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吉祥寺、西宮北口…
「住みたい街」は賃料も高い?

吉祥寺、西宮北口…「住みたい街」は賃料も高い?

 春の引っ越しシーズンが過ぎ、新居での生活を始めた人も多いだろう。職場へのアクセスや家賃との兼ね合いでどこに住むか決めた一方、「いつかはあの地域に住んでみたい」という願望もあるはず。「住みたい街」ランキングは毎年話題になるが、実際に住むとしたらいくらかかるだろうか。リクルート住まいカンパニーが4月までに公表した「SUUMO住みたい街ランキング2017」の賃貸相場から街の魅力を探ってみた。間取りは便宜的に独身~家族構成の少ない段階の世帯などが探しやすそうな1LDKが対象。3LDKなど、より広い間取りで考えたい場合は数万円プラスしてイメージしてほしい。

吉祥寺と恵比寿の差は7万円だが...

 街ごとの賃貸相場(1LDK)と照らし合わせると、関東の10位以内の街はすべて賃貸相場が月10万円を超えており、関西や九州と比べて高さが目立つ。近年「住みたい街」として激しい首位攻防戦をくり広げるのが、どちらも東京都内の吉祥寺と恵比寿だ。今回は2年ぶりに吉祥寺が首位を取り戻した。

吉祥寺は駅の近くだと値ごろな物件は探しづらい

 「吉祥寺エリア」として目安となる賃貸相場は10万6千円。恵比寿より約7万円低く、首位争いといっても回答者の求めるものがかなり異なる。吉祥寺は今年で開園から100年となる井の頭公園を中心に、自然を生かした街並みが魅力となっている。とくにファミリー層の支持が強い。一方、恵比寿は独身者とDINKS(共働きで子供のいない世帯)による「住みたい」との回答が多く、総合ランクで16年に首位、今回は2位となった。実際に住むかどうかは別として、子育ての環境という観点より「住んでみたい高級住宅街」として選んだようだ。

 ただ、本当に住むとなると必ずしも「吉祥寺は恵比寿より安い」とは言いきれないのが難しいところだ。リクルート住まいカンパニーの池本洋一SUUMO編集長は「都内の他の街と比べ、吉祥寺は広めにエリアを認識されている傾向がある」と話す。

 不動産業者によっては「吉祥寺駅からバス20分」でも吉祥寺エリアとして掲載してあり、実際には南側を走る京王線の仙川や千歳烏山のほうが近いケースもある。北側も同様で、西武新宿線の武蔵関や上石神井のほうが最寄り駅であっても「吉祥寺から〇分」との表示をまず目立たせる物件もある。実際に吉祥寺駅を通勤に使う場合、値ごろな物件は徒歩15分以上かかる例が少なくない。吉祥寺駅から歩いて10分以内だと、1LDKで月18万~20万円する物件も多い。

 半面、家賃がやや高くても「住みたい街」ランキングで躍進したのが品川だ。目安の賃料は1LDKで14万9千円だが、16年の13位から17年は5位へと大幅上昇した。池本編集長は「街の魅力は従来のおしゃれ感だけでなく、再開発、コストパフォーマンス(コスパ)、郊外の中核地域などもキーワードになっている」とみる。

 関西では「なんば」が前回の7位から3位へと急上昇した。1位の西宮北口と比べて目安の賃料は約2万円高い9万円だが、品川と同じく再開発が多くの回答者を引き寄せた。南海なんば駅の近隣では、地上30階建ての商業ビルが18年にも完成する。大丸心斎橋本館も21年に向け建て替え工事が進む。

「穴場の街」1位は北千住

 同社では、さらに「コスパ」を重視した街選びの参考として「穴場だと思う街」のランキングも投票結果をまとめた。結局のところ、吉祥寺だと値ごろで内装も良い物件を探すには駅から遠くなりがち。恵比寿のような高級イメージの地区も本当に住むとしたら賃料のハードルが高い。

 関東の穴場ランキングで1位の北千住(東京・足立)だと駅から徒歩10分以内かつ築年数も浅い物件(1LDK)が、おおむね11万~13万円台で出ている。つくばエクスプレスが開業した2005年ごろから再開発も進み、商業施設や大学の新校舎の効果で学生など若者でにぎわうようになった。都心への交通の便を考えても地下鉄の千代田線に乗ると約15分(7駅)で大手町に着く。吉祥寺や恵比寿などで駅から遠い「ブランド駅周辺」のステータスを手に入れるより、実用的で「コスパ」に優れているかもしれない。

 「関東の穴場」2位の赤羽(東京・北)も再開発が進むエリアで、北千住と同様に大学の新キャンパスを誘致した。学生を呼びこむことで活気を演出しつつ、耐震性に不安のあった団地を建て替えるなどして街全体の若返りも図っている。JR湘南新宿ラインだと新宿まで約16分(2駅)で着く。

 関西もアクセスの便利さや再開発の進むエリアに注目が集まっている。穴場ランキングで1位の東三国は地下鉄の御堂筋線を使うと新大阪の隣駅で、新幹線に乗りやすい。梅田にも約7分(4駅)で出られる。目安の賃料は7万4千円と、梅田より2万4千円安い。さらに関西の穴場2位の中津は総合ランキングでも20位と、2年前の44位から大幅にアップした。目安の賃料は8万9千円と東三国よりは高くなるが、東京と比べると安く住めて梅田にはすぐ行ける。

 一方、初の調査となった九州(福岡)は博多が1位で、関東や関西よりも住みたいエリアと経済の中心地が同一となっている。広島や仙台、札幌など他の地方都市でも同様の傾向がある。家賃はおしなべて東京や大阪より安いが、地方都市のほうが車社会なので駅前にそこまでこだわる必要がないのも要因として考えられる。全国の「住みたい街」の賃料を比較すると、総合ランキングで上位なのに安い場合は「街のエリアが広い」と捉えられるようだ。住みたい街で駅に近く利便性の優れた物件を選べばコストがかかるため、これから伸びる「穴場の街」を探すのも一手のようだ。
(商品部 小太刀久雄)[日経電子版2017年5月11日付]

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