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Road to マルチリンガル(5)「実力を反映しないから無意味」は早計!
~語学検定の本当の使い方

秋山燿平 authored by 秋山燿平東京大学大学院
Road to マルチリンガル(5) 「実力を反映しないから無意味」は早計!~語学検定の本当の使い方

 みなさん、こんにちは。最速でマルチリンガルになる方法として、「外国人と話すために最低限必要な事項(犬かき)のみをインプットし、外国人と交流する」という流れを、気をつけるべきポイントと併せてお伝えしてきました。今回は僕が言語学習の仕上げとして利用する「語学検定」についてお話しします。

「実力を反映しないから受けない」という考えはもったいない

 TOEICや英検等の語学検定は、しばしば批判の対象となります。その理由としてメジャーなものの一つが「本来の実力を反映していない」というもの。私の考えとして、これは仕方がないと思います。言語という「相手に自分の思いを伝えるツール」を測る試験が、(一部面接が存在しているとはいえ、ほとんどが)伝える相手のいない紙という媒体を通じて行われているのですから。

 だからといって「自分は検定受けません」と拒絶するのは非常にもったいない。「言語能力の証明」以外に、検定が言語学習にもたらす大きな意義があるからです。その意義を解説しながら、言語学習の仕上げに進んでいきましょう。

「ペースメーカー」としての語学検定

 例えば今日からフランス語の勉強を始めるとします。「話せるようになる」という遠いゴールを前にして、今日何をすべきかを明確にするのは簡単なことではないでしょう。このように目標が遠すぎると、やるべきことが明確にならず、挫折してしまう可能性が高まってしまいます。それを防ぐために「短期目標を設定する」ことが大切です。

 この目標として語学検定が非常に有効なのです。適切なタイミングで検定を受けることで、その検定を突破するためにやるべきことが明確になります。それにがむしゃらに取り組むことで、やることが分からず挫折することもなく、いつの間にか言語能力も上がります。言語学習以外の例を挙げると、定期テストや模擬試験が近い存在です。

 高校に入学して「さあ、今から東大合格を目指して頑張るぞ」と決意しても、今何をすれば良いかは分からず、結局遊んでしまう可能性が高いでしょう。そこで、まずは範囲が決まってる(勉強すべきことが決まっている)定期テストや模擬試験で点を取ることを目標にして、そのために頑張る。その積み重ねで、徐々に合格というゴールへと挫折せずに近づいていくことができるのです。ちょうど長距離マラソンのコースで目印になる「ペースメーカー」のような存在、これが語学検定の大きな意義の一つだと思います。

「矯正ベルト」としての語学検定

 もう一つ、語学検定の大きな意義をご紹介しましょう。これまで私は「最低限のインプットをして外国人と会話する」という軸で話を進めてきました。この方法はモチベーション維持には有効な方法ですが、一つ大きな欠点があります。それは「得られる知識が大きく偏る」ということです。そこまで親しくない外国人との会話で話す内容はどのようなものでしょうか? 以前もお伝えしたように、自分の身分、趣味などで大抵完結するでしょう。あとはお互いの国についての話もあるかもしれませんが、せいぜいそんなものです。ですから、会話はできますが知識の面ではかなり偏ってしまうのが現実です。

 これではいつまでたってもレベルの高い議論はできません。ここで登場するのが語学検定なのです。検定は「その言語を勉強している不特定多数に向けたもの」。不満の出ない平等な試験にするためには、幅広い分野から知識を試す問題が出題されるはずです。これは会話重視で勉強してきた人にとっては非常に好都合。検定合格のために勉強すると、自然と偏った知識が是正されていきます。合格した頃には、自分の得意分野だけでなく、幅広いジャンルについて話せるようになっているでしょう。猫背の人が装着していると、自然と姿勢が直っていく「矯正ベルト」のような存在、これも語学検定の大きな意義の一つと言えるでしょう。

では、いつどれを受けるべきか?

 さて、ここまで語学検定の隠れた大きな意義を説明してきました。言語学習においてこの検定の存在が小さくないことが分かっていただけたでしょうか? ではここからは「どんな検定を、どのタイミングで受けるべきか?」について自分の考えをご紹介していきます。

 まず「どんな検定を受けるべきか?」についてですが、検定には大きく分けて2種類あります。「日本の協会主催の、日本人のみを対象としたもの」と「その国の協会主催の、世界中の学習者を対象としたもの」の2つです。翻訳家や通訳者になりたい場合を除けば、受けるべきは後者だと思います。後者はいわゆる「コミュニケーション」を重視した内容となっており、勉強した内容がそのまま実用できる可能性がより高いのです。例えば英語は「TOEIC/TOEFL」、中国語は「HSK」、韓国語は「TOPIK」、フランス語は「DELF/DALF」、スペイン語は「DELE」などが該当します。「その検定が、日本主催か現地主催か」を基準に選択すれば良いでしょう。

検定を受けるタイミングは「ある程度泳げるようになってから」

 ではどのタイミングで検定を受けるのが良いのでしょうか? 検定を勉強する際には、必ず「自分が直接的に使う必要のない知識」を覚えないといけない場面が出てきます。まだほとんど話すこともできず、外国人と会話ができた成功体験もない状態でそのような知識を覚えようとするとどうなるでしょうか? おそらく、検定を受ける前に挫折してしまうでしょう。ですから、受けるべきタイミングは「ある程度外国人との会話ができるようになった時」です。

 自分の趣味など得意な領域で話ができるようになった状態が、検定の受けどきといえるでしょう。「外国人と会話ができた」という成功体験を手にしていれば、多少の面倒くさい文法や自分に直接関係ない単語も挫折せずに覚えるエネルギーを得ているはずです。最低限の「犬かき」を覚え、実際に言語学習という大海原をある程度泳げるようになったタイミング。この時期の語学検定は、向こう岸へと泳ぎ切る強力な助っ人となることでしょう。

 いかがでしたでしょうか? 語学検定も、使い方次第では言語学習における必須アイテムとなります。TOEICを除けば高頻度でやってるわけではないので、時期が合わないこともあると思いますが、受けるタイミングはとても重要だと思っています。僕は検定の開催日程を見て、勉強する言語を選択したこともあるほどです。ぜひ検定を無意味だと敬遠せずに、積極的に活用してみましょう。