ジェトロの都築佑樹さん「1つのことやり遂げる」
学生時代の過ごし方2017(4)
都築佑樹さんは2016年、貿易・投資の促進や海外の経済動向調査などを担う日本貿易振興機構(ジェトロ)に入構しました。一年目から日本のサービス産業の海外進出支援の最前線で仕事をしています。都築さんが、自らの学生時代を振り返るとともに、これから社会に出ようとする後輩にアドバイスします。
インドネシアで商談会
――志望理由と現在の仕事内容について教えてください。
「サービス産業課で日本のサービス業の海外進出を支援しています。私の担当は外食とファッション企業です。ジェトロを志望した理由は、経済活動の支援と公共性の両立を、政策立案だけでなく現場に近い場所でも追求できるからです。そうした意識を持って海外での商談会の企画などを行っています」
「今年1月にはインドネシアで日本のアパレル企業と現地の企業との商談会を実施しました。同国では日本のファッションへの興味が強いのですが、外資企業の進出には法律面などでハードルが高いのが実情です。進出支援としてとてもやりがいのある仕事でした。参加企業の募集から商談会の設定まですべて手がけました。日本企業は全国から21社、インドネシア企業は100社以上が参加しました。商談会の結果、ある女性服メーカーのブランドが現地のセレクトショップに扱われることになり、そのブランドが現地の店頭に並んだ様子を見たときにはとてもうれしくなりました」
――商談会で苦労したことは。
「インドネシア企業の仕事の進め方に戸惑いました。約束通りの時間に来なかったり、こちらがお願いしたことをやってくれなかったりしたことがありました。アジアでのビジネスの難しさを痛感しました」
「しかし、しばらくすると、インドネシアの企業には実はきちんとした指示系統があることがわかりました。私が直接現場の人に指示しても動かないのですが、その人の上司を経由してお願いするときちんと動いてくれるのです。さらに私がその上司と対等に仕事をしている姿をみせると、今度は直接私がお願いをしてもきちんと動いてくれる。現地に溶け込むことで現地での仕事のやり方を知ることが大切だと学びました」
マレーシア語と空手に熱中
――学生時代はどう過ごしましたか
「マレーシア語の勉強に打ち込みました。マレーシア語を勉強しようと決めたきっかけは、中学生の時にマレーシア・シンガポールに愛知県豊田市の派遣プログラムで行ったことです。そこでは違う民族の人たちが仲良く暮らしていることに驚きました。見学した学校では、スカーフを巻いた女子、インド系、中国系ないろいろな民族の人が同じ教実で勉強していることにびっくりするとともに、こうした多様性を受けいれる姿に感動しました」
「大学生のときにはマレーシアに留学をし、語学に磨きをかけるともに、現地の文化への理解を深めました。留学中の授業では『宗教と文化』の授業が印象に残っています。イスラム教の教えと土着の文化をそれぞれどう解釈をするかということを考える授業でとても示唆に富む内容でした。最近はイスラム教全体をテロと短絡的に結びつける傾向があり、大変残念に思います」
――語学のほかに熱中したことはありますか?
「部活動で空手をしていました。空手は小さいころから続けており、早い段階から指導する役割を担いました。女子が多い大学だったので空手部にも女子が多くいました。しかも、初心者がほとんどでした。こうした環境に最初は少し慣れませんでした。それまでは、男性や経験者が多い環境で、練習時も掛け声一つで皆の意識がまとまりました。しかし、女性部員には一人ずつ丁寧に説明することを心がけました。『あなたにはいまこの練習が必要だから、きょうはこれをやろう』などといってモチベーションを上げてもらう工夫をしました。空手部では団体選の大会で上位の成績を残すことができ、いい思い出になっています」
「空手部で経験した、レベルの違う個人にあわせて適切にアドバイスする姿勢は、実はインドネシアの商談会でも役立ちました。インドネシアに進出したいという意欲は同じでも、企業の規模、海外ビジネスに対する理解度などが違います。日本企業の1社1社に向き合ったことが商談会の成功につながったと自負しています」
――これから社会にでる学生にアドバイスをお願いします。
「大学時代に何か一つやり遂げたものがあれば、大きな自信になります。私の場合は語学でした。この分野では負けないという自信は就職活動だけでなく、社会人になってからも大きな力となります」
「もっとやっておけばよかったと思うのは、相手に自分の言いたいことを論理的に伝える文章力を身につけることです。社会人になるとレポートやメールなどでこの能力が重要になります。しかし、これはすぐに身につけることはできません。時間に余裕がある大学生のときにこそ身につけるものだと思いました。勉強するのはもちろんですが、普段メールの文章を書くときにもわかりやすさを意識して書けば少しずつよくなるので、ぜひ実践してみてほしいと思います」
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