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早稲田大ワークショップ2017(1)留学生も早大生
~WASEDAは本当にグローバル?~

authored by 早大ワークショップ受講生
早稲田大ワークショップ2017(1) 留学生も早大生~WASEDAは本当にグローバル?~
 この記事は、早稲田大学の2017年度学部横断型授業「プロフェッショナルズ・ワークショップ」の日本経済新聞社実施講座を受講した学生による作品です。昨年、一昨年に引き続き、今年も4月から6月まで講座を実施しました。「日経カレッジカフェのコンテンツを作成しよう」という課題に対して、33人の学生がメディアの仕組みや取材、記事の書き方について学び、6グループに分かれて実際に独自記事を作成しました。今回、紹介する記事は6月8日に行われた最終発表会で最優秀賞を獲得したグループのものです。他のグループの作品も順次、掲載します。なお、文章表現の一部などはカレッジカフェ編集部で修正しています。
【早稲田大ワークショップ2017】
優秀賞「つぶやくことが仕事です!Twitterの「中の人」は何をしている!?」
「あなたの日常はもっと輝く 東大襖クラブに学ぶ大学生の『生き方』」
「就活だけでは不十分?!元早大講師に聞くキャリア形成」
「お前の人生を取り戻せ」~内定を蹴り世界一周の旅に出た僕が君たちに言いたいこと~
人生の先輩から学ぶ~今からみんなが出来る「自分の持ち方」~

A班「バナナ」 後列左から佐久間啓輔 松木田健斗 大澤巴菜乃 陳思潔 井上はるか 坂井日向子

 世間ではグローバル大学と見られている早稲田大学。事実、早稲田大学には今、日本で最も多い5000人以上の留学生が在籍している。さらに大学では2032年までに現在の2倍となる1万人の留学生を受け入れることを数値目標として掲げている。しかし、私たち日本人の早大生は留学生と交流する機会を十分に持てているだろうか。私たちはグローバルになっているのだろうか。日常の学生生活で留学生との交流が少ないと感じた私たちは今回、留学生に焦点をあてて早稲田のグローバル化の実情に迫ってみることにした。

留学生100人調査では半分が「日本人の友人は5人以下」

 私たちはまず5月中旬、早稲田大学で学ぶ留学生100人を対象に、日本人学生との交流についてアンケートをとった。その結果、長期留学も含めた留学生の半数近くが「日本人の友達は5人もいない」という事実が明らかになった。また、9割以上の留学生は「日本人と仲良くしたい」と答えているのにもかかわらず、100人中79人が「日本人よりも外国人の友人の方が多い」と答えている。せっかく日本に留学に来ても、留学生同士で集まってしまうというのが現実のようだ。一方で、留学生は一般学生のサークルに入ったり、日本語を勉強したりと、様々な努力をしていることも分かった。多くの留学生は早稲田大学の学内組織、ICC(異文化交流センター)が主催するイベントに参加し、日本人との交流を図っているという。

日本での生活は楽しいと語るホンさん

 そこで、より詳しい話を聞くために、ICCのイングリッシュランチというイベントに参加していた3名の留学生にインタビューを行った。

 最初の学生はアメリカ出身のエドワード・ホンさん。中国系アメリカ人で英語、中国語、スペイン語、日本語を話せる。「母国に帰りたくない」というほど日本での生活を楽しんでいて、何の不満もないという。アジア系の見た目なので、日本人からは初対面でも日本語で話しかけられることも多い。日本語を勉強したいホンさんにとっては、それが助かっている。日本での生活を楽しむために「日本語が話せるかどうかは大きい」と語る。

「もっと日本語で話しかけて」「どこからが友達なの?」

「日本語で話したい」と言うハンナさん

 「もっと日本語で話しかけてくれればいいのに」。こう嘆くのはアフリカ系アメリカ人のマライヤ・ハンナさん。彼女はホンさんとは対照的に、日本人との接し方に悩んでいる。黒い肌とドレッドヘアをよく物珍しげに見られ、時には怖がられることもあるそうだ。黒人というだけで日本人は必ず英語で話しかけてかけてくるため、英語に自信のない人は逆に離れていくことを疑問に思っている。それが彼女の日本語の勉強の妨げになっているとも感じている。「せっかく日本に来ているのだから、日本語で話して欲しい」と言う。

