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[ career-働き方 ]

ホンネの就活ツッコミ論(15)3年生が参加して得するインターンとは

石渡嶺司 authored by 石渡嶺司大学ジャーナリスト
ホンネの就活ツッコミ論(15) 3年生が参加して得するインターンとは

 「3週間もがっちり拘束されて大変だった」
「え、こっちは5日で済んだよ」
「ビジネスマナーの講習とか工場見学とかあった」
「ビジネス体験ゲームというのをやってグループディスカッションの練習になった」
「面接の練習とか、自己分析もやって志望企業じゃないけど勉強になった」
「全然、ビジネスが重複しない企業の話をまとめて聴けて面白かった」

 一見すると、脈絡ない会話ですが、これ、全部、インターンシップ、通称・インターンの話です。というわけで今回のテーマは「夏のインターンシップ」です。

 インターンは本来、直訳すれば「就業体験」です。実際、大学が各企業と協定を結ぶインターンは就業体験を基本とします。協定型インターンなどとも呼ばれており、学生の方からすればキャリア講義の中で参加する、あるいはインターンが講義となっていて開始前はマナー研修など、終了後は報告書執筆・発表がセットになっている、という方も多いはず。講義以外でも、キャリアセンター経由で申し込むインターンのうち、期間が長いものは基本的に就業体験できるインターンと考えていただいていいでしょう。

就業体験以外のインターン色々

 近年、地方創生が安倍内閣の政策となっていることもあって増えているのが地域連携インターンです。大学が自治体と協定を結び、学生は各自治体に赴き、そこで自治体職員の仕事を体験する、あるいは地域の中小企業に赴くなど、軸としては「地域」となります。こちらも就業体験やプレゼンテーションが中心となり、期間は5日から数週間程度とやや長め。

熊本県立大学キャンパスにて

 ある関西圏の大学では学生が大学所在地から離れた地方自治体のインターンにグループで参加。参加する学生たちはよほど仲がいいのか、それともその自治体に強い関心があるのか聞いてみると、「いや、単にグループで行けば、空いている日にみんなで遊べるな、と思って」。そういえば、1980年代あたりからリゾート地でアルバイトをすれば、空き時間に遊べる、という話がありましたが、なんかそれに似ているような。

 期間が長いところでは、ほかに理工系学生に特化した技術職インターン、IT業界に多い訓練実習型、それから、アルバイトと大差ないアルバイターンなどがあります。

 技術職インターンは、メーカー中心に公募、もしくは特定の大学(あるいは学科または研究室)と連携して実施されます。文系学生向けのインターンと違い、採用に直結とまでは言わなくても強く結びついているのは2000年代前半ごろから現在まで変わりません。

 訓練実習型は、プログラミング実習など学生にひたすらやらせるインターンです。なお、参加するだけで報酬が発生。終了後、優秀な学生には内定パスが授与されます。内定パスとは卒業後3年以内(あるいは、2~5年以内)に、入社したいと思えばいつでも権利を行使できる、というものです。この訓練実習型インターンで一番有名な企業がワークスアプリケーションズです。

 一方、アルバイターンは、ホテルやベンチャー企業、NPO法人などの一部によくあるパターンです。報酬は発生しますが、要するにアルバイト料です。それも、アルバイトとしては相場よりも低め。基本的には雑用が多く、これで就業体験というのであれば、普通のアルバイトをしている方がまだ稼げます。実施する側の理屈としては、アルバイト募集だと学生が集まらないので、インターンと看板を変える、とのこと。それで何か実になる、と考えた学生はいい迷惑です。

短期でもセミナー、説明会から就職支援型まで様々

熊本学園大学図書館2階。気になる新聞記事を展示中

 短期間のもの、それも大半が1日のインターンが公募のものでは現在、主流となっています。通称・ワンデイとも言われています。これは、「長期間だと、受け入れる現場の社員の負担が重過ぎる→学生が参加しても採用につながるわけではない」との理由で長期インターンを敬遠した企業が、落ち着く結論の一つです。

 1日開催だと、受け入れる現場社員の負担もそれほど重いわけではありません。長くても1日拘束されるだけですし。学生も気軽に参加できるとあって、実施企業が増加、現在に至っています。リクルートキャリア・就職みらい研究所の「就職白書2017 インターンシップ編」(以下、就職白書)によると、2017年卒業者でインターンに参加した学生のうち、参加期間は1日が最多で57.7%、次が3日以上1週間以下で35.5%でした。

