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チェック!今週の日経(15)タカタが民事再生法申請へ
リスク対応誤ると企業は…

チェック!今週の日経(15) タカタが民事再生法申請へ リスク対応誤ると企業は…
authored by 日経カレッジカフェ 

 日経の研修・解説委員や日経カレッジカフェの編集スタッフが、この1週間の日経電子版や日本経済新聞から企業ニュースを中心にピックアップし、解説する「チェック!今週の日経」。今週は大型倒産のニュースを取り上げてみましょう。学生の皆さんにとっては倒産した企業はその瞬間に視界から外れてしまうかもしれません。しかし、倒産しても企業が消えてなくならないケースも多く、新しい枠組みで事業を継続しながら再建を目指すのです。そのために会社更生法や民事再生法という法律があります。今回紹介するのはその民事再生法にからんだエアバッグ大手、タカタのニュースです。

製造業最大の負債総額

 16日の朝刊1面に次のようなニュースが掲載されました。

記事

タカタ民事再生法 月内にも申請で調整(6月16日)

 タカタはエアバッグとシートベルトが主力製品の自動車安全部品の有力企業。この2つの製品で世界シェア2割という大きな存在感を持っています。そのエアバッグが異常破裂事故を起こします。事故原因の究明と製品の回収・無償修理(リコール)に素早い対応ができていれば問題は解決に向かうはずでしたが、対応に時間がかかっているうちにリコール対応が必要な車の台数はどんどんと増え、最終的に大きな負債となって同社に重くのしかかりました。リコール対象が1億台を超えるという規模は想像を絶するボリュームです。大きな問題になったのは2014年のことですが、初めて死亡事故が起こったは2009年、対応が遅れているうちに問題が大きく拡大したことは否めません。

 この問題は一企業のリスク対応の甘さと片付けられないポイントが指摘できます。一つはグローバルに広がったサプライチェーンによって問題が一企業にとどめようがない規模で広がったこと。最も多くのリコール対応に追われたのはホンダですが、トヨタ、日産、マツダをはじめ多くの日本メーカーはもちろん、ゼネラル・モータース(GM)やフォルクスワーゲン(VW)など、海外の自動車メーカーにも及びました。

インフレーション装置
タカタのエアバッグ用ガス発生装置

 もう一つのポイントは特別な技術が必要な製品の寡占化という問題です。エアバックを瞬時に膨らませる技術は、タカタほかの大手4社が8割のシェアを握る寡占市場です。1社が生産をやめるような事態になると、一気に供給が逼迫することになります。不祥事を起こしたからといって簡単に市場から退場させるわけにいかないのです。さらに再建を目指すにしても、ほかの大手3社のどこかをスポンサーにして再建をゆだねると、寡占化がさらに進み、供給逼迫のリスクや価格の高止まりや高騰というリスクが高まってしまいます。今回の事業再建スキームでは、大手4社に含まれない中国企業を親会社に持つ米メーカーがスポンサーになる形で再建を進めることになります。リコール費用を事実上肩代わりしている自動車メーカー各社の思惑が反映した再建策です。

危機管理に甘えは通用しない

 この問題は翌日の朝刊でも詳しい解説記事を掲載しています。

タカタ失われた10年 甘えの構造、危機意識に蓋(6月17日)

 1面に掲載されたこの記事では「安全に関する部品を手掛けながら消費者目線を欠いた経営陣の危機意識の低さ、甘えの構造が問題の抜本解決を遅らせた」と、タカタの経営姿勢の甘さを厳しく指摘しています。米司法省が1月に出した声明で「10年以上にわたり安全よりも納期や利益を優先し、安全に関わる重要な試験データの情報を繰り返し偽ってきた」と断罪したように、経営姿勢の甘さがかつては安全の象徴とさえいわれた「TAKATA」ブランドの価値を大きく毀損しました。

 経営再建に本腰を入れ始めたのもようやく16年2月になってから。それも自動車メーカーに背中を押される形でした。最終的には経営責任が明確になる法的整理になりましたが、そこ至るまでは私的整理によって創業者一族が経営陣に残る形を模索するなど、「甘え」といわれても仕方がない動きが、スムーズな問題解決を妨げていた様子もこの記事からは見てとれます。

 安全へのハードルが格段に上がり、環境対応など多くの規制が強化されている今日、危機対応が少しでも不誠実に感じられると、事業が立ち行かなくなるほどのレピュテーションリスクを背負うことになります。タカタの問題は自動車の安全部品という象徴的な製品で起こりましたが、何かが起きてしまったときの危機管理の本質はどのような製品でもサービスでも変わることはないのです。

(企画委員 水柿武志)

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