「リアルでも日本人と繋がりたい」と語るニチカさん=中央

 3人目の留学生はカナダ出身のアガラワル・ニチカさん。彼女に日本人の友人の数を聞くと、逆に「どこからが友達なの?」という質問が返ってきた。彼女はラインやフェイスブックなどのSNS上には日本人の友達は多いが、実際に話す友人は極めて少ないと言う。彼女いわく、日本人学生は留学生に会うと連絡先を交換して一応のつながりは持とうとするが、それ以降に会ったりすることはまずないそうだ。日本人の友達が欲しいというニチカさんはこの現状に困惑していた。

 このように留学生の生の声を聞き、日本人学生と留学生の交流における課題が徐々にわかってきた。そこで、異なる視点からより深く探ってみるためにICCの課長、尾内一美さんを訪ねて、お話を聞いた。

交流センターへ日本人学生も継続して参加を

ICCの課長、尾内一美さん

 ICCはIntercultural Communication Centerの略。早大の留学生と日本人学生の交流促進を目的に、2006年に発足した。毎月、語学交流会をはじめ、トークセッションやフィールドトリップなど幅広い異文化交流イベントを主催している。

 尾内さんは「日本人学生のICCへの参加者にはある傾向がある」と分析する。「入学直後の1年生は活動に積極的に参加するが、サークルや授業、アルバイトが本格的に始まるとICCの活動から徐々に疎遠になっていく。しかし、就職活動を控えた3年生や4年生になると、またやってくる」。1年生のときは異文化交流に意識を向けていても、4年間継続してイベントに参加する人は少ないという。「日本人学生も継続して活動に参加してほしいのだけど」

 一方で、4年生になるまでICCの存在すら知らなかったという日本人学生も少なくない。「日々の生活の中で留学生と接する機会が少ないと思ったり、ICCの広報が十分に伝わっていないと感じたりしたら、その声を大学側に届けてほしい」と尾内さんは呼びかける。「学部によっても異文化理解への積極性は異なる。幸いにも早稲田大学は学生の声を聞いて施策に取り入れる大学である。だから学生のみなさんは声をあげて」

異文化交流が自然にできる環境づくりが必要

早大22号館ラウンジで昼食を楽しむ留学生たち

 尾内さんには今後の異文化交流推進に必要なことも尋ねてみた。「これまではハードウェアや留学生数という面でグローバル化を図ってきたが、今後はソフト面でもグローバル化の充実を図る必要がある。大切なのは学生同士で自然に異文化交流ができるような環境づくり。ICCもその一翼を担っていきたい」。ソフト面でのグローバル化には、留学生の日本での生活支援も必要だと感じているという。そこで、サークルと連携して留学生がサークル活動に参加できるためのイベント開催も始めたそうだ。時代が変われば求められるものも変わってくる。私たちは尾内さんへのインタビューを通して、ICCは学生の声を聞いて常に時代に合わせた進化をしていく組織だと感じた。

 グローバルという言葉が溢れすぎて、本来のグローバルの意味を見失っているのではないか。今回の留学生調査を通して、日本の大学ではグローバル化が進んでいるといわれる早稲田大学でも、意識の面ではまだまだ改善の余地があることがわかった。わたしたちはひとくくりに「留学生」と捉えがちだが、インタビューでも分かる通り、それぞれの留学生でも感じ方や思っていることはまったく違うのだ。大切なのは「留学生」として捉えるのではなく、「個人」として向き合うこと。数が増えることだけが果たしてグローバルと呼べるのだろうか。グローバルという本質を今一度考え直す必要があるのかもしれない。

 私たち一人ひとりが意識を変えるだけで、今いる留学生と日本人学生との見えない壁は打破できるのではないか。意識を少し変えるだけで解決出来る課題はたくさんあるはずだ。

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