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残業40時間ありえない
就活生100人調査

残業40時間ありえない就活生100人調査

 残業が月40時間なんてありえない――。2018年春卒業予定の大学生の採用選考開始をうけ、日本経済新聞社は「就活学生100人アンケート」を行った。浮かび上がってきたのは、長時間残業への強い拒否感だ。

 「1日あたり1~2時間が許容範囲かな」。リクルートスーツ姿が目立ち始めた5月中旬、東京・大手町で記者の質問に答えてくれた就職活動中の男子大学生は語った。女子学生も「1日に2時間を超えるようだと、ちょっときついですね」と話してくれた。

 アンケートでは「月にどれくらいまで残業しても構いませんか」との質問を設けた。最も多かったのが「20~40時間(1日あたり1~2時間)」の43%だった。「20時間未満」と「残業はしたくない」をあわせると60%に達した。就活学生の10人に6人は月40時間を超える残業はしたくないと考えていることになる。

転勤にも拒否感

 15年12月に電通の新入社員が過労で自殺したのを受け、長時間労働を見直す動きが広がった。安倍晋三首相が3月に経団連の榊原定征会長と連合の神津里季生会長に要請する形で決まった残業時間の上限規制では、労使協定を結べば「月平均60時間(年720時間)」までは認められることになった。首相の指示で繁忙期は「月100時間未満」となり、19年度の運用開始を目指している。

 だが、就活学生にとって月60時間の残業はかなり厳しい水準のようだ。ましてや繁忙期の100時間は想定外だ。アンケートで「80時間を超える残業をしても構わない」と答えた就活学生は6%しかいなかった。就職情報サービス大手のマイナビの栗田卓也・HRリサーチ部長は「残業時間は短い方が良いと考える学生が多い」と分析しており、就活学生のブラック企業への警戒感は強い。

 大企業で働くには付き物と言える転勤への拒否感も強い。勤務地について聞いたところ「同じ場所で勤務したい」が52%だった。アンケートに応じた女子学生は「結婚や出産を考えると転勤したくない」と話している。「海外転勤したい」は11%しかおらず、将来、人員配置に苦労する可能性が高い。

 若年人口の減少を背景に新卒採用市場が学生優位になっていることもあり、会社説明会などで企業の人事担当者は自社の働き方改革の施策を積極的にアピールしているようだ。アンケートで「働き方改革という言葉を知っていますか」と聞いたところ「知らない」と答えた就活学生は9%しかいなかった。

 ただ、就活学生が考える働き方改革の中身は対症療法的なものにとどまっている印象がある。

 アンケートに応じてくれた男子学生は「会社が強制力のあるルールを決めてほしい」と述べ、女子学生も「まずは制度を整えることが重要だと思う」と答えた。

強制消灯求める

 アンケートでは働き方改革について、企業に実行してほしい内容を複数回答で聞いた。最も多かったのが「決めた時間以降の残業禁止、強制消灯」の51%だった。「ノー残業デーの設定」(46%)と「フレックスタイム制度の導入」(41%)が続き、ルールの設定によって働き方改革が進むと考えているようだ。

 半面、正社員として働いたことがないせいか、働き方そのものへの言及は少なかった。「無駄な会議や資料づくりの見直し」は32%「過剰サービスの見直し」は22%「IT(情報技術)による業務効率化」は21%にとどまった。

 中高年のビジネスパーソンから「ぬるい」「あまい」といった声が聞こえてきそうだが、リクルートキャリア就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「学生は仕事のやりがいや企業の成長性などをまじめに考えて就活している」と指摘する。

 その表れが企業を選ぶときの基準(複数回答)だ。「残業が少なく休日も多い」が31%で「給与水準が高い」の28%を上回ったのはご愛嬌(あいきょう)だが、最も多かったのは「自分が希望する仕事ができる」の49%だった。「成長性がある」(38%)や「社会に貢献できる」(33%)も上位に入った。

 副業を認める企業が出始めている現状を踏まえて就職後に副業したいかどうかも聞いた。18%が「副業したい」と回答、NPO(非営利組織)や非政府組織(NGO)での副業を希望する男子学生は「異分野での経験を本業に生かしたい」と説明していた。

「内定すでに獲得」3割

 経団連に加盟する大企業の採用選考は6月1日からだが、非加盟の中小・ベンチャー企業はすでに内定を出しており、大企業も水面下で選考を進めている。アンケートでもすでに30%の学生が内定または内々定を得ていることがわかった。「希望する企業から内定を獲得できる」と答えた学生は82%に達した。

 「先輩たちも次々と内定を取れたし、僕たちの代も大丈夫でしょう」。アンケートに答えてくれた男子学生は今の心情をこう話した。

 就活中の学生が入学した3年前、すでに新卒採用市場は学生優位になっていた。リクルートワークス研究所によると、大卒の求人倍率は学生優位の目安となる1.6倍を4年連続で上回っている。リーマン・ショックの余波で内定取り消しが社会問題になったのは08年。「氷河期」の記憶はかなり薄れている。

 内定や内々定を得た学生に何社からもらっているのかを聞いたところ、44%が複数の企業から得ていた。「早い者勝ちの感覚で内定を出すベンチャー企業は増えている」。採用コンサルタントの谷出正直氏は解説する。

 大企業も早めに動いている。アンケートに応じてくれた別の男子学生は「経団連に加盟している精密機器メーカーから内々定をもらった」と話している。法政大学キャリアセンターの内田貴之課長は「リーマン・ショックの前より採用活動は活発だ」と語る。

給与は成果主義型を志向

 エントリーシートをどの業種の企業に出しているのかも聞いた。最も多かったのが「不動産・住宅」の25%だった。20年の東京五輪・パラリンピック開催を控え、オフィス街では再開発が進んでいる。洗練された街並みが現れていることで、不動産への関心が高まっている可能性がある。

 「定年まで面倒をみてもらえるなら年功序列でも構わないと思うが(東芝やシャープなどが置かれている状況をみると)最初から成果主義型の方がよい」。給与体系について男子学生に聞いたところ、こんな答えが返ってきた。全体でも「成果主義型の給与体系」を好む人が44%。「年功序列型」の29%を上回った。

 別の男子学生は「仕事ができない人が高い給料をもらっていることは納得できない」と述べた。長時間労働への嫌悪感とあわせて考えると、短時間で効率的に成果をあげていく働き方を志向していると言えそうだ。

 学生に就職活動を一言で表現してもらった。「楽勝」や「順風満帆」といった採用市場の現状を示す言葉が目立った。一方「もっと早く始めておけば良かった」といったように後悔の思いをにじませる回答もあった。「学生と企業のだましあい」「正直者は損をする」など、今の採用のあり方に否定な言葉もあった。

(佐藤史佳、桜井豪)

▼調査の概要
2018年春の入社を目指して東京都内で就職活動をしている大学生と大学院生を対象に、日本経済新聞の記者が直接会って聞き取り調査した。調査期間は5月15~23日。141人から回答を得た。性別の内訳は男性80人、女性61人。

[日経産業新聞6月1日付 、日経電子版から転載]

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