日本経済新聞 関連サイト

OK
[ skill up-自己成長 ]

Road to マルチリンガル(4)英語より日本の勉強を!
~在日外国人と交流する際の
3つのポイント

秋山燿平 authored by 秋山燿平東京大学大学院
Road to マルチリンガル(4) 英語より日本の勉強を!~在日外国人と交流する際の3つのポイント

 みなさん、こんにちは。前回は「外国人と最低限の会話ができる状態になるまでの方法」についてお話ししました。みなさんは言語学習という大海原で生き抜く「犬かき」を習得できたでしょうか? 今回はその大海原を泳いでいく際の具体的なアドバイスをお伝えします。「在日外国人と交流する際の3つのポイント」と称して、言語習得を最も効率良くするための在日外国人との交流方法を見ていきましょう。どれも、私が8言語を学習していきた中で、重要だけど忘れがちなポイントです。

 今回は在日外国人を「観光目的以外で日本に滞在しているすべての外国人」としています。私の経験上、「日本にいなくても日本が好きな親日外国人」にも同様に当てはまるポイントなので、ぜひチャットなどオンラインで交流する場合もご参照ください。

英語で無理に話し過ぎず、時にはあえて日本語で話すこと

 まず1つ目のポイントは「日本語で話すことも積極的に行っていこう」です。これを聞いて変だと思う方も多いかもしれません。確かに、相手と話す時間が1時間だとしたら、その1時間だけを切り取れば無理にでも英語で話した方が上達するでしょう。しかし、その1時間だけで英語を習得することはできません。とすると、大切なのは「その場限りではなく、長期的に英語を学び取れる関係性を作ること」。相手にも関係性を続けるメリットを提供しなければなりません。

 自分が英語を学びたくて、アメリカに語学留学に行ったと想像してください。そこでアメリカ人にずっと日本語で話されたらどう思うでしょうか? 「私は英語を勉強しにきているのに、何か違う......」。そう感じる方も少なくないはずです(僕ならあえて全く日本語が話せない人と交流すると思います)。無理に(それも完璧ではない)英語だけで話すことは、外国人を自分の周りから離す行為かもしれないのです。

 国際交流イベントを主催する僕の元には「国際交流パーティには英語を話せないと参加できないですか?」という質問が数え切れないほど寄せられます。あえて厳しい意見を言うと、それは「自己中心的な考え方」。お互いにメリットになる関係を築くために、時には英語を話したい気持ちを抑えて日本語で会話してみましょう。そうして外国人と良い関係性が作れれば長期的には、皆さんの英語力はより向上しているかもしれません。

付け焼き刃の英会話より、日本のことを勉強しよう

 2つ目は「英語の知識より、日本の知識をインプットしよう」です。例えば皆さんが「カーボベルデ」という国の人と話すとしましょう。彼に何を質問しますか? 多くの方が、まず「カーボベルデってどんな国?」という内容を聞くのではないでしょうか? 私たちは無意識のうちにその人を「国の代表」のように扱い、国の特徴などといったスケールの大きな質問をする傾向があるのです。

 日本人同士で会話する時に日本の国の状況について話すことはあまりないと思いますが、外国人と話す時にはこのような内容が実は多くなります。さらに日本に住んでいる外国人は、日本がとても好きな場合が多く、私たちよりはるかに知識がある場合も少なくありません。日本のことをよく知らないために、外国人との会話が盛り上がらない可能性があるのです。英語が少し話せなくても、相手が日本語を話せる場合もあるだろうし、ジェスチャーや表情でコミュニケーションは取れなくありません。

 共通の話題の方が欠かせません。ですから外国人と交流する前の準備として適切なのは「日本に関する知識のインプット」といえるわけです。日本の歴史もそうですが、特に知っておくべきは「外国人が日本を好きになる理由の上位に来るもの」です。分かりやすい例としては「アニメ」があるでしょう。「ワンピース」について何も知らなければ、外国人との話は途切れ、長期的な英語力向上の機会を失ってしまうかもしれません。

日本人に話しかける数倍は積極的にいこう

 最後のポイントは「羞恥心を忘れて、積極的にいくこと」です。ありきたりなアドバイスが来たと思うかもしれませんが、外国人との交流において積極的にいくべき理由は明確にあります。ここではそれをご紹介しましょう。

 まず1つ目です。例えば皆さんがフランス好きで、念願叶ってパリへ語学留学に行っているとしましょう。そこで鼻の高いイケメンのフランス人が「ワタシハ、ニホンゴヲ、ベンキョウシマス」と頑張って日本語で話しかけてきたらどう思うでしょうか? 面倒くさいと無視する人は少ないでしょう。自分の好きな国の人に自分の母国語を勉強したいと言われて、嬉しくないはずがありません。多くの場合、喜んで教えてあげようとすると思います。

 逆の立場で考えると、在日外国人の方も私たちが積極的に「○○語を勉強したい!」と話しかければ、きっと全力を尽くして教えようとしてくれるはずです。「自分の英語は下手だから、外国人の方に面倒だと思われるのではないだろうか?」こう思って立ち止まっている人は少なくないでしょう。でもその状態は、目の前に自分の大好物の料理が並んでいるのに手に取ろうとしないのと同じです。

 もう1つの理由をお伝えしましょう。例えば皆さんが見ず知らずの日本人に「あなたはとても美しい」と言われたら、おそらく「なんだこの人、ちょっと変だな」と思うでしょう。しかしこれがアメリカ人に「You are so beautiful」と言われた場合はどうでしょう? (確かに変かもしれませんが、)日本人に言われた場合より違和感が少なくないでしょうか? 私はこの現象が起こる理由は「文化の違いが違和感を軽減させている」からだと考えています。

 つまり「日本ではちょっと変だけれど、その国では普通なのかな。これも1つの異文化体験といえるんだろう」という思考回路になるということです。例えばフランスでは、あいさつする際にお互いの頬をつけ、キスの音を立てます。このように、あいさつ1つを取っても国によって大きく異なるのです。その結果、少々日本では変だと思える言動も、外国人との交流においては受け入れられる場合が多くなります。ですから「私はあなたと話したい!」とダイレクトに言うくらい羞恥心を忘れて、日本人に話しかける数倍は積極的に行動してみましょう。

外国人とのやりとりは「双方通行」。相手の立場を考えよう

 これまで3つのポイントをお伝えしてきましたが、その3つに共通することがあります。それは「相手側の立場を考えた上で最適な行動を示している」という点です。言語学習は長い道のり。1日外国人と話しただけで習得できるほど甘くはありません。その場のメリットだけを考えて行動するより、関係を長期化できるアクションによって、長いスパンで見た時に最も早く上達する選択をしましょう。実はこの3つのポイントも、第2回で「言語学習において最も大切な力」として紹介した、「環境構築力」の一部なのです。外国人に「この人と関係を続ければ自分にもメリットがあるな」と思わせること。見落とされがちですが、こう言ったところが実は最も習得スピードを決めているのかもしれません。