日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

曽和利光の就活相談室第1志望で落ちた業界は
諦めたほうがいい?

authored by 曽和利光
曽和利光の就活相談室 第1志望で落ちた業界は諦めたほうがいい?

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。「就活相談室」では毎回、少人数の模擬面接をしてきましたが、今回はもっとたくさんの就活生の疑問に答えるために講義形式の「対策講座」を開催しました。参加した皆さんから鋭い質問が途切れることなく寄せられ、予定した時間をオーバーしてしまいました。一つ一つみていきましょう。

「入社したらやりたいこと」どう答える?

――入ってから何をしたいか、どこに配属されたいかということをよく聞かれます。でもまだそんなことまで考えていません。どう答えたらいいのでしょうか。

 面接のトレーニングを受けていない面接官が、聞くことないから聞いてくる類いの質問です。人事は自社の中のキャリアプランを立てている人を優遇するなんてことは絶対にありません。今は会社側が社員の人材育成プランを考えなければいけないという風潮ですから、学生に聞くなんて本来ならお門違いの質問でしょう。

就活に悩みを抱える就活生に集まってもらった

 とはいえ、聞かれたら答えなくてはいけません。何か考えていることがあればいいのですが、ないのに無理やりその場で作って言ったら、突っ込まれたときに答えに窮することになります。理屈が通らない感じになってしまえばそこで×がついてしまいます。

 そうなるくらいなら、「特定のことはないですが」と前置きした上で、ずらした回答をすればいいのです。確かに聞いたことにきちんと答えることは面接を受ける上での常識なのですが、このような場面ではあえて「聞かれたことに真っすぐには答えませんよ」と伝えながら話すのです。

 例えば、「やりたいことはまだ言えませんが、『なりたい自分』なら言えます」のように言ってみてはどうでしょうか。こういうのって、面接官がする変な質問をかき消すくらいの効果があって使えますよ。逆に「5年後、10年後どうなっていたいか」についてあまりに固まり過ぎていると「この学生は配属しにくそうだ」となることもあります。やっかいですが、ある種の「引っかけ問題」みたいなものだと思ってください。

 面接官はいろんな質問するのですが、結局どんな質問も「あなたはどんな人ですか」という質問の変形です。ちょっとずらした答えだろうが、皆さんの情報が面接官に届くのであれば、それでいいのです。

意外な側面を伝えよう

――「周りからどういう人だと言われますか」と聞かれます。面接官の印象と合致したほうがいいのでしょうか。それとも面接で言っていない普段の自分を出したほうがいいのでしょうか。

 面接官にどんな風に思われたかなんて、自分では分かりませんよ。だからパーソナリティーをダイレクトに聞かれるときは、意外な側面を答えるべきです。「意外な側面なんてない」という声が聞こえてきそうですが、自分を構成する要素なんていっぱいあるのですよ。せっかく面接官に聞かれているのだから、誤解されやすい側面を覆すようなことを言いましょう。「意外に○○だよね」と、あなたの場合、何と言われますか。

――「気さく」とか「明るい」とかですかね。最初は「真面目そう」だと言われますが。

 そうならそう言えばいい。就活で出会う人は初めての人ばかり。最初に「真面目そう」だと思われると、ずっとその印象で終わっちゃうケースが多いです。だから意外性のある側面を強調しましょう。

――部活やバイトを社会人の仕事のようにPDCA(計画、実行、評価、改善)でマネジメントしてきたわけではありません。ただがむしゃらにやってきただけです。そこから何を得たのか、説明するのが難しいです。

 ある出来事や物事を、今の見方とは違った見方でみる「リフレーミング」という言葉をご存じでしょうか。「がむしゃらだ」という言葉を言い換えるとどうでしょうか。

――目の前のことに集中できる。

 そうです。そう言えばいいのです。では「知的好奇心が旺盛」って良いイメージがしますが、悪い言い方だと何て言うでしょうか。

――一つのことに集中できない。飽きそう。

 そうですね。では「明るい」ことを悪く言うとなんでしょうか。テンションが高い、落ち着きがないなどでしょうか。逆に「暗い」は「落ち着いている」「地に足がついている」と言えるかもしれません。こうして自分の特徴をポジティブに言い換えることができます。アピールすることなんていくらでもありますよ。

「すごさ」をきちんと伝えよう

自分の「すごさ」など客観評価はきちんと把握しておこう(講義する曽和さん)

――面接では集団の中で人と人との関係で苦労した話が求められていることが多い気がします。でも、そんなものは私にはありません。

 人との関わりの中で起きたあつれきの話を聞きたい会社がとても多いですね。結局のところ、みんな能力はそれぞれにあって、最終的には人との関わりのようなアウトプットで人の評価が変わるということを大人たちは分かっているからでしょう。だから面接官は学生のみなさんに対人能力を聞きたいわけです。

