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日本経済新聞「未来面」
学生から三井造船社長への提案
「世界各地に水中水族館を」

日本経済新聞「未来面」 学生から三井造船社長への提案 「世界各地に水中水族館を」

 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。共通テーマは「革新力」です。今回は三井造船社長・田中孝雄さんからの「海から世界を変えるために何ができますか」という課題について、学生の皆さんから多数のご投稿をいただきました。

 ここで紹介したのはほんの一部です。掲載できなかったアイデアを日経電子版の未来面サイトで紹介しています。

【課題編】「海から世界を変えるために何ができますか」

田中孝雄・三井造船社長

 日本は陸の面積では世界61位ですが、海の面積、つまり資源開発などの権利を有する排他的経済水域(EEZ)などの広さでは、世界6位の海洋大国です。しかも1位の米国と大きな差はありません。海は地球の7割を占めるほど広いですが、その開発はまだまだこれからです。海底に眠るエネルギー資源、希少金属などの鉱物資源、魚などの食料資源、レジャーなどの観光資源と、海はまさに可能性の宝庫です。

田中孝雄・三井造船社長

 三井造船は2017年11月に、創業100周年を迎えます。ずっと海と共に生きてきた会社です。船を作るだけでなく、海に対する人々の夢や期待を、1つずつかなえてきました。例えば、海底油田開発では世界で指折りの会社ですし、日本の近海に大量に埋蔵されているといわれるメタンハイドレートの開発でも、主導的な役割を担っています。近い将来、メタンハイドレートの採掘が実現すれば、日本は資源輸出国になれるかもしれません。海は日本だけでなく、世界を大きく変える可能性を秘めているのです。

 「チームクロシオ」と呼ばれるプロジェクトでは、海底地図の作製を試みています。陸の開発はかなり進み、宇宙開発も徐々に始まっていますが、海底にもまだ多くの未開のフロンティアがあり、どんな未来が開けるのか考えただけでわくわくします。こうした海への夢や期待を実現する試みには、当社だけでなく、世界中から優れた技術や高い志を持つ仲間が結集し、世界の人々のために日夜、汗を流しています。

 かつて日本には「海洋牧場」という国家的な構想がありました。豊富に炭素などを含む昆布を育て、そこからエネルギーを確保する試みでした。残念ながら頓挫しましたが、海は人々にとって、エネルギーだけでなく、食料の宝庫でもあります。貴重なたんぱく源である魚を海中で捕獲し、陸上に運ぶまでの間に加工する技術が実現すれば、鮮度やコストなど様々な面で、魚の流通システムは大きく変わるでしょう。

 洋上での風力発電に力を入れてきましたが、潮流を活用した発電など新しい電源開発の研究も進んでいます。潮流発電が現実になれば、海底に発電設備を置き、海中で様々なことができます。海中工場も夢ではありません。

 海からの多くの恵みで人は生きてきました。当社は次の100年もまた海と共に生き、海がもたらす恩恵を世界の人々に届ける会社であり続けます。そこで皆さんにお願いです。海から世界を変えるために、私たちは何ができるでしょうか。大胆で独創的なアイデアを教えてください。海は無限の可能性を秘めています。私たちと共に、海から世界を変えていきましょう。
(日本経済新聞2017年6月5日付)

◇    ◇

【アイデア編】

アイデア001 世界各地に「水中水族館」
木原 聡美(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部2年、20歳)

 レジャー施設の活性化につながると考えている。水族館を海の中に造るとしよう。現在は水中での運営は容易ではない。ただ、潮の流れを生かして電気を生む「潮流発電」が現実になれば、海中や海底で様々な活動が可能になるといわれている。私たちは現在、飼育する魚を地上で見て楽しんでいる。水族館を逆の発想で考えると、私たちがガラスで造られた施設に入り、実際に泳いでいる魚を見ることができるようになるのではないか。映画などで体験するような世界を、現実のものにする方法だと考える。自由に水中で生活している生き物を見る「水中水族館」が実現すれば、今後のレジャー産業を活性化させるに違いない。また、地域によって生息する魚の種類は異なる。世界各地に水中水族館を造れば特徴の違いが生まれ、集客力の向上につながるだろう。

アイデア002 国際海洋ステーションで深海調査
村田 晃一郎(海陽学園海陽中等教育学校中学3年、14歳)

