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セブン沖縄進出は
コンビニ最終戦争の序章

セブン沖縄進出はコンビニ最終戦争の序章

 「『何で、セブンが来ないんだ』とずっと言われてきた。どうにか開店準備が整う環境ができた」。6月9日午前、沖縄県庁で青色のかりゆしを着た古屋一樹セブン―イレブン・ジャパン社長の同県進出を発表したときの発言だ。セブン唯一の未進出な都道府県がなくなることで、多くのメディアがこの模様を報じたが、準備が整ったからといっても直ちに沖縄1号店の開店式典が行われるわけではない。1号店は2年後の2019年の予定だ。

工場にメド、実際の出店は2年後

 古屋社長の語る準備とは出店のことではない。弁当や総菜を作る工場のメドがたったことがセブン流の準備なのだ。工場からトラックで3時間以内に各店舗に届けることを原則としていて、その条件を満たす工場のメドがたたないと出店箇所を決めないのだ。弁当や総菜は利幅が高くセブンの利益の源泉。おいしさ、鮮度を保つために譲れない一線だ。

沖縄の翁長雄志知事(写真右)と会談したセブン―イレブン・ジャパンの古屋一樹社長(6月9日、沖縄県庁)

 今回のセブンの沖縄進出について、筆者はニッポンのコンビニ勢力地図の未来予想図と見ている。もっと強く言うなら最終戦争だ。全国的に見るとこの業界はここ数年で中小コンビニはファミリーマートやローソンのグループ入りを果たし上位3社(セブン、ファミマ、ローソン)で市場(約11兆円)の9割を握っており、寡占状態となった。

 では、沖縄のコンビニ事情はというと今年2月時点で、ファミマが318店、ローソンが210店。中堅コンビニはなく2強体制となっている。さて人口が約144万人の沖縄県でファミマ、ローソンの店舗数は多いのか、少ないのか。そしてセブンが入り込む余地があるのかどうかだ。人口を店舗数で割った1店舗あたり人口は2720人。全国平均だと2282人なのでまだ出店の余地はありそうだ。1店舗あたり人口が最も多いのは奈良県の2987人、次いで長崎県の2796人、新潟県の2784人で、沖縄県は4番目だ。

一気にコンビニ激戦地域に

沖縄はスーパーも多く、小売店の競争が激しい地域だ(沖縄県宜野湾市のスーパー)

 セブンは沖縄に1号店から5年間で250店の展開を予定している。仮にファミマやローソンが現状の店舗数で沖縄の人口も約144万人のままだとどうなるか。セブンが250店の店舗網を構築した沖縄県でのコンビニ1店舗あたり人口は1850人となる。この数字を現時点で比較すると、山梨県(1820人)、北海道(1835人)に次いで3番目に厳しい環境に置かれる計算だ。沖縄は人口増が続いているものの、250店体制が整う25年には減少に転じる。スーパーも多く、小売店の競争が激しい地域だから相当な激戦になるのは明らかだ。

 セブンはこれまでもファミマやローソンに比べて全国展開のスピードは遅かったが、橋頭堡(きょうとうほ)を築けば一気呵成(かせい)に店舗展開を進めて、形勢を逆転してきただけにライバルには脅威に映る。おそらく、受けて立つファミマとローソンは防戦のためにセブンが出店する前に有望な立地に出店して、店舗数は増えるだろうから競争はもっと激化するはずだ。

 こんなデータもある。「商業の国勢調査」とも言われる商業統計では沖縄県の小売業の商品販売額は1兆417億円で、人口で割ると72万4000円となる。この数字は残念ながら全国で最下位。平均は96万3000円だ。

 海に囲まれた沖縄。そこで繰り広げられる3社による市場争奪戦。それは海に囲まれたニッポンの姿でもある。
(編集委員 田中陽)[日経電子版2017年6月14日付]

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