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[ career-働き方 ]

「10人会って10人採る」が理想
メルカリの新卒採用

「10人会って10人採る」が理想メルカリの新卒採用

 2018年卒で、25人のエンジニアとアプリの企画担当者を採る――。こう宣言したのは、人気フリーマーケットアプリのメルカリ(東京・港)だ。エンジニアの採用に各社が苦戦するなか、採用を始めて2年目の17年卒では、米カーネギーメロン大で学んだ優秀な人材も入社を決めた。メルカリといえば、日本企業で唯一「ユニコーン」(非上場ながら企業の評価額が10億ドルを超える企業群)に仲間入りした企業だ。新卒エンジニアを採用する秘訣は何か。石黒卓弥・HRグループマネジャーに聞いた。

分母を増やす採用はしない

――18年の採用予定数と、17年の入社数を教えてください。

 「新卒の採用を始めたのは、16年入社からなので今年で3年目です。1年目は、メールアドレスとギットハブのアカウントだけを送ってもらう採用でした。ギットハブとは、ソフトウエアの共有で使うサイトで、このアカウントを見れば、そのエンジニアの実績がわかります。性別も学校名も顔写真も、名前もいりません。16年は6人入社しましたが、採用に向けて会ったのは9~10人でした。いわゆる文系総合職の新卒採用はありません」

 「日本の採用は、とにかく分母を増やしますよね。ですが、その会社が好きか、興味がなければ、意味がない。小泉(文明社長)も常に言いますが、10人会って、10人採用するのが一番美しいと思います」

 「17年の新卒では7人入社しました。そのうち1人は、夏休みを利用してインターンシップにきていた人が『メルカリに興味がある人がいる』と紹介してくれた学生です。彼女は米カーネギーメロン大でコンピューターサイエンスを学び、うちにきてくれました」

18年卒の採用、予算は無制限

メルカリHRグループの石黒卓弥マネジャー

――エンジニアの採用に非常に苦労している会社が多いです。文系総合職の何倍ものコストがかかるとされるなかで、メルカリはなぜうまくいっているのですか。

 「16、17年卒はよかったんです。問題は18年卒です。16年9月、経営方針を決めるための役員合宿のあと、『石黒くん、メルカリは10年、20年続く会社を目指す。より骨太な会社にするため、新卒もしっかりとっていこう』と、25人を採用する方針を伝えられました。いきなりいわれても困りますよね(笑)。ただ、予算は無制限、お金はいくらかけてもいいから新卒をとれと言われたので、まず人事担当を募集したんです。そもそも新卒の採用担当がいなかったんです」

 「その後、全国の大学訪問を始めました。エンジニアの育成に強いとされる、はこだて未来大学、会津大学、岩手県立大学、東京工業大学、名古屋工業大学などと接点を持ったり、エンジニア志望の学生と出会うイベントにいったりしました。そこで会った学生に『エンジニアと一緒に研究室を訪問したい』と声をかけました」

米国に100人学生を送る

――採用活動を知らせるため、18年卒で実施したことはありますか。

 「16年12月に『ボールド・インターンシップ・イン・USA』というインターンを企画しました。100人の学生を米国に送る内容です。会社の名前やサービスは知られていても、新卒を採用しているというイメージは広がらず、課題を感じていました。そこで『米国に学生100人を突っ込もう!』という話になりました」

――狙いはなんですか。

メルカリの本社は東京・六本木にある

 「今は日本で成功してから米国に行く会社ばかりで、(成長途中なのに)本気で米国にいく会社は当社くらいですよね。僕らは本気だから自分で見てきてください、というメッセージを伝えたかった。学生には、僕らの競合になる個人間取引(CtoC)のツールを使い切ってもらうことを課題にしました。宿泊はエアビーアンドビー、移動はウーバーです。金は全部出すから、宿もやり方も自分で決めろ、というやり方です」

 「アウトプットは、現地でメルカリのユーザー調査をした上で、『メルカリがアメリカで戦うためのアイデア』を考えてもらうことです。帰国した人のうち、優秀な20人には5月にプレゼンテーションしてもらいました。一番印象的だったのはハワイで127人に会ってきた学生です。他にも、米スタンフォード大でヒアリングした学生もいましたね。ウーバーを使って車に乗ってみたら、看板が意外に目についたので看板立てます、といったアイデアもありました。100人100通りの提案がありました」

――インターンの応募条件は何だったのですか。

 「『400字であなたの意気込みを書いてください』。これだけです。学年も不問です。ただし、米国に1人で出かけて現地でユーザー調査をするというのは英語ができて、メルカリというプロダクトが好きじゃないとできません。この時点でいいスクリーニングができているのです。国内での調査や海外でもツアーコンダクターがつくとかなら、もっと応募があったでしょうが、それでも1000を超える応募がありました。今は、このインターンに参加した学生たちを面接中です」

「あこがれの人と働ける」も魅力

――口コミや社員の紹介もありますか。

 「あります。IT業界で有名なエンジニアが、何人も当社で働いているんです。彼らのSNS上でのフォロワーはとても多いから、彼らが『積極採用しています!』とつぶやいてくれると、『○○さんと働けるんだ』というエンジニアが応募してくれるので、力になります」

 「優秀なエンジニアをウェブサイトに出すと『スカウトされるかもしれない』と、あえて出さない会社も多いでしょう。しかし、他社に引き抜かれるのは、当社に魅力がないからともいえます。それは会社を磨き続けられない僕らの責任と考えています」

――人事担当者からは「現場が手伝ってくれない」という悩みも多く聞きます。

 「解決策は2つしかありません。1つは経営陣が採用にコミットすることです。当社には『採用会食』というのがあります。新卒でも中途でも、口説きたい人がいたら、山田(進太郎会長)や小泉のスケジュールを見て、あいているところに予定を入れます。ノーといわれることはありません。経営陣は毎週さぼらず、『メルカリは何より人が大事なんだ』ということをいっています。1回や2回じゃ社員には伝わらないんです。2つ目は、社員に会社が好きと思ってもらうこと。実際、僕がエンジニアに『採用募集の告知を書き込んで』なんて頼んだことは一度もありません」
(松本千恵)[日経電子版2017年6月14日付]

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