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早稲田大ワークショップ2017(2)つぶやくことが仕事です!
Twitterの「中の人」は何をしている!?

authored by 早大ワークショップ受講生
早稲田大ワークショップ2017(2) つぶやくことが仕事です!Twitterの「中の人」は何をしている!?
 この記事は、早稲田大学の2017年度学部横断型授業「プロフェッショナルズ・ワークショップ」の日本経済新聞社実施講座を受講した学生による作品です。昨年、一昨年に引き続き、今年も4月から6月まで講座を実施しました。「日経カレッジカフェのコンテンツを作成しよう」という課題に対して、33人の学生がメディアの仕組みや取材、記事の書き方について学び、6グループに分かれて実際に独自記事を作成しました。今回、紹介する記事は6月8日に行われた最終発表会で優秀賞を獲得したグループのものです。他のグループの作品も順次、掲載します。
【早稲田大ワークショップ2017】
最優秀賞「留学生も早大生~WASEDAは本当にグローバル?~」

 大学生の約9割が利用するSNSやTwitter。友人から有名人まで、フォローした人のつぶやきが等しくタイムラインに流れる。そんなプライベート性の高いプラットフォームで近年、意外にも企業の公式アカウントが注目を浴びている。企業のお堅いイメージをゆるいツイートで払拭し、ユーザーの心をつかんでいるというのだ。今回は中でも有名な2人のTwitterの「中の人」にお話を伺った。

「中の人」が主人公のマンガまで登場

マンガになった「シャープさんとタニタくん」

 今回取材したのは、健康計測機器メーカーのタニタと電機メーカーのシャープそれぞれの「中の人」だ。タニタには「中の人」(通称「タニタさん」)に直接インタビューし、シャープからは詳細なメールで回答をいただいた。別々に始めたアカウントだが、実は両者はTwitter上で交流を持っている。こうした企業のアカウント同士でリプライを送り合うという光景が、Twitterユーザーに受けたのだ。その人気はなんと「中の人」を擬人化したマンガ「シャープさんとタニタくん」(仁茂田あい著 リブレ刊)が出版されたほど。現在では第2巻が発売中だ。エイプリルフールには、新海誠監督の大ヒットアニメ「君の名は。」のパロディーで、両アカウントが入れ替わるという凝った演出も話題となった。

 どちらのアカウントも2011年前後に、今なお継続して担当している1人の社員が任されて始めた。ちょうど東日本大震災を受け、SNSの社会的影響力の大きさが注目され始めた頃。従来のプロモーションではアプローチできていなかった若年層の認知度向上を期待して開設したそうだ。

 その試みは手探りで始まった。タニタは他社の成功事例を基に、早くから企業活動とはあまり関係のないツイートをしていた。一方、シャープが"日常ツイート"を始めたのは2012年以降、業績悪化などにより世間の注目を集めた頃だ。Twitterでも社会の空気に向き合う必要があると感じたことが、そのきっかけだった。

ユーザーと社員が1対1で向き合う

 とはいえ、企業のアカウントで「ゆるい」ツイートをすることは、炎上したり非難が集まったりすることへの不安がつきものだろう。しかし意外にも、そのような不安は両社ともにほとんどなかったという。

 炎上には2つのパターンが考えられる。1つ目は企業自体の問題に対してTwitterにリプライが殺到するもの。2つ目はアカウント自体のミスだ。前者の場合は、企業は柔軟かつ真摯に対応するほかない。しかし、後者は純粋に担当者の責任であるため、事前に対策を打つことが可能だ。タニタでは、「私物のスマートフォンから投稿しない」、「不快に思われる内容や表現は避ける」、「不確かな情報については触れない」といったガイドラインをつくって運用しているという。一部グレーゾーンの話題に限り社内で確認することもあるが、基本的にツイートはタニタさん個人の裁量に任されている。

 中には「企業なのにゆるすぎる」と考える人がいるかもしれない。しかし、両社の公式アカウントが重視しているのは「フォロワーとの関係を密にすること」だ。より身近に感じてもらえる濃い関係をつくるには、消費者から遠く、堅い印象を与える「企業」という立場で臨むのは適切でない。「企業というより一社員」――あたかもユーザーと1対1であるかのような「ゆるさ」こそ重要になってくるのだ。

人気の秘訣は「デカいことを言う」「ユーザー視線で」

取材に応じてくれた「タニタさん」

 では「フォロワーとの関係を密にする」という数値化できない目標に対し、両社は果たしてどのように取り組んできたのだろうか。気になる成功の秘訣を伺った。

 タニタのアカウントは軌道に乗る以前、自ら他のアカウントをフォローしたり、「マラソン」「体重計」といったキーワードでつぶやくユーザーにリプライを送ったりと、地道な努力を続けていたという。しかし、人気を博したきっかけは、タニタさん自身が「デカいことを言うこと」だった。「このツイートが今日中に5万回RT(リツイート)されたらタニタ公式がひとりでプリクラ撮ります」というツイートは実際に5万RTされ、タニタさんひとりでプリクラを撮るまでに至った。このような「ゆるくもデカい」試みは、それまで企業のアカウントで実施されたことはなかった。そんな意外性が人気に火をつけたのだ。

