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地銀の再編なぜ加速?
地方疲弊とマイナス金利で打撃

地銀の再編なぜ加速?地方疲弊とマイナス金利で打撃

 地方銀行同士が経営統合するというニュースをよく目にするようになったわ。どうして最近、相次いでいるんだろう。私たちの生活にも何か影響が出てくるのかな。

 地方銀行の再編について、佐藤大和編集委員に話を聞いた。

――最近、地方銀行の再編のニュースが目につきます

 「今年に入ってから、すでに3件の再編が表面化しています。一つが大阪府の関西アーバン銀行、近畿大阪銀行と兵庫県のみなと銀行の3行の経営統合です。三重県が地盤の三重銀行と第三銀行も統合を決めました。さらに新潟県では第四銀行と北越銀行が経営統合することでまとまりました。これまでも地銀が再編する例はありましたが、ここに来て加速しています」

――どうして再編が増えているのですか

手を合わせる三井住友銀行の国部毅頭取(右端)ら=大阪市中央区、2017年3月3日

 「大きく2つの事情があります。一つは、地方経済の失速が続いているためです。地方に本拠地を置いている地銀は貸し出しが伸びず、なかなか利益が上げられなくなっています。もう一つが2016年1月に日銀が打ち出したマイナス金利政策の影響です。銀行は貸し出しに回さないお金を日銀に預けますが、預かったお金に日銀が『ペナルティー』を科すというのがマイナス金利政策のポイントです。日銀に預けず、市中に貸し出すように銀行を誘導すれば、世の中にお金が回るようになり、経済が盛り上がるというのが日銀のシナリオです」

 「実際には、このペナルティーの標的にしているのは主に日銀に巨額資金を預けている大手銀です。とはいえ、大手銀が貸し出し姿勢を強めれば、貸出金利に下げ圧力が生じます。金利が高い海外で貸出先を見つけて活路を探れる大手銀と違って、地銀には海外に進出するだけの体力がありません。そのため、国内のマイナス金利政策の影響をまともにかぶるわけです」

 「すでにゼロに近い預金金利はこれ以上、引き下げようがないので、貸出金利と預金金利の差である銀行のもうけが大きく縮小しています。地銀を監督する金融庁は2025年3月期に地銀の半数超が貸し出しなど本業で赤字に転落するという大胆な試算を示しました。このため、他の地銀と経営統合することで力をつけて生き残りをしようとしているのです」

――今後も再編の動きは続きそうですか

 「これからも全国各地で地銀の合従連衡が起きるでしょう。今、地銀は全国に計105行あります。三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行など大手銀に比べて、数が多すぎることが以前から問題になっていました。しかも、大手銀と地域密着の信用金庫や信用組合に挟まれて、地銀は地元で厳しい状況が続いています。金融庁は地銀の破綻を未然に防ぐため再編が重要な選択肢と考えています」

――地銀の再編で私たちの生活にも影響が出ますか

 「地銀は地方経済を支えてきた歴史があります。その地銀が倒れると、ただでさえ疲弊する地方経済がさらに弱ってしまいます。逆に再編を通じて地元の地銀の経営基盤が強くなれば、企業や個人に対し、顧客貢献につながる事業案や商品・サービスなど、より良い提案をしてくれることを期待できます」

 「一方で問題も浮上しています。九州最大手のふくおかフィナンシャルグループ(FG)と長崎県最大手の十八銀行は今年4月の統合を延期しました。公正取引委員会が待ったをかけたからです。ふくおかFGはすでに長崎県の親和銀行を傘下に収めており、十八銀行がグループに入ると長崎県内の融資シェアが7割に迫ります。貸し出し競争がなくなり、融資先への金利が上がることを懸念する公取委の審査が長引いているためです」

 「今後、公取委の審査で、ふくおかFGと十八銀行の統合が認められなかった場合、地銀再編の動きにブレーキがかかる可能性があります。そのため、ふくおかFGと十八銀行の対応や公取委の今後の動向に金融関係者の注目が集まっています」

ちょっとウンチク
地域金融、信金に存在感
 トヨタ自動車を頂点に中小・零細企業に至るまで優良で堅実な製造業が集積する愛知県。おのずと低水準に抑えられる貸出金利は「名古屋金利」の異名を取る。異例の低金利のもう一つの背景は全国3位の岡崎信用金庫など地銀並みの大手信金が競いあう「信金王国」である点だ。
 1990年代の不良債権危機で銀行の破綻が相次ぐなか、信金は業界の結束と再編の先行で乗り切った。「地元の資金ニーズを深掘りせよ」と金融庁は地銀に注文をつけるが、そこは地域密着の信金ががっちり握る。実は全国でも珍しく有力信金が見当たらないのが長崎県だ。公取委が競争が無くなると同県での地銀統合に難色を示すのは、地域金融における信金の存在感を端的に映す。
(編集委員 佐藤大和)

[日本経済新聞夕刊2017年4月17日付、日経電子版から転載]

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