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食の訪問記(10) 蒲刈物産(下)海藻「ホンダワラ」の旨みが凝縮された味

平井幸奈 authored by 平井幸奈株式会社フォルスタイル代表取締役CEO
食の訪問記(10) 蒲刈物産(下) 海藻「ホンダワラ」の旨みが凝縮された味

 「海人のお塩」で知られる蒲刈物産の訪問記2回目です。前回は藻塩が生まれるきっかけ、その製法に30年もかかった話などを伺いました。

「こんな味じゃダメだ」

平井 第三セクターで体制ができあがり、その後出荷までの苦労はありましたか。

高橋 製法ができてからも、商品として出荷するまでは大きな壁がありました。まず、製法を研究された松浦さんに出荷の許可を取ることが大変でした。「こんな味じゃダメだ」と何度も何度も突き返されて。

高橋さん(左)と石川工場長(右)
会社概要
蒲刈物産株式会社
事業内容:塩の製造販売
設立:1998年
従業員数:19人
売上高:234百万円(平成28年度)
1999年第13回ニッポン全国むらおこし展通商産業大臣賞受賞
2002年平成13年農林水産省優良ふるさと食品中央コンクール優秀賞受賞

石井 量産するために機械化をしたのですが、それが土器で作ったものと差がありすぎると指摘されていたんです。とはいうものの、一度藻塩を作るのにまる2日かかります。

平井 それはなかなか時間と労力のかかる作業ですね。

高橋 それを半年間繰り返してやっとOKがいただけました。

平井 味にもクオリティにも1ミリの妥協も許されないと。

はじめは在庫の山でした

高橋 ともあれOKが出ても、はじめはなかなか売れなくて。事業ベースでは軌道に乗らず在庫の山でした。

平井 どのように乗り越えられたのですか。

高橋 時間をかけてPR活動をしていく中で、徐々に広まっていきました。特に全国放送のテレビで取り上げられた後は、この蒲刈にわざわざ足を運んでくださるお客様も多くいらっしゃいました。

平井 蒲刈は美しい海に面している島。観光にもぴったりですもんね。実は私も小さい頃に、この場所に家族で藻塩づくりの体験に来たことがあるんです。今でも強く印象に残っています。

石井 嬉しいです。やはり来ていただくのが一番なんですよ。一番嬉しかったのは、わざわざ長野県から家族三世代でこの場所に来られた方からいただいたお言葉です。「広島に行くなら、宮島も平和公園もいいけど、何より蒲刈に行ってみたい。藻塩がどのように作られているか見てみたい。そう思ってはるばるこちらに来ました」。そう言ってくださったんです。

平井 日本各地の藻塩ファンがわざわざこの場所に足を運ばれるのですね。

高橋 認知度はまだまだだとは思っているのですが。ありがたいことに今では全国47都道府県全てから購入があります。

石井 やはり現場の人間としてはお客さんに「美味しい」と言っていただくことが何よりも嬉しいですよ。

県民の浜である恋ヶ浜

原料は海藻と海水

平井 海人の藻塩がどのように作られているか、製造過程を見学してもいいですか。

石井 もちろんです。まずこちらが原料の海藻「ホンダワラ」です。このホンダワラと海水を使用します。

平井 このホンダワラに、天然の旨味が凝縮されているのですね。

国産のホンダワラが原料

藻の成分を抽出したかん水を煮詰めます

石井 そうです。海水は不純物などを取り除いてから濃縮し、乾燥させたホンダワラを浸して6~8時間煮詰めていくと、塩の結晶ができあがります。煮ている間ずっと人の手でていねいにアクを除いています。

平井 海水をそのまま煮詰めるのはとても加熱するエネルギーが必要ですよね。海水の塩分濃度は3%と仮定すると97%の水を飛ばさなければならない。

石井 その通りです。その後、遠心分離機にかけて程よく"にがり"を残し、ゆっくりじっくり、焼き釜で仕上げていきます。

平井 昔の人はなぜ海藻のホンダワラを入れることを考えられたのでしょう。

石井 塩水をどのように短時間で塩にすればいいかと考えて、ホンダワラを入れることを考えたんです。海人の藻塩がベージュ色なのは、海藻の成分も出て来て、茶色くなっているからですよ。

遠心分離機にかけ余分なにがりをとばします

塩を焼き釜で煎ります

コストと手間がかかる

平井 海人の藻塩の製造で苦労されてることはありますか。

石井 海水や海藻は全て自然由来のものなので状態は毎年異なります。海藻の保管一つにしても、湿度と温度を一定に保って保管することに、莫大なコストがかかるのです。他にも機械が故障して夜中の2時まで作業したりだとか、問題は次々と発生しますが一つひとつ丁寧に向き合うことを心がけています。

平井 美味しい海人の藻塩ができあがるまでに多大な苦労があるのですね。

風味を損なわないように素早く梱包します

石井 同じ塩でも、目の荒さ一つでインスピレーションが大きく違うんですよ。できあがりの色も少しずつ異なります。常に最高のクオリティの藻塩が作れるように試行錯誤をしています。

刺身に藻塩とわさびを

平井 海人の藻塩はどのように食べるのがおすすめですか。

石井 刺身に藻塩とわさびをつけて食べるのが最高ですね。

高橋 真夏の暑い時期に水分も喉に通らないような日があるじゃないですか。そんな時に、シンプルに米に少しこの藻塩を振りかけていただくと喉を通るんですよ。うちの藻塩はミネラルが豊富で手につけると体温で溶けてしまうんです。だから米に直接ふって混ぜていただきたい。

工場内で石井工場長と

平井 私の呉の実家でも愛用しています。

高橋 ありがたいです。我々の原点はここ蒲刈。まず蒲刈で広まって育てられ、その後呉市に広まってもう一回り大きく育てられました。次は広島県です。

石井 広島で調味料というと藻塩! と答えていただけるような存在になりたいですね。

高橋 もちろん、広島の先に、日本、世界を見据えています。生産規模と生産能力を考えて一歩一歩進んでいきます。

平井 貴重なお話をありがとうございました!

海人の藻塩ウェブサイト