 海から人々に恩恵をもたらすためには海をよく知る必要があると思う。宇宙には国際宇宙ステーション(ISS)がある。一方、同じく未知の世界が広がる海にはそのような施設はない。そこで、国際海洋ステーション(IOS)を設立し、海洋調査をすればよいのではないかと考える。世界最深のチャレンジャー海淵など、海には通常の潜水艇では到達できないところがある。宇宙服のように海洋服を開発し、このような場所でIOSの外に出て、潜水艇や地上からだけでなく、人の目によっても調査をするのはどうだろうか。こうした技術は、米航空宇宙局(NASA)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などとの連携で実現しやすくなるだろう。IOSは三井造船が主体となって他の日本の海洋調査にかかわる企業を包含し、オール日本で世界をけん引していくことで、日本経済全体によい循環が生まれ、わが国が持続的に発展できるのではないだろうか。

アイデア003 洋上発電と海水の淡水化、一体的に
森 孝嘉(会社員、37歳)

 海水を淡水にするプラントを開発し、風力や潮力、沿岸太陽光などを使った洋上発電、沿岸発電を利用する。電力網や配水パイプラインをセットにして、丸ごとパッケージとして規模に応じて全世界の沿岸地域に設置できるようにしたらどうだろう。設置した後のメンテナンスやオペレーションは日本企業と現地企業による合弁会社にすべて委任する体制にする。全世界のどの沿岸地域でも、そしてどんな環境でも設置できる商品にして、メンテナンスとオペレーションは合弁会社が請け負う。これらを通じて現地化を進めれば、各地域の経済の自立を促すことができるようになる。継続的な収入を確実に得られる仕組みにすることが重要だ。メンテナンスなどで必要になる部品の調達も現地で対処できるようにすればコストを抑えられる。同時に現地の雇用創出にもつながるだろう。

アイデア004 海上の火力発電で離島に送電
岸 奈央樹(中央大学商学部1年、18歳)

 海上に浮かぶ島に火力発電所を作ることで、世界が変わるのではないだろうか。海に浮かぶ様々な島、あるいは列島の中心に発電施設を設置して、電気の通らない離島に電気を供給できるようにする。送電するには、非常に太い送電線を水中に沈めて、途中で切れないようにするのが重要だ。海上の発電なので、仮に大きな事故が起きてしまっても、人への被害は最小限に抑えられる。火力発電に使う燃料は石油や石炭だが、その運搬時には陸上よりも海上で扱う方がコストを抑えられるのではないだろうか。最近では、海底からメタンハイドレートなどの資源が見つかっている。海を生かして燃料の採掘と発電、送電が一気にできるようになるかもしれない。

【講評】 田中孝雄・三井造船社長

 まるで海の持つ無限の可能性を映したかのように、今回、想像を超えるたくさんの提案をいただきました。社内の会議ではまず出てこないような、新鮮で夢のある意見が多かったと思います。

 「洋上発電」は実現可能性の高いアイデアです。いわば「動く海の発電所」で、離島や被災地など発電施設の建設が難しい場所でも、あらかじめ組み立てた発電施設をパッケージで運び込み、すぐに稼働できるようになります。カリブ海、地中海、西アフリカ、インドネシアなど島が多い国や地域で、動く発電所のニーズが大いにありそうです。

 「国際海洋ステーション」もワクワクしますね。今でも7000メートルの深海まで有人探査船で行くことができますが、大規模な海底基地を建設できれば、調査能力は飛躍的に高まります。深海は水圧が高く食料も乏しい厳しい環境ですが、それでも育つ生物の実態を解明できれば、陸上で暮らす人類の生活に役立つ新しいデータが見つかるかもしれません。

 「世界各地に『水中水族館』」は、レジャー資源としての海の可能性を感じさせます。スキューバダイビングが趣味という方も多いですが、海中リゾート施設が誕生したら、自力で潜らなくても、回遊する魚や美しいサンゴなどを目にすることができます。小さなお子さんでも海中での滞在が楽しめるので、人気が出そうですね。

 海の中にある施設や基地を運営するには、電力が不可欠ですが、潮流発電がその役割を担うことになるのでしょう。海中で発電した電気を陸上に運ぶのは大変ですが、海中で使うならロスも少なく、しかも環境にやさしいクリーンなエネルギーです。動く洋上発電所を組み合わせれば、かなりの出力を期待できます。海から世界を変えていく新しい試みの大きなサポート役となるでしょう。
(日本経済新聞2017年6月26日付)

【「未来面」からの課題】
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