 なお、この発想、1998年にはすでに実施する大手企業がありました。1997年、文部省、労働省、通商産業省の三省が共同してインターンシップの総合的な推進に取り組むため三省の合意文書「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を発表。これもあって、大手企業を中心にインターン実施を決める企業が相次ぎます。

 旭化成もその1社でした。しかし、「日本の場合は企業のことを知りたいという学生が多いんですね。すると、必ずしも実際に仕事につくという形式でなくてもいい」(「就職ジャーナル」1999年7月号掲載の人事課長氏のコメント)との理由から、「旭化成ウィークエンドビジネスフォーラム」を開催。その後、同社のプレスリリースには「1日版インターンシップ」(2000年5月8日付)とありますので、実質的にこれがワンデイの元祖と言えます。

就職支援型で人気上昇企業も

 ビジネスゲーム体験や業界研究のセミナー、工場見学、先輩社員との懇談会、社員同行など内容は企業によって分かれますが、それが就業体験か、と言えば難しいところ。さらに2010年ごろから増えているのが就職支援型です。これは人材会社など就職をビジネスとしている企業でなくても、大学キャリアセンターが実施するような就職ガイダンス・模擬面接などを中心とする、というものです。

 大阪に本社のある技術系商社の日伝が2010年ごろから展開。2015年には日本経済新聞社の就職人気ランキング(関西地区)で1位となる原動力になりました。現在では、関西だけでなく首都圏や地方でも企業の規模に関係なく実施する企業が増えています。この就職支援型、学生は志望業界・企業でなくても就職のノウハウを大学キャリアセンターとは違った点で吸収できるメリットがあります。

熊本学園大学図書館の中。「図書館の森を歩こう」企画の一環で館内にテントを

 では、実施企業は時間と労力の無駄か、と言えばそんなことはありません。実質的には選考を模擬とはいえ1回は実施できるわけで、そこから欲しいと思った学生を早めに囲い込めるメリットがあります。そのため、実施企業からすれば志望企業・業界かどうかに関係なく参加してほしい、とよく話します。

 これは一見すると、善人そうですし、実際に志望企業・業界でない学生に来てほしいのは本音です。本音なんですが、理由は簡単で「学生がたくさん来てくれた方が盛り上がる」という実利的な目的、それから、大したことないと思えた学生はさっと離す方が得、という事情があるからです。

 1社で実施するだけでなく、複数企業がコラボするインターンも増えています。単なるセミナーを、それも1社単独で実施しても効果はそれほど高くありません。経団連がワンデイを事実上解禁し大手企業でも実施企業が相次いだ結果、今年は例年以上に実施企業が増えています。「就職白書」によると、インターン実施企業は2015年度55.5%、2016年度64.9%、2017年度(調査時点での見込み)68.5%と増大の一途をたどっています。そこで、手間がかかっても共同で開催した方がいい、と考える企業が増えています。これは秋以降の模擬就活イベントなども含め、今後も注目したいところです。

インターン不要論へのツッコミ

 インターンについては、以上のように、種類が多くあります。しかも参加意欲などマッチングの問題もあり、これまで参加した学生によって「参加してよかった」「参加しなければよかった」と意見が分かれます。

 私は7、8、9月のどこか、1日か2日くらいでもいいので参加した方がいいと考えます。「就職白書」の調査によると、内定者のインターン参加状況について「採用を目的として実施」「採用目的とはしていないが、結果的に内定者の中にインターンシップ参加者がいた」「内定者の中には、インターンシップ参加者はいなかった」の回答が2015年と2017年とでは大きく変わっています。

熊本学園大学図書館。「図書館の森を歩こう」という企画を実施

 「採用目的」は10.9%→23.2%、「結果として内定」が35.3%→49.1%とそれぞれ増加。「インターン参加者はいなかった」が53.6%から27.5%とほぼ半減しています。これは、早めに動く学生の方が、結果論として就活へのモチベーションが高いこと。ついでに言えば、勉強などへの取り組みも熱心な学生も多いです。要するに企業からすれば採用したい人材となります。

 インターンも含めてモチベーションの高い学生を早めに接触して内定までもっていくにはどうすればいいか。そこで出てきたのが「インターン参加者の懇親会」「インターン参加者限定セミナー」です。理屈はどうあれ、一度インターンに参加した学生に1クッション置いて、そこからインターン参加者限定の選考ルートを設定しておきます。これが大手・準大手・中小などを問わず広がりつつあります。こうした状況の変化を考えれば、インターン不要論はちょっと古い話と考えます。面倒であっても、視野を広げるためにも、インターンは一度参加しておいた方が、得るものはあるでしょう。