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地方動物園、値上げ相次ぐ
広がる「受益者負担」

地方動物園、値上げ相次ぐ広がる「受益者負担」

 全国各地の動物園では、お目当ての動物を見に来た子どもの歓声が上がる。家族連れでにぎわう動物園はいつの時代も共通だが、最近になって一つの異変が起きている。地方の動物園を中心に数十年ぶりの値上げが相次いでいるのだ。少子化による入園者の減少や老朽施設の更新投資など、動物園にのしかかる負担は重い。緊縮財政を迫られる地方自治体の支援余力も限られるなか、動物園の経営には「受益者負担の原則」がじわり広がっている。

20年ぶり値上げの徳山

 10月からの入園料値上げを決めた山口県周南市の徳山動物園。大人料金は410円から600円、小中高生は100円から300円となる。値上げはほぼ20年ぶりだ。

動物園では餌代の上昇が経営を圧迫している(東京都日野市の多摩動物公園)

 2016年に入園者が動物と触れ合える体験施設「るんちゃ♪るんちゃ」がオープンしたほか、今後も野鳥の観察施設や新しいゾウ舎など更新計画が相次ぐ。三浦英樹園長は「開園から57年を迎え、老朽化した施設の建て替えが不可欠となっている」と背景を説明する。

 地方では少子化の影響で入園者が減少傾向をたどるなか、大人も楽しめる集客力を持つ動物園への転換が重要なテーマだ。モデルケースはペンギンの散歩で全国から観光客を集めた旭山動物園(北海道旭川市)。4月から大人料金を460円から500円に引き上げた、とべ動物園(愛媛県砥部町)は「ハード・ソフト両面で魅力ある動物園をつくるため、投資の計画を練っていく」と話す。

 動物園にとってもう1つの負担は、動物のえさ代などの経費だ。16年に約30年ぶりの値上げに踏み切った仙台市のセルコホーム ズーパラダイス八木山(八木山動物公園)では、冬場の暖房などの燃料費やえさ代が膨らんでいるという。カバなど多くの動物はきれいな水を必要とするが、大量の水の消費を減らすことはできず来園者に負担を求める結果となった。

 ほとんどの動物園は公立で、入園料も400~600円と割安に抑えられてきた。多くの動物園では経費に占める入園料など自主財源の比率は30~50%にとどまるとされ、残りは自治体の一般財源に頼っているのが実情だ。

自主財源の倍増目指す福岡

 その自治体も財政状況は厳しく、動物園に割く支出は削減せざるを得なくなっている。福岡市も高齢者向けの社会福祉の支出が膨らむなか、動物園への財政支出を毎年減額してきた。福岡市動物園では業者に頼んでいたえさの分類を職員の仕事とするなどコスト削減を進めているが、維持管理の削減だけでは限界があるという。

 同園では16年6月に大人料金を400円から600円に引き上げた。90億円をかけた施設の更新投資も計画し、入園者を現在の年約80万人から100万人に引き上げる目標だ。結果として経費に占める自主財源も現在の25%から50%まで上昇するという。

 動物園は子どもへの教育的な役割があり、民間の効率経営にはそぐわない面がある。利益を受ける利用者が費用を負担すべきだという「受益者負担の原則」は、公立の動物園にも波及しつつある。税収のパイが増えないなか、地方の動物園では「今後も財政支援は減る」との危機感が強い。子どもの笑顔を絶やさないためにも、戦略的な動物園の経営が求められる時代が来ているのかもしれない。
(商品部 金子夏樹)[日経電子版2017年5月4日付]

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