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食の訪問記(12) だし道楽広島では当たり前!? 
自動販売機で売られるダシ

平井幸奈 authored by 平井幸奈株式会社フォルスタイル代表取締役CEO
食の訪問記(12) だし道楽 広島では当たり前!? 自動販売機で売られるダシ

 ブリュレフレンチトースト、フォル・グラノーラ、ドラフトコーヒー......。美味しいを生み出す食のプロデューサー、株式会社フォルスタイル代表取締役の平井幸奈です。本企画は私が日頃から注目している日本を代表する食のブランドを訪問し、体当たりでインタビューする企画です。愛される日本の食の秘訣、守り方・育て方、新しい食文化の作り方、そして新たなる挑戦と描いている未来についてじっくりとお話を聞いていきます。

 6カ所目の訪問先は、だし道楽です。自動販売機でだしを販売し、全国で注目を集めているだし道楽。広島県江田島の美しい海に面した場所で製造されています。そのユニークな販売方法とインパクトのある見た目、さらに本格的な味わいが今話題を呼んでいます。

インタビューに応じてくださった二反田社長
会社概要 有限会社二反田醤油 事業内容:飲食店経営・醤油の製造販売
設立:1991年 従業員数:26人 売上高:3億2000万円

訪問のきっかけ

 私の地元広島のだし道楽。小さい頃から祖母も母親も万能調味料として愛用していました。自動販売機でだしが売られているのは地元では馴染みのある光景で、わざわざだし道楽を買うために、遠回りをすることもあるほどでした。上京してからも万能調味料として広島から送ってもらっていましたが、先日東京でもだし道楽の自動販売機を見かけて驚きました。自動販売機×だしという新しい展開について、二反田博文社長に詳しくお話を伺います。

平井 だしを自動販売機で売るという斬新な手法でシェアを広げられているだし道楽さん。最近では東京でもだし道楽の自動販売機を見かけて驚きました。

二反田 そうですね。中国地方を中心に、関西圏、関東圏にも広げて現状、全国で40台の自動販売機を展開しています。

平井 そもそも、だし道楽の販売に至った経緯を教えてください。

二反田 戦前より、父の兄弟がここ江田島で醤油屋をしておりました。全国的に醤油の消費量が減少する中で、醤油だけでは戦っていけないと。そこで醤油の加工食品に目をつけたんです。

3年間試行錯誤をして商品化

平井 醤油の加工食品の中でも、だしに目をつけられたきっかけは何だったのでしょうか。

二反田 当時は、醤油を使ったポン酢や、焼肉のたれなど色々なアイデアを考えていました。しかし最終的に、料理の基礎となるだしに着目したんです。これからだしのシェアは伸びるのではないかと考えました。

平井 今ではだしの専門店もいくつかありますし、だしのシェアはここ10年で急激に伸びましたよね。

二反田 それから3年間試行錯誤をして2003年、今の「だし道楽」の商品化に至りました。

平井 3年もかけられたのですね。

二反田 だしの型にはまらない、見た目と味のバランスを考えた商品を生み出すのには時間がかかりました。

平井 そうして生み出された、だし道楽の特徴を教えてください。

だしをとるあご

あごが入ったペットボトル

ペットボトルの中に昆布や焼きあご

二反田 だし道楽は、醤油・酒・みりんを合わせることなく、だし道楽だけで簡単便利に本格的なお出汁を作ることができる万能調味料です。ペットボトルの中に昆布や焼きあごの素材を入れることで、素材そのものの旨みをしっかりと味わうことができます。

平井 まず見た目のインパクトが強いですよね。そして本格的な風味や味わいとのギャップに魅了されます。

二反田 ありがとうございます。地元の方に喜ばれる薄口醤油ベースの関西風で、簡単・便利・美味しい調味料を開発しました。

平井 目の前は美しい海、この場所で始められたきっかけを教えてください。

二反田 私は江田島で生まれ育ちましたので、江田島の入り口で海にも面しているこの場所を選びました。

平井 江田島に入ってきて、まずだし道楽さんの看板が目に入ります。こうして地元にも愛される商品ができあがっていったのですね。

だし汁をつめる

6人のスタッフが1日に2000~2400本を製造

自動販売機で売る理由

平井 初めから自動販売機での展開を考えられていたのですか。

二反田 いえ。初めはデパートなどでの試食販売などもいました。しかし、なかなか浸透せず、苦戦をしたのです。醤油やだしが大量に並ぶスーパーやデパートに、商品を並べるだけでは差別化を図ることが難しいと。

平井 醤油やだしは見た目だけで美味しさやこだわりを伝えることが難しそうですよね。近年はパッケージ勝負で大手が牽引しているという印象があります。

二反田 そうなのです。そこで、まずは味を知っていただきたいと考え、だし道楽のうどん屋を作りました。

うどん屋だし道楽

平井 うどんであればダイレクトにだしの味が分かりますね。

二反田 そのうどん屋の営業時間は10時半から14時半なのですが、営業時間外にもだしを購入できるようにしてほしいとの声も多くいただくようになりました。そこで24時間販売可能な自動販売機での展開を思いついたのです。

平井 「自動販売機でだしを販売」、これだけでもキャッチーですし、味も美味しいとなるとファンも増えますよね。私の家族も大ファンで、母親がだし道楽を買うために、少し遠回りをして自動販売機に寄って行くなんてこともあります。自動販売機を設置する場所はどのように決められたのですか。

自販機は駐車場に

二反田 購入いただくにあたって、特にこの辺りですと車を停めて購入いただく必要があります。そこで初めは、車が停めやすい駐車場付近に設置することを狙っていきました。

平井 そう言われると、だし道楽の自動販売機は駐車場に多く設置されているイメージがありますね。

二反田 近年はご縁があり駐車場の運営会社様にご協力いただき、販路拡大をしています。

平井 そこも目の付け所にセンスを感じます。一見、自販機で全国展開することはとてもハードルが高いのではと考えたのですが、駐車場の小さな空きスペースを使われて、専門会社と業務提携される中でコストカットが実現できているのですね。今では引き合いも多いかと思いますが、自販機以外、百貨店などには進出されないのですか。

二反田 進出しません。今後も自動販売機での販売に力を入れていきます。需給バランスを考えながら、自動販売機での販路拡大をしていきたいと考えております。

トビウオを手作業でボトルに

平井 製造過程を見学させてください。

二反田 こちらの工場で平均的に6人のスタッフが1日に2000~2400本のだしを製造しています。

平井 これが「あご」の由来であるトビウオですか。

二反田 そうです。試行錯誤をする中で、味も見た目も大きさもぴったりな、長崎県産のこのトビウオにたどり着きました。

平井 そのトビウオを一つひとつ手作業でボトルに入れられているのですね。

二反田社長と

二反田 そうなんです。手作業で入れるので生産量は限られていますが、素材の状態も見ながら丁寧にボトリングしております。

平井 だし道楽は、どのように食べるのがオススメですか。

二反田 お醤油代わりとして豆腐、卵かけご飯、釜玉うどんに、希釈をして煮物、おでん、うどんに。甘めのだしなので親子丼や茶碗蒸し、厚焼き卵などの卵料理にもよく合います。

平井 まさに何にでも合う万能調味料ですよね! 私の実家の卵焼きにもだし道楽が入っていました。

二反田 「だし道楽かけたら何にでも合うんよ!」と言っていただくのがとても嬉しくて、twitterやネットの反響などもみて、やりがいを感じております。全国的な認知度はまだまだなので、我々にしかできない展開で、地道に認知度を上げていき、一人でも多くのお客様に喜んでいただきたいです。