 「面白さや後のツイートへの伏線、その時々の話題を計算してツイートする」「アカウントの存在が忘れられないよう、ネタがなくてもとにかくツイートをする」。タニタではそんな工夫を毎年しているうちに、初年度3000人だったフォロワーが今では20万人を超えた。成功するアカウントと失敗するアカウントとの差を担当者に伺うと、「失敗というものはない。フォロワー数の大小にかかわらずコミュニケーションは成立しており、継続すればそのうち数はついてくるものではないか」と答えてくれた。

 シャープは対照的に、「ユーザーの好きなもので構成されているタイムラインをむやみに邪魔しないよう心掛けている。ツイート内容もインパクトを狙わず、話の流れやそのツイートを読んで喜ぶ人を想像しながら決めている」という。成功の秘訣は、「広告らしさを出し過ぎないこと、生活者と同じ目線をもち、同じ言葉遣いをすること」だそうだ。

 取り組み方は両者で異なるが、「自社のファンづくり」という確かな軸に沿って、Twitterの特徴であるリアルタイム性を最大限に活用している点で共通している。

新しい広告の在り方として評価される

タニタ製品と「タニタさん」

 Twitterによるブランディングの効果は数値化することができないが、Twitter発の話題や企画は増えている。きっかけは、他企業の公式アカウントとの絡みだった。企業のアカウントは勤務時間中、つまりTwitter上に比較的人の少ない日中にツイートすることが多い。そのとき気軽に絡むことができたのが公式アカウント同士だった。シャープとタニタは、事前の打ち合わせなく、Twitter上で交流を持ち始めた。それが前述のマンガ「シャープさんとタニタくん」につながった。

 Amazonでシャープ製品とタニタ製品をセットで購入すると割り引かれるセールが実施されたこともある。両アカウント以外にも、ゲームのSEGAや文具のキングジムといった公式アカウントとの絡みもあり、企業間コラボが増えてきている。アカウントが直接もたらした売り上げへの影響を数値化することは難しいが、ユーザーにコンテンツとしての価値を生んでいることは確かだ。

 シャープの公式アカウントは今年3月、大阪広告協会から斬新な広告に贈られる「やってみなはれ佐治敬三賞」を受賞した。一人の人格をもった公式アカウントが、新しい広告のあり方として高く評価されたのだ。消費者にとって親しみやすい「共創」型という性質が、広告の氾濫する現代に求められる「無視されない広告」の一つの解となっている。

「もはやライフワーク」、タニタさんの労働観

 大学生にとっては娯楽的なツールに過ぎないTwitterの中で、このような企業の努力が繰り広げられていることをご存知だっただろうか。就活を前に働きたくないと感じる学生は少なくないと思われるが、働くことは決して苦しいだけではない。今回直接取材をさせていただく中で、タニタさんがとても楽しげに仕事をされていることが伝わってきた。そこで私たちは、ご自身の労働観についてもお話を伺った。

 タニタさんは現在、Twitter以外に、商品企画や他企業とのコラボ企画の担当をされている。しかし、入社当初は営業職だった。その頃、社内で持ち上がったTwitter企画の担当者に自ら名乗り出た。驚くことに、タニタさんはそのときまでほとんどTwitterを使ったことがなかった。しかし、商品知識を問われたり、自らの人柄を表に出して相手との話題を作ったりする点で、営業と「中の人」の仕事は似ていた。「それまでは営業が顧客の声に一番近いと思っていたが、実際の消費者から直接リプライが寄せられるTwitterの方がより顧客を近くに感じられた」と笑顔で話してくれた。

 話題の番組の放映時間や大晦日など、多くのユーザーがTwitterに集まるときには勤務時間以外でもツイートをする。1日も仕事を離れることができないということは、想像以上に大変なことだろう。しかしそこに「発信しなければならない」という義務感はない。自ら立ち止まれない環境を作り、もはやライフワークと化しているため、「発信したい」という思いの方が大きいのだ。主体的に次のアクションを探すことが、仕事のやりがいや楽しさに繋がっているのだろう。

 就活時代のタニタさんはエンタメ系産業にも興味があったという。現在「中の人」を担当し、消費者に直接コンテンツ提供ができていることに対して「やりたかったことが別の形でできている」と語ってくれた。どのような企業に入ったとしても、主体性を持って取り組むことで、やりたい仕事・楽しい仕事になる。これから社会に出る学生にとって、改めて「働く」ということを考えさせられる一言であった。

 今後は一般メディアでの「中の人」露出も考えていると語るタニタさん。ますます企業の公式アカウントから目が離せない。

《今回取材させていただいた両社のTwitterアカウント》
シャープ株式会社:@SHARP_JP  株式会社タニタ(公式):@TANITAofficial

B班「MiKS」黒谷綾芽 川﨑智水 小池真子 小松大樹 宮本理央 河合優悟

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