日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

サステナブルな会社選び(3)ソーシャルビジネスだけで年商33億円
ボーダレス・ジャパン急成長の秘密

authored by 「オルタナ」編集部
サステナブルな会社選び(3) ソーシャルビジネスだけで年商33億円ボーダレス・ジャパン急成長の秘密

 この連載では、ソーシャル・イノベーション・マガジン「オルタナ」が企業の規模や知名度を問わず、社会的課題にも積極的に取り組む企業を皆さんの就職先候補として紹介していきます。大手企業のCSRやサステナビリティ担当部署で働く若手社会人や社会起業家へインタビューし、「社会的課題を解決する働き方」を様々な角度からお伝えします。

 今回、紹介するのは、ソーシャルビジネス業界最大手のボーダレス・ジャパン(東京・新宿)です。同社は「ソーシャルビジネスしかやらない会社」を掲げ、8カ国で13の事業を展開しています。創業は2007年、直近(2017年2月期)の売上高は33億円と急成長しています。同社の鈴木雅剛代表取締役副社長は、「将来的には1000の社会的事業を生み出す」と胸を張ります。強気な目標に聞こえますが、同社の成長の秘けつを聞きました。

「儲かりにくい」人向けがソーシャルビジネス

――ボーダレス・ジャパンは「ソーシャルビジネスしかやらない会社」と掲げていますが、通常のビジネスとソーシャルビジネスの違いは何でしょうか。

バングラデシュの自社工場で従業員に技術指導をするボーダレス・ジャパンの田口一成社長(左から3番目)と鈴木副社長(右端)

 ソーシャルビジネスは社会問題を解決するために生み出されるビジネスのことです。社会問題とは、社会の不合理や欠陥によって、日常生活がうまく過ごせない状況になっている状態を指します。具体的には貧困や差別、偏見、環境問題などです。サービスを受ける人は「マーケットから放置された人」なので、「儲かりにくい」です。

 通常のビジネスは、顧客のニーズや不満をビジネスチャンスととらえています。市場の大きさを見込んで参入しますが、ソーシャルビジネスは社会問題の解決を目的として参入するため、市場の有無や大小は関係ありません。

――ソーシャルビジネスを拡大させるには高度なスキルが求められますが、御社では創業10年で売上高30億円を突破しました。どのようにして事業を成長させたのですか。

 当社では、貧困農家の自立支援につながるオーガニックハーブティー、人種問題の解決を目指す多国籍コミュニティハウス、途上国の貧困地域への物流インフラの構築など13の事業を行っています。

「修正力」で事業を継続して成長させる

 事業を継続的に成長させている要因としては、「修正力」があります。うちでは、新規事業を公募し、ソーシャルインパクトを継続的に出せると社内で判断できたものから事業化していきます。事業化するときには、戦略やマーケティングなどのプロがサポートします。

ボーダレス・ジャパンの鈴木副社長。生み出すことは通過点に過ぎないという

 社会起業家になるにはどうしてもこの問題を解決したいという志や、仲間を集めるビジョンを持つことが最低条件ですが、事業戦略、マーケティング、クリエイティブ、経理などの面が不十分で苦戦してしまうこともあります。事業化の段階でプロが付き、徹底的に横でサポートします。スタートアップ後は、マーケティングやオペレーションをしっかりと行い、事業をつくり込んでいくことが大事で、これを我々は修正力と呼んでいます。

 プランの良し悪しで事業の成功が決まることもありますが、筋が良くても事業が上手くいかない原因は修正力が弱いことにあると考えています。ビジネスプランの仮説との差分を明らかにして、どう修正していくのか。この精度の高さとブラッシュアップのスピードがしっかりしていると成功確率は高くなります。

 今後は100%子会社として、グループ会社を増やしていくことも大切だと考えています。その理由は、ソーシャルビジネスの重要な要素で、お互いの顔が見えることがあります。身内化することで、困っているときにはすぐにノウハウを共有し合える関係性を築いていきます。

――いま、13もの事業を展開しているとのことですが、事業を継続するかどうかの判断基準はありますか。

 事業内容にもよりますが、事業開始後12~18カ月で単月黒字化を目指します。その後、2年目で累損赤字の回収を目指します。3年目で初期投資を回収してもらいます。

顔が見える関係を保ち、素早く実行を

――ソーシャルビジネスで社会を変えたいと考えている学生へのメッセージをください。

本革製品をリーズナブルな価格で、かつオーダーメイド可能にしたことで差別化できた

 ソーシャルビジネスは特別なことではなく、困っている人を助けたいと思い、解決に向けて真摯に取り組むビジネスです。これはビジネスの根本だと思います。つまり、顔が見える関係で事業を行うということです。今の資本主義の限界は、顔が見えない関係でビジネスを進めていることにあります。

 解決したい問題があるなら、いかに早く実行するかも大事なポイントです。なぜなら、待てば待った分だけ事業のインパクトが小さくなってしまうからです。もし、早く実行に移したいと考えているなら、10年掛けて作ってきたプラットフォームである「ボーダレス・ジャパン」という仕組みを使ってもらえたらうれしいです。
(聞き手は「オルタナS」編集長・池田 真隆)

◆社会起業家のプラットフォームへ
 ボーダレス・ジャパンは2007年に創業し、中国、韓国、台湾、バングラデシュ、ミャンマー、トルコ、ケニアに支社を持っています。従業員数は約900人。社会起業家のプラットフォームとして、来年3月までに各事業の分社化を行う予定です。
 通年で採用活動を行っており、事業プランを公募し、選考通過者は同社に入社し、事業の立ち上げを行います。最大3000万円を出資し、経営ノウハウも伝授します。
 ソーシャルビジネスを急成長させた例として、革製品の販売があります。バングラデシュに自社工場を構え、本革の財布やビジネスバッグなどを製造しています。ブランド名は、「ビジネスレザーファクトリー」と「ジョッゴ」。どちらも14年に立ち上げましたが、16年度の売上高は11億円に達しました。
 名刺入れは2999円、ビジネスバッグは1万7999円(いずれも税別)。ともに本革製品ですが、この価格で販売できた理由は、生産から販売まで卸や販促会社を仲介させず、すべて同社が行っているからです。さらに、1個単位からの注文も可能にし、オーダーメイド対応ができることも強みの一つです。
 この事業は貧困問題の解決を目指して立ち上げました。工場では現地従業員を700人以上雇用していますが、特に貧困で苦しむシングルマザーや未経験者を積極的に雇っています。面接では履歴書は不要で、学歴も職歴も問いません。「働きたくても、働けない人を雇用すること」が目的です。賃金も、同国の他の工場と比べると1.2~1.5倍ほど高いそうです。出稼ぎに来ている人への住居や託児所も設けることを予定しています。
 同社は創業10年の若い会社ですが、社内制度も充実しています。社員の扶養配偶者や両親の健康診断費用を負担する「家族の健康診断制度」や、子どもが何人いても一人につき最大で3万円を支給する「子ども手当制度」、給与減額なしで12日間の有給休暇を支給する「パパ育児特休」などがあります。

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>