静岡銀行の鈴木俊一郎さん「ひとりでは何もできなかった」
学生時代の過ごし方2017(6)
希望の会社や業界に入ってキャリアを積む20代の先輩が、自らの学生時代を振り返ります。今回は静岡銀行の鈴木俊一郎さん(29)です。生まれ育った静岡にUターン就職し、地銀ならではの地方創生の夢を育んでいます。
――現在の仕事を教えてください。
「本部の経営企画部で新しい中期経営計画に基づく事業戦略の策定にかかわっています。コアビジネスの強化や新事業の拡大などで収益力を高める一方、働き方改革を推進していくためには、法人部をはじめとする本部の中の連携と調整が必要ですし、支店の理解と協力も不可欠です。スケールの大きさを実感しています」
「2年半ほど前に本部勤務を命じられ、東京の新宿支店から法人部に異動しました。若手にチャンスを与えようと入行3~4年で支店から本部に上げるケースが増えていますが、その走りの人事だったと聞いています。法人部のあと、新設の地方創生部に移り、この春から経営企画部に配属されました。ここまでのキャリアとしては運に恵まれていると思っていますし、少し飛ばしすぎかもしれません」
ノリの良さと積極性、周りを巻き込む
――どんな学生時代だったのですか。
「サークルが5割で、アルバイトが3割、勉強2割の4年間でした。早稲田CROSS T.C.(クロスティーシー)という大学公認のテニスサークルに入り、第24代目の幹事長を務めました。2年生の夏から3年生の夏にかけての話です。男子と女子を合わせて80人ぐらい所属していたでしょうか。全体練習は週に1~2回。みんなが自分のペースで楽しめるサークルの良さを伸ばしつつ、強くなるための雰囲気作りを大事にしました」
「小学生の頃から何かあると前に出るタイプでした。ノリの良さと積極性で周りを巻き込み、みんなで同じ方向に向かっていくやり方が性分に合っているようです。サークルの同期の間では1年生の頃から冗談めかして幹事長、幹事長と呼ばれていました。そのまんまの流れで幹事長に選ばれたというわけです。私の代になって、試合の応援で駆けつけてくれる後輩の数が増えました。私たち同期のまとまりの良さに感化されたのではないでしょうか」
――チームワークを大切にしているようですね。
「1人では何もできないと思っています。社会人になって、なおさら痛感しています。仕事の課題解決にはチームワークとコミュニケーションが必要だからです。就活の面接で静岡銀行の担当者から、君にはチームプレーの適応能力がある――と言われことを覚えています。周りを巻き込む力を評価してもらえたのではないでしょうか」
「余談になりますが、静岡銀行の最終面接で物まねをやりました。自己PRの特技欄で物まねと書いてあったのが目に留まったようです。実は、特技が何もないというのもどうかと思って空欄を適当に埋めただけで、レパートリーなんてありません。即興でサザエさんに出てくるアナゴさんの声色を披露したのですが、そもそもアナゴさんをご存じなかったようで見事に滑りました」
様々な出会いの縁、チャンスと捉える
――アルバイトの話も教えてください。
「IT系のベンチャー企業で3年間お世話になりました。オンラインショップなどでお馴染みのレコメンド機能のエンジンを開発する会社です。あなたにお勧めの商品だとか、その商品を買った別の人たちがチェックした商品が写真付きで表示される機能と言えば、お分かりでしょうか。市販の家電商品のカタログを集められるだけ集め、エクセルでデータを管理する仕事を任されました。炊飯器や加湿器、アロマ機器......。かなりの家電オタクになりました」
「会社の急成長を目の当たりにできたことは得がたい経験でした。週2~3回のバイトを始めた2年生の頃は、社員30人ほどの小さな会社でしたが、トップの思いに共感した人たちがどんどん集まってきました。しかも、会長や社長らトップと社員との距離感が近い。チームのみんなが同じ方向に向かっていく世界観に、ますます刺激を受けました。昨年に上場したアルベルトでの話です」
――静岡銀行で働くことの魅力は何ですか。
「ちょっと前までは、複数の支店を経てから本部に異動するのが一般的でした。支店には支店の良さがあり、本部には本部ならではの仕事の面白さがありますが、経験が物を言う法人部で入行3~4年目の若手が働く姿は考えられませんでした。それが今や当たり前の光景です。最初に配属された支店での頑張り次第では、若手の活躍の場が随分広がりました」
「仕事の付き合いが縁で、クルーザーを持っている方の釣り仲間に加えていただきました。なじみの薄かった静岡県東部の沼津に遠出するようになり、充実した週末を過ごしています。銀行にUターン就職していなければありえなかったオフの趣味でしょう。地域から頼られる銀行であり続けるには何をすべきか――と考える機会が増えました。さすが静岡銀行、と評される地方創生の事業に挑戦したいですね」
――これから社会に出る学生たちにアドバイスをお願いします。
「ビジネスの現場で出会った人たちは総じて、学生時代の話が好きです。これだけは頑張ったという経験を持っていることは強みですね。本人はたいした話でないと思っていることが、実は凄かったりすることが往々にしてあります。ひとつの趣味を、こつこつと続けている人なら会話のネタに使えるでしょう。アドバイスをもうひとつ。学生時代のうちに、1対1で飲みにいけるような仲間を増やしてください。サークルやバイト、ゼミだけとは限りません。就活の合同説明会で気の合う仲間が見つかるかもしれません」
(聞き手は山本啓一)
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