就活負け組からの一発逆転
ホンネの就活ツッコミ論(17)
そろそろ現4年生の就活もひと段落。内定をもらった学生はどこにするのか、決めた学生、あるいは、まだ迷っている学生もいるでしょう。一方、うまく行かずまだ内定を取れない学生は絶望感に駆られています。今回のテーマは「就活負け組からの一発逆転」です。
負け組の特徴は「頑固」「引きこもり」「視野の狭さ」
就活がうまく行かない学生は何がまずいのでしょうか。私がこれまでに接してきた中で言えば、その特徴は以下の3点です。
1.自分のやり方を変えようとしない頑固さ
2.大学職員や友人などに相談できず引きこもる
3.狭い視野での判断
方向性、方法論が間違えていたから苦戦する
まず1点目、「頑固さ」について。「私の友人のA子ちゃんなんですけど就活がうまく行かなくて」。先日、ある学生から内定報告を受けた際、ご友人の話が出ました。こちらがいくつか打開策を提示したところ、この内定学生の返事は意外なものでした。
「実は、そういう話、全部したんです。ところが『自分のこれまでの努力を否定されそうで怖い』って。断られてしまいました」。これが就活で空回りしてしまう学生の特徴その1、頑固さです。
就活で苦労したのはわかるのですが、その方向性、方法論が間違えていたからこそ就活で苦戦したわけです。それを見直せない、というのはそのまま苦戦が続くことを意味します。内定した学生に話を聞いてみると、A子さんは、この内定学生とLINEではやり取りするものの、それ以外にはあまりコミュニケーションをとっていない模様。
苦戦続きだから「相談できない」
同じく、苦戦続きのB君は、キャリアセンター職員やゼミ担当教授も避けているとのことでした。「就活の序盤ではキャリアセンターの先生(注:職員のこと)にもゼミの先生にもよく相談に乗ってもらって。『B君なら大丈夫だよ』って言われていたのに、まだ内定が取れません。それもこれも僕がふがいないからで先生方に顔向けできないのです。相談に行くことなど、とても恥ずかしくてできません...」。
これが苦戦続きの学生の特徴その2、「引きこもり」です。就活前や序盤では相談していたキャリアセンター職員などに、急に相談できなくなり、自分の殻に閉じこもってしまうわけです。
視野の狭さは自己否定・過大評価に
特徴その3の「視野の狭さ」、これは志望業界・企業が引き下がるか、高望みのままか、極端に分かれます。C子さんは志望企業からの内定が取れず、落ち込んでいました。「何をやってもうまく行かなくて...。7月以降の採用なんて、いわゆる『落穂拾い』みたいなものですよね? 数も少ないでしょうし。もう正社員はあきらめて契約社員の情報を集めようと考えています」
C子さんの逆を行くのがD君です。テレビ局・新聞社志望なのですが普段から新聞を読まず、それもあってか、春採用では筆記試験でことごとく落ちていました。ところが本人は意に介していません。「新聞社はまだ秋採用があります。テレビ局も就職留年をしてもう一度受け直せば、まだチャンスはあるかな、と」
前提条件としてはワンチャンスあり
ここまで就活がうまく行かない学生の特徴をご紹介してきました。ではどうすればいいか、改善策をお伝えする前に、前提条件として夏・秋採用の見通しをお伝えしておきます。夏・秋採用はC子さんが話したように、「落穂拾い」とする企業は例年あります。
ただ、今年の2018年卒向けの就職市場は例年以上の売り手市場であり、大量の内定辞退が見込まれます。そのため、「今年は落穂拾いなんて言っていられない。まだまだ採用活動は続ける。学生が大変な思いをするのが『就職氷河期』なら、今年は採用側が大変な思いをする『採用氷河期』だ」と話す採用担当者は少なくありません。
それから、インターンシップや採用担当者の数によって、夏・秋採用を実施するかどうか、という問題もあります。ある企業の採用担当者は次のように話します。
「夏・秋採用まで継続する企業は採用が下手、とする見方もあるがとんでもない。7月ごろまでに採用活動を終えられる企業は、採用担当者の数が多いか、前年度夏ごろからインターンシップ・セミナーを数多く開催して学生と丁寧に接触できたところ。それはそれですごいが、できていない企業もある。うちは実質的に採用担当者が私一人だし、それで全部やるのは無理。もちろん、夏・秋採用は今年も実施する」
採用担当者の数が多くても、あえて夏・秋採用を実施する企業もあります。公務員試験、教員採用試験からの転換組が多いというのがまず1点。それから、春採用で失敗した学生でも自己PRなどがうまくできなかったなど何か理由があり、実は企業にとってほしい人材である可能性がある、と考えるからです。
企業側の様々な思惑、それから何よりも内定辞退により、今年は例年以上に夏・秋採用が活発になります。つまり、就活がうまく行っていなくても「ワンチャン(ス)あるよ」ということをまず前提条件としてお伝えしておきます。
ナビに合わせてキャリアセンター・ハローワークの活用を
就活負け組からの逆転策は、「キャリアセンター」「ハローワーク」「就活カフェ」「就活の見直し」の4点です。まず1点目のキャリアセンターについて。春採用まで就活生は就活情報をどこで取るかと言えば、就職ナビサイトが中心となります。