 ただここで問題になるのは、あんまり対人関係で苦労しなかった人。もしかして、あなたは普通なら困難なことを克服したような話をあっさりと話していませんか。そういう、対人能力がもともとある人は苦労を苦労と感じていませんから、能力に気づいていないかもしれません。まずは自分がどういう人間なのか、周りの人からフィードバックをもらいましょう。自分のすごい部分はあらかじめ認識しておいたほうがいいですね。

――会社の人が好きで価値観が合ったからいいというのはアリですか。

 「御社の人と会いフィーリングが合った」「会社の雰囲気が良かった」「会社説明会で見た人は自分と合いそうだ」というのは、何も言っていないに等しいです。まず何が合ったのか、どこが合ったのかと言わないといけません。

 「サークルやアルバイトから何を学びましたか」と聞かれることも多いと思います。例えば皆さんが面接官だとして、就活生が「私はこのアルバイトから人はどうすればモチベーションを上げることができるのか学んだ」と言ったらどう思いますか。「だからどうなんだ」と思いますよね。理由を必ず言わないといけませんが、言わない人が非常に多いので気をつけましょう。

「受けている会社」は正直に

――様々な業種を受けています。一貫性がないので、どこを受けているか会社名を出すのをためらってしまいます。

 人事の悪い癖ですが、「認知的不協和」というのがあって、一貫性がないと気持ち悪くなるというのがあります。でも人間って本当は一貫性なんてなくて矛盾だらけですよね。いろんな会社を受けていても当然です。

就活生からの質問は途切れることがなかった(質問に答える曽和さん)

 例えばリクルートと信用金庫などあまりにも違うところを受けていると「だいぶ違うけど何で受けているのか」と疑問を持たれます。そこでうまいこと答えられないと窮地に追い込まれる可能性があります。

 理由が特になかったら「たまたま受けただけ」と言えばいいでしょう。変な理屈づけすると「知的誠実さに欠ける」と捉えられかねません。知的誠実さとは、結論ありきで強弁すること。理屈で持っていったら矛盾しているが、自分が優位なように言い切っちゃう――。そんな人が知的誠実さに欠けるというわけです。これはあまりよくありません。

――業界の中の下位企業を受けたとき「第1志望じゃないよね」と聞かれた時がありました。本気度を試しているのかなと思います。「もちろん大きい会社も受けていますが、御社にもいいところがあって内定もらえたらすごくうれしいです」と答えたのですが、これでいいのですか。

 それでいいのではないかと思います。そりゃ、航空業界ならJALやANAに行きたいと思う人が大半なのに、中小航空会社の面接の時に「御社が第1希望」と言うのはウソに決まっています。第1志望が別にあるなら、その他の会社は「第1志望群です」と言えばいいです。それで先方は「この学生はうちを第1志望としていない」とわかる。ある意味日本的コミュニケーション能力で、その場が丸く収まるわけです。それでいいのです。

面接官が出すサインは読めるか

――面接官とフィーリングが合ったと思ったのに落とされました。受けている最中に面接官が出すサインはあるのでしょうか。

 面接でいい感じになったらどっちか。両方の側面があると思います。一つは当落のボーダーライン上にいるとき。このときはめちゃ突っ込まれます。もう一つは落とすと決めたのでいい印象与えて、自社の「アンチ」にならないようにするとき。特に消費者を相手にするようなBtoC企業は就活生といえども「全員お客様」になる可能性があるわけですから、落ちる方にも気持ちよく帰ってもらいましょうと、いうことになります。

 学生側に質問の時間が長く取られたら、ダメかもしれませんね。面接官にとって、質問するのと質問に答えるのはどっち楽かというと、答えるほうが圧倒的に楽です。楽したいときは質問に切り替える。お別れの合図かもしれません。

――ある業界で第1志望が落ちました。もうその業界は諦めたほうがいいでしょうか。

 落ちた理由が重要だと思います。最終でもかなり根掘り葉掘り聞かれて落ちたのなら、自分と合わなかった「ミスマッチ」の可能性があります。みなさんは最終で落ちたら「惜しかった」と思うかもしれません。それは逆で、最終までじっくり見られて落ちたら、徹底的に合わなかったとも言えます。むしろ1次面接で面接能力の低い面接官に当たって落ちたのであれば運が悪いだけですから、もう一度似たような業界を受けてみてもいいと思います。
[日経電子版2017年6月14日付]

曽和利光(そわ・としみつ)
 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。
曽和利光さんから模擬面接による指導や、悩み相談を受けたい就活生の方は、こちらのフォームから氏名・メールアドレスなどの連絡先をお知らせください。リンク先に飛ばない場合はこちらのURLをコピーしてお使いください。 https://esf.nikkei.co.jp/sowa_mensetsu//

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>