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険しい道、挑む覚悟問う
東電の新卒採用を聞く

険しい道、挑む覚悟問う 東電の新卒採用を聞く

 福島第1原子力発電所の2011年の事故後、採用活動を2年間凍結していた東京電力ホールディングス。賠償や廃炉という難問だけでなく、電力の小売市場が全面自由化されるなど、会社を取りまく環境はこの数年に大きく変わっている。険しい道を行く東電にとって、事業継続に不可欠な新卒人材とは――。人財・組織開発センター採用グループの笹川竜太郎氏に話を聞いた。

グループ4社で一括採用

 ――2017年春の入社数と、今年の採用予定数を教えてください。

 「2017年の入社数は281人で、今年も280人程度を予定しています。東京電力ホールディングスと傘下の東京電力フュエル&パワー、東京電力パワーグリッド、東京電力エナジーパートナーの4社の一括採用で、入社時に分かれます。280人のうち新卒が200人から210人ほど、残りが中途採用といったイメージです。以前は中途入社は毎年10人ほどでしたが、増えています」

 ――2018年の採用スケジュールを教えてください。

東京電力ホールディングスの笹川竜太郎氏

 「3月1日から大学での説明会や就活サイトなどのイベントに参加し、3月中旬から4月にかけて単独の説明会を実施しました。エントリーは4月10日に1次募集、5月1日に2次募集と2回に分けています。適性テストを通過した人は、6月1日からの面接に案内します。それ以外にも、大学によっては9月卒業のケースがあったり、留学から戻ってきたりする人もいるので、間口を広くして採用を続ける予定です。卒業後3年以内かつ、就業経験がなければ新卒としてエントリーできます」

 「面接は個人面接だけです。人によって違いますが、2回から3回程度です。社員と学生が1対1もしくは2対1で、1人だいたい1時間を切る程度ですね」

経営人材求め「事業戦略セミナー」

 ――会社説明会ではどんなことを話していますか。

 「特に技術職は、実際の現場を見てもらわないとわかりません。そこで『設備見学会』を実施しています。発電所に行ったり、電気設備の様子を見てもらったり。実は、廃炉作業に取り組む福島第1原発に興味を持つ人が多く、応募倍率が高いですね。事務職の志望学生は社員と話したい、というニーズが多いので、社員と話せる機会を増やしています」

 ――今年から新たに取り組んでいることはありますか。

 「今、当社は経営人材を求めています。今後、電力需要は伸びず、エネルギー環境が変わるなかで改革する人材が必要です。そこで通常の会社説明会に加えて新たに今年から『事業戦略セミナー』を始めました。6人1班ほどのチームにわかれ、社員の説明を受けながら実際に事業を考えてもらい、発表してもらう半日ほどのセミナーです」

 「たとえば、『燃料・火力ビジネスを担うフュエル&パワーが海外戦略を検討しているが、あなたならどう展開しますか』というお題を出します。『アジアの成長力は大きいが、治安の問題があるな』とか、『燃料は石炭か、石油か』といったように考えてもらいます。事業の面白さを知ってもらう取り組みとして、昨年試験的にやってみたら非常に好評だったので、今年の採用から回数を増やしました」

福島原発で「廃炉のインターン」

 ――インターンシップは実施していますか。

 「夏と冬に実施します。コースによって異なりますが、ほぼ5日間の就業体験です。今年から『廃炉のインターン』を始めました。冬のみの8日間のインターンです。福島第1原子力発電所に出かけてもらい、廃炉について説明します。そのうえで、関連する業務体験と社員との意見交換を行います」

 「広く募集しているわけではなく、主に原子力を専攻する学生が対象で10人ほどです。来年の予定は決まっていませんが、同じようなスケジュールで動く予定です」

 ――リクルーター活動は実施していますか。

 「実施しています。学校で説明会をする際に、OBやOGを連れて行って学生に会ってもらいます。また、特に理系の学部では研究室を訪問させます。そこで学生の質問を受けたり、今のキャリアを話したりしながら、採用活動をPRしてもらいます」

採用2年凍結、修復に苦労

 ――福島第1原発の事故で採用活動はどう変わりましたか。

 「事故の後、12年と13年の2年間採用を凍結しました。採用活動がなければ、学生も学校も当社を見てくれなくなります。特に学校推薦が多い技術職では、OBがいない状況で新たに関係を構築するのは非常に大変でした。学校側から『大丈夫なのか』という声もありました」

 ――入社志望の学生の変化を感じますか。

 「当社を志望するとき、福島の問題を避けては通れません。採用パンフレットでは、震災後に入社した社員に働きがいやモチベーションを語ってもらいました。学生は当然、事故を意識しています。事故をきっかけに入社を志望した、という人もいました。説明会やOB訪問などで働いている社員の意識に触れ、志望する人も多いです。志の高い学生が非常に多いと感じます。震災の前に比べ、いわゆる人気が少し落ちているのは確かだと思います。採用活動で社員に会い、理解した上で入社してほしいです」

 「今の学生からは、海外志向の強さと、チャレンジ精神を感じますね。留学経験のある学生も多いし、ある理系学生は海外の大学に留学して、原子力について学んできたから入社して認められたい、とアピールしていました。以前は、技術職の留学生は本当に少なかったので、変化を感じます」

チャレンジ精神を重視

 ――今、東京電力として求める人材像を教えてください。

 「4つの軸があります。『みずから広い視野をもって課題を見つけられる人』『チャレンジ精神旺盛な人』『いろんな人を巻き込めるコミュニケーション能力のある人』『最後までやり遂げられる人』の4つです。個人的には、非常に変化の激しい環境下なので、チャレンジ精神が大切だ、ということを強く伝えたい。特にパワーグリッド部門では、デジタルや(あらゆるモノがネットにつながる)IoTを使いこなせる人材も必要だと感じます。次世代電力計のスマートメーターの導入で電力使用量のビッグデータが扱えるようになりました。そういった時代のスピードにのって事業を考える人が必要です」

 ――面接ではどんなことを聞くのですか。

 「面接官によって聞く内容は異なると思いますが、学生生活でやっていたことや志望動機を尋ねます。技術系であれば研究内容も聞きます。また、あなたが社長になったらどういうプロジェクトをやりたいか、外から見て東電をどう変えたいか、なども質問しますね。当社をしっかり見ているか、問題を見つけて課題をとらえているかといった点がポイントだと思います」
(松本千恵)[日経電子版2017年5月24日付]

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