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「学び合う」という数学オリンピックセミナー体験

数学×音楽=創造!(5)

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NIKKEI STYLE

毎年、7月の国際数学オリンピック後に、日本数学オリンピックでは「JMO夏季セミナー」を開催します。この夏季セミナーには、日本国内本選を通過し春合宿に進んだ約20名と、外部から作文応募で選ばれた数名が、先輩チューターと共に参加します。なお、現在は、日本はヨーロッパにおける女性だけの数学オリンピックEGMOにも参加しており、EGMO 候補者も JMO 夏季セミナーにも参加できます。当時の開催場所は南紀白浜でしたが、近年の開催場所は清里高原です。

このセミナーでは、初日、数冊の数学の専門書から一冊を選び、数日間をかけてグループで輪読を行い、本の内容についての造詣を深めます。まるで大学のゼミのような光景ですが、これがまた実に刺激的で「面白い!」ものでした。著名な数学者の先生方も数名参加して、大学や大学院のような心躍る数学の講義を提供してくださいました。

数々の数字の構造の不思議がまるで図形のように見えてくる数論幾何、全ての計算や証明を論理記号だけを用いて組み立て直そうとする記号論理学、素数の神秘を伝えてくれる講義、柔らかい幾何学トポロジー、微分幾何学...実にワクワクする講義の連続で、私はますます数学に魅惑されました。また、輪読では、チューターや先生方の力を借りながらも、そうした壮大な世界に「自分たちの力で」切り込み、理解しようと悪戦苦闘することを促されました。

数式からイメージが立ち昇る

例えばあるひと夏は、Miles Reidが 著した "Undergraduate Algebraic Geometry(大学生のための代数幾何学)" を一部英語で読みましたが、数論の中に眠る幾何学的な姿(素数が空間化されるなど)が徐々に見えてくるにつれ、本当に脳の中で数式と絵がリンクしはじめ、まるで絵画のような新しいイメージが沸き上がってきて衝撃を受けました。私の脳は、こうした夏季セミナーなどを通して、本当にどんどん数学の醍醐味に惹き込まれていきました。

同時に、夏季セミナーは高校生らしく、皆で海やプールで遊び回ったり、南方熊楠(みなかた・くまぐす)記念館で感動したり(私はしばらく熊楠の大ファンとなり、著書『南方曼荼羅』などを読みふけりました)、夜中じゅうさまざまな数学や人生について語りあかしたり(4次元は「見える」という人と「見えない」という人で激論を交わしました)...さまざまな個性溢れる異能と人々と出会い、ぶつかり、本気で語った数日間は今でも忘れられません。

他にも、当時京都大学が京都五山の送り火の時期に開催した通称「大文字セミナー」、黒川信重先生(東京工業大学教授、ゼータ関数の大家)が高校生対象に開催した「湘南セミナー」、東京大学大学院数理科学研究科の公開セミナー、「整数論サマースクール」など、私は高校時代からさまざまな大学・大学院レベルの数学に挑戦し、最先端の現代数学のシャワーを浴びました。

私が高校生の頃、数学オリンピックの先輩であった吉田輝義さんが中心になり、「こんな魅力的で最高に面白い現代数学を、数学科の人だけのものにしておくのは勿体ない!!!」という思いから、「中高生のための現代数学の学び場:K会」という学び場が、河合塾傘下で設立しました。私自身も大学1年から早速講師側で参加することになります。数学者の卵である数学オリンピックの先輩や仲間と共に、私たちはカリキュラムを一から作り上げました。ゼミ形式で教えると同時に、私たち講師自身も学び続けることで、多くの気付きを得られました。

何でもいい、何か一歩進んでみよう

このように、充実した学生生活に恵まれた私から、学生のみなさんにお伝えしたいことがあります。それは、世界に面白いものは実にたくさんあり、自分で限界を決める必要は絶対ない! ということ。数学、科学、工学、国文学、社会、政治、哲学...。学校の勉強のすべてにを通して、私たちは実にさまざまな学びと出会うことができます。その際、少しでも面白いなぁと感じたときは、思い切って勇気を出して、普段なら越えない線の一歩先へ踏み出してほしいのです。それは、絶対に人生の中での重要な糧になります。「才能があるかどうかなんて考える必要はありません。

「才能」というものがあるとすれば、どれだけ夢中になれるか、勇気を出して一歩前に進めるか。今は特にインターネットがあるために、手を伸ばせば、実に豊富な人類の財産に簡単にたどり着くことができます。とはいえ、対面のコミュニケーションの深さと醍醐味は、やはりネット上のコミュニケーションを圧倒します。自分の興味にあったさまざまなセミナーを探し、ぜひ勇気を出して(落とされることも怖がらず!)何度も少し先の学びに手を伸ばしてみてください。

また、時には同世代の仲間をリードする存在になることも大切です。誰かが言い出し、仲間が集ってチームになることで、一人ではできないことを実現することができるようになります。勇気をもって何かをリードする、言い出す、作り出す。同世代の仲間だけでなく、次世代にまで環境が整えられていくことがあります(前述のK会はいまだに続いています!)。時に国境や性別、年齢や分野を超えたリーダーとしての体験やチームでの協働体験は、たとえ自分の専門につながらなくても、今後の人生全般の中での総合的な力となっていくことと思います。

スティーブ・ジョブズが、「いつか必ず "Connecting Dots" できる」と述べたように、若い時代に夢中になって心の赴くままに学んだことは絶対に将来何かにつながります。挑戦体験は、人生の試練を乗り越えていく際に大切な<思考・感性の力>を育みます。何か自分の中に深い垂直方向の学びを持つと、それは将来的に水平方向の力にもつながります。次回以降お話しますが、私自身、学生時代のこうした数学に関わる体験は、今選んでいる「音楽」人生の中でも深く息づいています。みなさんも、ぜひさまざまなチャンスに飛び込み、夢中になる体験を見つけてください。

次回は、大学での音楽との出会いについてお話ししたいと思います。

現在の私の数学と音楽活動について、朝日新聞5月31日朝刊でインタビューしていただきました。

「ジャズピアニストで数学者 中島さち子の論理と感性」

http://digital.asahi.com/articles/ASK584CTWK58UPQJ00R.html

中島さち子
 1979年生まれ。1996年、日本人女性初の国際数学オリンピック金メダル獲得、翌年銀メダル獲得。大学時代にジャズに出会い、東京大学理学部数学科卒業後、音楽家の道へ。2010年中島さち子TRIOとしてアルバム「Rejoice」リリース。著書に『人生を変える「数学」そして「音楽」』(講談社)など。現在は音楽活動の他、Phoenix Consulting CEO室長として、グローバル人材育成支援に携わる。数学×音楽の講演・ワークショップ・執筆など幅広く活動。

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