジネス雑誌で、全国の書店やアマゾンで販売しています。「オルタナS」は、学生(Student)や若者とソーシャル(Social=社会)を結ぶウェブメディア( http://alternas.jp/)です。「オルタナ」とは英語のalternative(オルタナティブ)から作った造語で、「もう一つの選択肢」という意味です。「21世紀の資本主義のあるべき姿とは」を創刊以来の大テーマとしてきました。

 日々の取材対象は、サステナビリティ(持続可能性)やCSR(企業の社会的責任)、社会貢献活動、社会的課題、地域の課題などです。農業など第一次産業や自然エネルギーなどの記事が多いのも特徴です。

 さて、「サステナブルな会社選び」を始める前に、「サステナビリティとは何か」を説明しましょう。「サステナビリティ」は国連のブルントラント委員会が1987年の東京会合で提唱した概念です。つまり今年はサステナビリティが世界に発信されてちょうど30周年であり、その発信地は実は日本だったのです。

COP20会場で、途上国が被る気象災害への補償を求めて先進国に対し抗議する環境団体

 最初は、「サステナブル・ディベロップメント」(持続的開発)という言葉で世に出されました。それまで先進国が特に発展途上国で野放図な開発を繰り広げた結果、熱帯雨林の破壊や貧困や飢餓、絶滅危惧種の乱獲など多くの問題を引き起こしてきました。このままでは地球上の多くの資源が枯渇し、先進国の貧富の格差がさらに拡大してしまう――。東京会議の後、発表された「東京宣言」では、乱開発によるさまざまな悪影響をできるだけ減らそうという国際社会の思いを「サステナブル・ディベロップメント」という言葉に込めたのです。

 余談ですが、私は当時、新聞社の環境庁(現・環境省)クラブ詰め記者として、この東京会合を取材したことを今でも懐かしく覚えています(当時、サステナビリティという言葉に初めて触れましたが、実は恥ずかしながら、最初はピンと来ませんでした)。

「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」

 さて、この動きは1992年の地球サミット(リオデジャネイロ)や、95年から始まる気候変動枠組条約締約国会議(COP)に受け継がれました。ちょうど皆さんが生まれたころでしょう。2年後の97年には、COP3(第3回会議)が京都で開かれ、有名な「京都議定書」が採択され、各国に温室効果ガスの削減目標の設定と実現を求めることになりました。

伊勢志摩サミットではSDGsが主要アジェンダになった

 そして2015年、国連は「SDGs」という新しい国際目標を採択しました。SDGsとは、サステナブル・ディベロップメント・ゴールズ(持続的な開発目標)の略語で、具体的には17のゴールからなります。そこには「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」――というグローバルな社会的課題として取り組むべき17の目標が掲げられています。

 「貧困や飢餓といっても発展途上国のこと」と思われる方も少なくないでしょう。しかし日本でも相対的貧困率(平均世帯所得の半分以下の世帯の率)は16.3%(2012年)に達し、すでに6人に1人が相対的貧困となっています。このような社会的課題に対応し、国や企業、そして個人の行動が、地球や地域の持続可能性を損なわないようにする価値観を「サステナビリティ」「サステナブル」と呼んでいるのです。

 実は、いまこの「SDGs」は世界規模で急速に広がっており、各国政府や企業の行動にも大きな影響を与え始めました。昨年5月に開かれたG7伊勢志摩サミットでもSDGsは主要アジェンダの一つとなり、日本政府も内閣にSDGs推進本部(本部長・安倍晋三首相)を設置しました。

サービス残業や長時間労働も是正求める

 さて、SDGsでは「働き方」についても、規定しています。

――目標8.包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

サステナブル・ブランド国際会議でスピーチをする小池百合子東京都知事

 例えば、近年話題になった「ブラック企業」が社会的に厳しい批判を受けるのはもちろんですが、サービス残業や過度な長時間労働についてもSDGsでは是正を求めているといえます。

 ところで、皆さんは「ミレニアル世代」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。実は、皆さん自身のことなのです。ミレニアル世代は1980年生まれ以降の若い世代(現在37歳以下)で、米国では1億人を超えて最大の消費者層になったほか、欧州、アジア、日本でも増えています。ミレニアル世代は、組織への忠誠心が比較的高くなく、転職もいとわず、出世欲も物欲も高くないといった傾向があります。一方で、社会やコミュニティに対する関心は強く、社会的課題に対処しない企業に対しては批判的になるそうです。皆さんにもこのような傾向があるのではないですか。

 企業はいま、サステナビリティという観点において、社会から厳しい視線を向けられ始めたと言えます。今年3月、日本で初めて「サステナブル・ブランド国際会議」が開かれ、2日間で1300人以上が参加しました。この会議が注目されたのも、日本の経営幹部がサステナビリティと企業ブランディングの統合を重視し始めた証しと言えるでしょう。

 私たちの連載「サステナブルな会社選び」では、企業がさまざまな社会的課題に積極的に対応しているか、コンプライアンス(法令順守はもちろん、さまざまな社会的対応を含む)を推進しているか、従業員に過酷な労働条件を押し付けていないか――などをオルタナ独自の基準を元に、企業規模を問わず選び出し、皆さんにご紹介していきます。今後のご愛読をよろしくお願いいたします。

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