千葉銀行の飯塚陸斗さん「私を変えたチューターのバイト」
学生時代の過ごし方2017(5)
受験生の頃に塾や予備校のチューターにお世話になったという方は多いと思います。千葉銀行の飯塚陸斗さん(27)が大学時代に頑張ったことは、予備校のチューターのアルバイトでした。「自分の弱みを克服しよう」と始めた丸4年間のバイト体験を語ってくれました。
――どんなバイトだったのですか。
「現役合格を目指す高校生の進学アドバイザーです。毎年20~30人受け持ちました。講師と違って勉強は教えませんが、ちょっとした質問に即答できなければいけません。志望校や学部選びの参考にと、大学別のリアルな情報を教えるのも大事な役目でした。学年はバラバラで、当然ながら相手が高1か高3かによって話す中味を変えました。私は一浪して大学に入ったのですが、自分の体験談が少しは役に立ったのではないでしょうか。ずばり、現役受験で失敗しないための勉強法です」
「本人や親との進路面談も任されました。面談の日は土日なので、平日と合わせて出番が週の半分以上を占めるのは当たり前。受験シーズンの2月~3月は毎日、予備校に出ずっぱりでした。大学の春休みを利用して旅行や留学なんて、とんでもない話です」
話下手、高校まではダサかった
――なぜ、チューターのバイトを選んだのですか。
「バイト先は、浪人時代に通いつめた予備校です。教務の女性職員の存在が大きかったですね。ちょっと年の離れた姉貴のような感じの人です。浪人生の頃は毎日、窓口に顔を出しては、勉強以外の話も聞いてもらいました。何気ない言葉に支えられたのは一度や二度ではありません。晴れて大学に合格し、いっそうありがたみが湧きました。そんな姉貴のような人から、チューターをやってみないか、と思いがけない声を掛けられたのです」
「小さい頃から人前でしゃべるのが苦手で、あがり症でした。高校時代は自分で自分をダサいと思っていたぐらいです。大学のうちに克服しないと社会人になってから困るのは目に見えていたので、うってつけのバイトと考えました」
――普通のバイト感覚とは違ったようですね。
「急にしゃべりが上手くなるわけがありません。チューターの採用研修の模擬面談でOKをもらえず、何度も落とされました。やっぱり向いていないのかなあ......と弱気になったのですが、またまた姉貴に励まされました。ふつうにやればいいんだよ。その一言で気が楽になりました」
「初めての出番の日は、教室の生徒たちの前で連絡事項を読み上げる雑用をこなすだけでいっぱい、いっぱいでした。その後、現場経験を積み重ねてコミュニケーションのスキルや敬語の使い方を覚え、人前で話せる度胸も付いたわけですが、チューターになったばかりの頃は親御さんも不安だったのではないでしょうか」
――いちばんの思い出は何ですか。
「いろんな生徒がいました。こちらから話しかけても全く無視されたり、家に内緒で授業をさぼったり、とにかく生意気だったり......。自分だけでは手に負えず、教務の人たちに相談したことは何度もあります。そんな生徒たちが大学に合格した暁には、担当してくれてありがとうございました、と挨拶に来てくれました。頑張った甲斐がありまましたね。全員志望校に入れるわけがなく、浪人したとの報告を聞くのは辛かったです。結局、大学4年の3月に辞めるまでの丸々4年、チューターのバイトを続けました」
「受け持った生徒の何人かとは今でも付き合いがあり、向こうから連絡してくることもあります。就活で金融機関を志望しているといった話を聞くと、昔のチューターに戻って面談をやりたくなりますね。当時のチューター仲間とも飲みにいったり、遊んだりしています。居酒屋のバイト代の方が高く、時給の割に超ハードでしたが、あの4年間がなかったら......とつくづく思いますね」
弱み克服、仕事で実感の日々
――銀行に就職してからチューターの経験は生きていますか。
「まさに実感する日々です。最初に配属された支店では個人向けの融資を担当しました。支店の窓口でお客と面談し、相手の希望や条件にかなうプランを提案するわけですが、昔のままの私だったら、頭の中でああだ、こうだと考えられる余裕はなかったでしょう」
「現在の幕張支店では、地元の中小企業を中心に約100件の得意先を受け持っています。お客のニーズや課題を引き出すためには、聞き上手に徹することが肝心です。そして、こちらからアピールするわけですが、言いたいことがあるときは臆せずに言わなければいけません。根本は親との進路面談と一緒です。千葉のため、地域のために働くことが最良の選択と考えて千葉銀行を選びました。中小の社長と話ができる仕事に就きたかったのも大きな理由です。取引先と一緒に成長していきたいと思っています」
――社会人の先輩として、悔いのない学生生活を過ごすためのアドバイスをお聞かせください。
「やはり経験がいちばんです。いろんなことに挑戦してほしいですね。そして、これなら頑張れそうだという自分の軸を1本作り、継続してください。大学時代は何でもできる4年間です。今からでも遅くありません。時間はあります」
(聞き手は山本啓一)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。