日本経済新聞 関連サイト

OK
[ liberal arts-大学生の常識 ]

カップヌードル「ぶっこみ飯」
自作と別物の食感

カップヌードル「ぶっこみ飯」自作と別物の食感

 「炭水化物を控えなければ」と思っても、ラーメンを食べたあとのスープにご飯を入れる"ラーメンスープご飯"の誘惑にあらがえない人は多いだろう。そんなラーメンスープご飯を、日清食品がインスタントで再現した。それが2017年3月27日に発売された「カップヌードル ぶっこみ飯」(以下、ぶっこみ飯)だ。

 キャッチフレーズは、「罪深き、うまさ」。「湯を注ぐだけの簡単調理で、スープと具材、ライスが一体となったおいしさが味わえる。炭水化物×炭水化物で背徳感を抱きがちなラーメンスープご飯を手軽に味わってほしい」(同商品を担当した日清食品マーケティング部第7グループの金子大介ブランドマネージャー)という。4月17日には「チキンラーメン ぶっこみ飯」も発売した。

 しかし、「カップヌードルを食べたあとのスープに残りご飯を入れればできるものを、わざわざお金を出して買う必要があるだろうか」という素朴な疑問が浮かぶ。はたして、通常のラーメンスープご飯と大手メーカーが真面目に作り込んだぶっこみ飯はどう違うのか。

最初は軽いが、食感がどんどん変化!?

「カップヌードル ぶっこみ飯」(希望小売価格220円)。カップヌードルの味をベースにフライ麺の香ばしい風味を加えたスープに、エビ、スクランブルエッグ、味付き豚ミンチ(通称「謎肉」)などカップヌードルでなじみ深い具材、「カレーメシ」と同じ熱湯調理可能なご飯を合わせている

 試食をしたのは、日清食品オフィスの会議室。「社外の人はまだ誰も食べたことがない」という担当者の言葉に、緊張感と期待が高まる。

 いよいよ試食だ。湯を入れて、待つこと5分。フタを開けると、スープの中に米粒がうっすらと見える。スプーンで全体をかき混ぜて口に運んだ瞬間、最初に「あれ?」と感じたのは、米粒の食感。日清食品のカップライスに使われているのは、炊き上げた米を高温高速の熱風で膨化させて乾燥させた独自製法の"パフライス"。湯戻しした直後は特有のさっくりした軽さが際立つため、ラーメンスープご飯というより浮き身の多いスープのような感じもする。同じパフライスを使っている「カレーメシ」を食べたときはカレールーのとろみで米の食感の違いに気付かなかったが(関連記事「ひと味違う『カレーメシ』店 かつおぶしや紅茶を注入」)、それとは明らかに印象が異なる。

ぶっこみ飯を担当した日清食品マーケティング部第7グループの金子大介ブランドマネージャー

 面白いのは、時間がたつとパフライスがスープを吸って膨らみ、どんどん食感が変化すること。「ふんわりした軽い食感の前半派」「もっちりした食感の後半派」「その中間派」と、食感の好みが分かれそうだ。これだけ軽い食感なら、それほど罪悪感もなく食べられそう、と思ったのもつかの間、「ぶっこみ飯1食でおにぎり3個分のボリューム感がある」(金子ブランドマネージャー)とのことなので、全部食べるとかなり腹持ちが良さそう。しかし、カップヌードルが353kcalなのに対して346kcalと、本家よりカロリーは少ないのだ。

 スープの味については、「かなり近い」という印象。「カップヌードルやチキンラーメンは麺自体にも味が付いており、フライ麺なので油分も含まれている。そのため、麺をご飯に変えただけでは同じ味にならない。本来の味を再現するために、さまざまな味を調整する必要があった」(金子大介ブランドマネージャー)という。

 チキンラーメン ぶっこみ飯も食べてみたが、「チキンラーメンにライスをぶっこんだ味、そのまま!」と驚いた。こちらはライスと麺がミックスされているのがポイント。短くカットした麺の食感がアクセントになり、普通のご飯との食感の違いがあまり感じられない。なじんだ麺の食感も同時に味わえるのも、「そのまま」の味を感じさせる要因なのかもしれない。具はカップ麺タイプよりかなり多めで、特にささみ肉のボリューム感に驚いた。こちらもチキンラーメンどんぶりが370kcalなのに対して315kcalと、本家よりカロリーが少ない。

