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近畿大学――「とがった広告」連発、
高い研究力、下地生かす

近畿大学――「とがった広告」連発、高い研究力、下地生かす

 少子化のなか、近畿大学は入学志願者数が過去15年で2倍に増えた。背景には完全養殖マグロなどの「持ちネタ」を駆使した広告や派手な入学式、飲食店の開業など、大学業界に根強い横並び志向を覆した広報戦略がある。土台にあるのは私立大で上位に位置する研究力。広報と研究の両輪がかみ合った成功例だ。

 3月中旬、東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)の真新しいビルの一角。広いフロアに置かれた机の周囲に人が集まる。世耕石弘広報部長ら10人強の部員が参加する定例会議だ。

 「(人気ドラマで話題の)恋ダンスやアイドルグループAKB48の楽曲の振り付けなど、若者にはやったものをすぐにやらないと」。世耕部長がパソコンの動画を指して話す。注目される動画を作り、インターネットで公開して国内の受験生や海外の留学生にどうアピールするか。真剣なまなざしで知恵を絞る。

志願数が日本一

動画を使う広報戦略などを議論する近畿大学広報部

 2016年度の入試志願者数は約12万人と00年度の2倍強に増え、3年連続で日本一になった。多くの私立大や地方大が定員割れや志願者数の減少に悩むなかでは異例だ。大学業界に残る横並び意識を排し「持ちネタ」を駆使した広報戦略が奏功した。

 仕掛け人の世耕部長は07年、近畿日本鉄道の広報担当から近畿大へ転職。市場競争にもまれた企業人の目には、新聞や雑誌に並ぶ各大学の広告が「どこも似ている。もっととがらせないと注目されない」と映った。

 09年3月に阪神電車が近畿大のお膝元の近鉄の路線に乗り入れる新線の開通に合わせて第1弾を打った。前年夏から電車内などの広告に、神戸方面から通学しやすくなる様子を路線図で示した。近鉄勤務の経験から「開通前にはマスコミが盛んに取り上げる」と予測。読み通りに「新線の宣伝を大学がやった」と話題を呼んだ。

2015年1月に近畿大が出したクロマグロの広告(近畿大のサイトより)

 同年には受験生世代に人気のアメリカンドール「ブライス」を広告に起用し注目を浴びた。11年からは水産研究所が世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロを題材にした広告を連発。巨大なマグロが山の火口から現れるシュールな構図など、見た人の記憶に残る広告を連発した。

 15年以降の国際学部の連続広告や16年の「ウナギ味のナマズ」の広告も、持ちネタをフル活用した。限られた広告費の中でいかに世間やメディアの関心をひくか。広報部員が知恵を出し合った成果だ。

 卒業生で音楽プロデューサーのつんく♂さんが参加する派手な入学式や、水産研の養殖魚を提供する飲食店を東京と大阪で開店するなど、独自の広報活動が話題を呼び、入学志願者数の倍増につながった。

 武器は広報力だけではない。産学連携などを担うリエゾンセンターの宗像恵センター長は「研究力や産学連携の実績は私立大でトップクラス」と話す。

女子学生を開拓

 英タイムズ紙の大学ランキングでは、近畿大は16年に国内28位。私立大では順天堂大学や慶応義塾大学に続く5位だ。企業からの受託研究数は14年度に239件と、立命館大学に続き全国2位。高い研究力の下地があってこそ志願者を引き付けている。

 鍵を握るのが女子学生の開拓だ。かつては理系が中心で女子が少なかったが、10年度頃から総合社会や国際など女子に人気が高い文系学部を相次ぎ新設。校舎の新改築を進めた。その結果、メインの東大阪キャンパスで09年に27.6%だった入学生の女子の比率は13年に32.2%に上がった。

 現在は約400億円を投じて東大阪キャンパスの施設を整備する「超近大プロジェクト」が進行中だ。24時間使える大規模な自習室や近未来的な造りで多くの漫画を収蔵する図書館、学生ホールなどを20年の完成を目指し一挙につくる。

 世耕部長は「関西私大の『関関同立』など大学のブランドイメージは予備校が作った。広報などイメージ戦略で対抗しないと」と話す。新しい近畿大ブランドを磨いて定着させられるか。広報部の奮闘が続く。

近畿大学
 1925年創立の大阪専門学校と43年創立の大阪理工科大学を母体に、49年に設立。74年に医学部、75年に医学部付属病院を開設。2003年に経済学部と経営学部を設置。10年に総合社会学部、16年に国際学部を新設し14学部となる。学部学生数は約3万2000人。他に短期大学部や法科大学院、通信教育部なども置いている。

(草塩拓郎)【日経産業新聞2017年3月27日付]

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