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大阪大~「お堅い」返上
広報チーム、発信力磨き学生誘う

大阪大~「お堅い」返上 広報チーム、発信力磨き学生誘う

 大阪大学はウェブサイトやポスターなどの広報素材をデザインする専属のクリエーター集団「クリエイティブユニット」を抱える。情報発信の効果を高めて優秀な学生や教職員の獲得につなげる狙いだ。最近は親しみやすさを重視するようにして、旧帝大の「お堅い」イメージからの脱却を試みている。

 阪大の工学部電子情報工学科。2011年度入試の志願倍率は1.9倍と同学部内でも低い水準だった。それが翌12年度は2.5倍になり、17年度は3.2倍と学部内でトップだった。

 挽回に一役買ったとみられるのが受験生向けサイトだ。オレンジを基調にした温かみあるデザインを採用し「『世界の頭脳』は、よく遊ぶ」と軽やかなうたい文句を掲げた。「リケジョ座談会」も掲載。「眼鏡のオタク系男子ばかり」とのイメージを払拭する。

教員が仕掛け役

クリエイティブユニットの面々

 デザインを手掛けたのが広報担当理事直轄のクリエイティブユニット。デザイナーや映像ディレクターなどを抱える教員組織だ。08年に阪大公式ウェブサイトの刷新のため発足。10年には学内の広報デザインを一手に担う組織に変わった。

 トータルディレクターを務める大学院情報科学研究科の伊藤雄一准教授は「国立大では珍しい組織だ」と説明する。定期異動がない教員は広報のノウハウを蓄えやすく、事務組織の縦割りにとらわれない。教員という立場で総長ら執行部にも助言しやすいという。

 同ユニットが広報デザインを担うことで、部署ごとにばらばらだった広報戦略を見直す。「まじめで堅い」という阪大の印象を「イノベーティブ(革新的)」へと変えることも意識する。

 旧帝大のブランドがあっても少子化への危機感は強い。合格の目安とされる偏差値60以上は18年から31年までに2万8000人減るとの試算もあり、特に海外との競争に不安を募らせる。打開するには「東大を狙えるが阪大に行く」と思う学生を増やせるかがカギとなる。

大阪大学(大阪府吹田市)

 大学のレベル向上には優秀な職員の獲得も欠かせない。ここでも同ユニットが果敢に仕掛けている。

 阪大を変える風になる――。阪大が16年春に開設した職員採用サイトのトップ画面に登場する若手職員は黒のスーツに身を包み、風に髪をたなびかせる。資生堂のコマーシャルをモチーフにしたという。

 職員の働きぶりに迫る動画は、ノーベル賞発表日の対応や卒業式の準備に駆け回る姿をTBS系の番組「情熱大陸」風に仕上げた。阪大の広報予算は有力私大より1桁少ない。「お金をかけずに手間をかける。いかにオモロイことを作り出せるかが勝負だ」と伊藤准教授は語る。

「ワニ博士」人気

 学内では公式マスコットキャラクター「ワニ博士」が活躍する。構内で日本初のワニの化石が発掘されて50周年となる14年に大学公式キャラになった。同ユニットが喜怒哀楽のパターンを作って使いやすくした。ぬいぐるみやポスター、シールなど学内の至る所で見かけられ、交流サイト(SNS)では「ワニ博士かわいい」などと評判だ。

伊藤准教授と阪大公式キャラ「ワニ博士」

 阪大には「東大、京大に次ぐ3番手」のイメージがつきまとうが研究力には定評がある。特許出願や論文引用などで測る米トムソン・ロイターの「世界イノベーティブ大学ランキング」で15年に日本の大学で1位になった。

 研究成果は専用のポータルサイトに集約。発表文は広報部門が内容をかみ砕き表現を修正する。「この研究の社会への意義」などを明記して関心を持たれるよう工夫する。発表してメディアに取り上げられた割合を示す紙面掲載率は10年度が49%だったが、この数年は60%台で推移。関西有力私大より高いという。

 優秀な学生や教職員を集め、愛校心を持って教育研究に励めるようにする。そして分かりやすく発信する。クリエイティブユニットの活躍は「日本の大学として世界から真っ先にイメージされる大学になる」(伊藤准教授)ためのポンプのような役割を担っている。
(森国司)[日本産業新聞2017年3月13日付]

大阪大学
1838年に蘭学者の緒方洪庵が開いた私塾「適塾」が原点。1931年に日本で6番目の帝国大学として創設された。大阪府吹田市など主要3キャンパスに11学部16研究科を擁する。2016年の学部学生数は約1万5500人で日本の国立大学では最大規模。2007年に大阪外国語大学と統合した。

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