4月17日発売の「チキンラーメン ぶっこみ飯」(希望小売価格220円)は熱湯調理可能なご飯にチキンラーメンの麺をミックス

湯をかける前のカップヌードル ぶっこみ飯

5分間おき、湯で戻した状態。ご飯の上に少しスープがあるのを、全体に混ぜる。スープを吸ったご飯は、最初の軽い食感から、時間を追って変化していく

チキンラーメンぶっこみ飯はライスに麺が混ざっている。具の鶏ささみのリアルな食感とボリューム感に驚いた

自作のラーメンスープご飯とは全くの別物

 さらに金子ブランドマネージャーによると、通常のラーメンスープご飯がスープとご飯の比率で味わいが大きく変わるのに対し、ぶっこみ飯の利点は日清食品が考えるベストバランスのラーメンスープご飯が常に味わえることだとという。

 本当にそうなのか。自宅でカップヌードルのスープにご飯を入れ、ラーメンスープご飯を作ってみた。それで分かったのは、バランス云々よりも、ぶっこみ飯と自作のラーメンスープご飯は、"米の存在感"が違うということだった。

 ぶっこみ飯は最初からご飯にスープの味がしみ込んでいて、時間がたつほどさらにスープとご飯の一体感が増し、炊き込みご飯のような味わいになる。それと比べるとスープにご飯を入れたラーメンスープご飯は、ご飯の甘みが強く感じられる。"ご飯物好き"にはこちらのほうが向いている気がするが、カップヌードルらしさをより味わいたいなら、ご飯とスープにより一体感があるぶっこみ飯だろう。つまり、似ているようで別物なのだ。

ぶっこみ飯は「あり」か「なし」か、新たな論争勃発?

 そもそもぶっこみ飯を企画したきっかけは、2016年8月のリニューアルで湯をかけるだけで調理できるようになったカップライス「日清カレーメシ」シリーズが20~30代の若年層を中心にヒットしたことだったという。「トライアル購入がどっと増え、爆発的に売れた。同じようにユーザーに響くカップライス商品が作れないか考えたとき、ラーメンスープご飯は熱烈なファンが多く、顕在化した需要があるということに気付いた」(金子ブランドマネージャー)

 2007年に発売した「カップヌードル ミルクシーフードヌードル」も、"シーフードヌードルをホットミルクで作るとおいしい"というインターネット上の噂に着目し、本気で作り込んだ結果、ヒットした商品。ラーメンスープご飯にも同様の可能性を感じたという。

キャッチフレーズは「罪深き、うまさ。」

 最も苦労したのは、「カップヌードルらしさ」「チキンラーメンらしさ」を担保すること。それぞれのブランドマネージャーのチェックも併せて検証を重ねたが、麺なしで本来の味を再構築する試作の過程で「この要素が大事だったのか」という新たな発見も多かったという。

 そうした苦労を重ねてまで新カテゴリーのシリーズを開発したのは、即席麺事業に次ぐ柱としてご飯事業を育成するという大きな目標があるからだ。「1975年から挑戦し続けてきた分野だが、ここに来てやっと成功できそうな可能性が見えてきた。魅力や話題性のある商品を開発し、カップ麺ユーザーの選択肢のひとつにカップライスを入れてもらえるよう呼び込んで、カップライス市場そのものを広げたい」(金子ブランドマネージャー)

 ターゲットは20~30代を中心とした若年層。カップライスはカップ麺より腹持ちが良いイメージがあるため、コストパフォーマンスの良さから若年層に好まれている傾向がある。「カップ麺とカップライスでは食べるシーンが少しずれている。『ボリューム感があるので、昼食だけでなく夕食にもなる』という声もいただいている。手軽さとボリューム感の両立というすきま需要を取り込んでいければ」(金子ブランドマネージャー)。同社ではレンジ調理方式のカップライスシリーズの生産を終了しており、今後は湯かけ方式に統一。新たな商品を投入していくという。

 自分で作るラーメンスープご飯とかなり異なるぶっこみ飯をめぐっては、発売後に「あり」か「なし」か、ネットで論争が巻き起こる予感もする。「ぶっこみ飯がラーメンスープご飯の絶対的な正解だとは考えていない。あくまでも"日清食品が考えた正解"であり、それぞれに自分流の好みがあると思うが、『これはこれでおいしい』と思ってもらえれば大成功」(金子ブランドマネージャー)。「10分どん兵衛」など消費者間の話題をうまく取り込む同社らしい商品ともいえるだろう。

(ライター 桑原恵美子)[日経トレンディネット 2017年3月27日付の記事を再構成、日経電子版から転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>