この就職ナビサイト、閲覧する学生は無料で、採用情報を出稿する企業が就職情報会社に掲載料を支払います。その額、掲載料だけでなく、メール配信などのさまざまなオプションを含めると数百万円から高い企業だと数千万円にも上ります。
さて、春採用で一段落。それでも内定辞退などで夏・秋採用をする企業からすればどうでしょうか。採用者数は春採用ほどではありません。企業によっては数人程度、ということもあり得ます。春採用では、就職ナビサイトに掲載料を支払っていた企業からすれば、数人程度の採用のために、さらに掲載料を払うでしょうか。そこまでは費用対効果が低すぎる、とする企業が多いはず。
では、こうした企業がどこで学生を集めるか、と言えば、キャリアセンターです。普段から仲がいいキャリアセンター職員に連絡、夏・秋採用の実施を伝えます。中にはどういうタイプが欲しいか、はっきり伝えることも。話を受けてキャリアセンター職員は該当する学生がいないか、探します。この方法だと、ナビサイトに掲載料を払わずに済みます。そのため、キャリアセンターには多少、気まずいとしても積極的に相談することが打開策の1点目となります。
新卒応援ハローワークで相談を
打開策その2は新卒応援ハローワークです。理由はキャリアセンターと同じ。企業からすれば、求人情報を出しても費用がかからないからです。何しろ、新卒応援ハローワークは民間企業ではなく、国・厚生労働省による相談機関です。全国47都道府県に57か所あり、利用は無料。地元企業だけでなく、他地域の企業情報も公開しています。
それと、学生によってはどうしても就活序盤で接点を持っていたキャリアセンター職員に相談しづらい、という方もいるでしょう。相談しづらいのであれば、相談する相手を変えていく、という方法があります。その一つが新卒応援ハローワークです。ジョブサポーター(相談員)が常駐、各種の就活相談に乗ってくれます。さらに新卒応援ハローワークによっては、模擬グループディスカッションや面接対策講座などを実施するところも。
就活カフェも侮れない
相談先を変える、という点では新卒応援ハローワークの他に、打開策その3として、就活カフェを挙げましょう。就活カフェとは学生の利用は無料ないし数百円程度。無料のWi-Fi、電源(充電自由)があるのはどこも同じ。カウンセラーへの相談、学生同士の交流ができるかどうか、あるいは静かに過ごせるかなどはカフェによって大きく異なります。主なところでは、キャリぷら(神田・神保町、大阪・本町)、キャリぷらplus北海道(札幌)、就トモCafe(東京・新宿)、就プラ(東京・高田馬場)、パソナ学職カフェ(札幌、東京、横浜、名古屋、大阪、広島、福岡)、知るカフェ(早稲田、慶応義塾、同志社などの大学近辺に17カ所)などです。
私が取材に行った、キャリぷらplus北海道ではちょうど就活中の4年生が相談に来ていました。引きこもってしまう学生に比べれば一歩踏み出しています。カウンセラーや出入りする採用担当者の話から意外なヒント、意外なきっかけが見つかるかもしれません。
就活そのものを見直す
打開策4点目は、エントリーシートや面接について見直すことです。特にエントリーシートなど応募書類については、学生の話を書かず、その企業への追従や判断不能な自己PRが中心、という学生が少なくありません。
いくら本人が頑張っているつもりでも、方法論が間違えている以上、空回りして苦戦が続くだけです。押してダメなら引いてみる、の気持ちで再点検してみてください。
なお、この日経カレッジカフェでは編集部記事として「就活再点検!」シリーズをこの6月に8回にわたって連載。自己PRから最終面接まで、これまで掲載した記事(中には私の記事もあります)がどんな視点を持てばいいのか、まとめています。この連載をまとめて読むと、弱点が見つかり、夏・秋採用に備えられることになるでしょう。
就活がうまく行っていない学生は、内定を取った学生に比べて自分は、と落ち込んでいることと思います。うまく行かないのは頑張っていなかったから、ではありません。頑張り方の歯車がちょっとかみ合っていなかっただけです。
最後に過去の名言を2つほどご紹介して今回は終わりとします。
「人間は神ではない。誤りをするところに人間味がある」(山本五十六)
「失敗とは転ぶことではなく、そのまま起き上がらないことなのです」(メアリー・ピックフォード)
1975年札幌市生まれ。東洋大学社会学部卒。2003年から大学ジャーナリストとして活動開始。当初は大学・教育関連の書籍・記事だけだったが、出入りしていた週刊誌編集部から「就活もやれ」と言われて、それが10年以上続くのだから人生わからない。著書に『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)など多数。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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