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早稲田大ワークショップ2017(4)就活だけでは不十分?!
元早大講師に聞くキャリア形成

authored by 早大ワークショップ受講生
早稲田大ワークショップ2017(4) 就活だけでは不十分?!元早大講師に聞くキャリア形成
 この記事は、早稲田大学の2017年度学部横断型授業「プロフェッショナルズ・ワークショップ」の日本経済新聞社実施講座を受講した学生による作品です。昨年、一昨年に引き続き、今年も4月から6月まで講座を実施しました。「日経カレッジカフェのコンテンツを作成しよう」という課題に対して、33人の学生がメディアの仕組みや取材、記事の書き方について学び、6グループに分かれて実際に独自記事を作成しました。他のグループの作品も順次、掲載します。
【早稲田大ワークショップ2017】
最優秀賞「留学生も早大生~WASEDAは本当にグローバル?~」
優秀賞「つぶやくことが仕事です!Twitterの「中の人」は何をしている!?」
「あなたの日常はもっと輝く 東大襖クラブに学ぶ大学生の『生き方』」

 大学生活の集大成であり、大半の学生が経験するであろう就職活動。6月にさしかかれば4年生は就職活動の終盤に入り、3年生も将来の自身のキャリアを意識し始める。この就活について、学生はどのように捉えているのだろうか。

就活は受験と一緒でいいの?

 この稿の筆者である私は、母親に「あんたは就活で挫折するからね」と口癖の様に言われている。私は幸運にも、高校受験、大学受験とも第1志望に合格した。母親は就活をそれらと同じものと考えて、「高校受験、大学受験、就職活動、絶対どこかで挫折するものだからね」とよく語る。そう言われればそうなのかもしれない。ただ、ひとつ疑問に思うのは、就職活動は受験と同列に語っていいものなのだろうか、ということだ。

 学生に目を向けると、就活をまるで受験の様に早いうちから意識している傾向を感じる。そこで私たちは、1年から4年までの早大生を対象にしたアンケート調査(回答62人)で「大学生活の目標」について聞いてみた。その結果をみると、全体の半分近くが「就職活動」と答え、「学業」という回答が続いた。就職氷河期こそ過ぎ去ったものの、就職への不安からか多くの学生が「就活での成功」を目指している。今の大学生がいかに就活を見据えて行動しているかを物語っている。

 私たちは、早稲田大学にはLINEアプリを使って、学生の就活を独自に支援しているOBがいることを聞きつけた。元早大講師で、現在はシンクタンクの大和総研に勤務しながら、週2回、上智大学や東京大学でキャリア形成についての授業を行っている宇野健司先生だ。そこで今回、宇野先生に、就職についての考えや学生の就活の現状を伺ってみた。

職歴がキャリアのすべてではない

 「就職自体はそこまで大事ではないと思いますよ。就職は自分の人生設計の中の1つに過ぎませんからね」。インタビューが始まってものの5分で、宇野先生は就活支援自体にはあまり重きを置いていないことがわかった。就活支援をしているはずの先生が、どういうことなのだろうか。

 宇野先生は、お手持ちの資料を私たちに渡して、こう説明した。「寝ている時間を抜きにして、人生を82歳まで、働く年齢を62歳までとすると、仕事に費やす時間が27%、平日の朝晩が21%、土日が19%、老後の時間が33%くらい。老後を含まなければ仕事とプライベートの割合は50%ずつくらい。プライベートに最も影響を与えるのは結婚するパートナーで、極端に言うと、仕事とパートナーを決めることが人生設計といえると思うんだ。過ごす時間を考えれば、就職活動よりパートナー選び(婚活)の方が大事(笑)」。キャリア設計というと、仕事についてばかりが語られるが、それはあくまでも「人生の一部分だ」と力説された。

求められるのは長いスパンでの人生設計

キャリア形成を指導する宇野健司先生

 宇野先生は自らを例にとって、人生設計のモデルを示してくれた。例えば、30代までのスパンでみると、目標を「新卒3社目、30歳までに、どの会社でも通用する専門性を身に付ける」と設定する。専門性が身につきそうな会社を調べて、それに合わせ早めにインターンや就活を始める必要性が見えてくる。家庭についても「20代後半で結婚し、30歳までに第一子を出産すること」を目標とすれば、学生のうちから異性と付き合って、結婚相手を見つけたり、どんな人と相性が合うのかを知っておいたりする必要性が見えてくる。

 仕事と家庭以外でも、住環境や金銭管理、時間管理、健康管理において同じことが言えるそうだ。健康面では、「学生時代の体型を維持するため、週1回は運動すること」を目標にすると、スポーツ施設の近くに住み、運動を習慣化させる必要性が見えてくる。長い目で見て目標を立てると、今やるべきことが明らかになってくる。逆に、はっきりとした目標を立てずにいると、今やるべき大事なことをやり損ねてしまう可能性が格段に大きくなってしまうのだ。

就活をキッカケに広がる視野とコミュニティ

 宇野先生はなぜこのような学生への支援を始めたのか。「就職活動はもちろん大事で、それを気軽に相談できるコミュニティがあればと思った。このグループでできた繋がりを続けて、10年後に成長したOBたちが就活生を助けるといった好循環を、まず早稲田から作りたいと思う。学生のうちから知り合っておくのと、社会に出てから知り合った人とでは、同じ社会人でも相談しやすさが違うし、何より自分の人生を決めていく上でとてもいい刺激になる。せっかく大学でできた繋がりだから、大学卒業でゴールにするのは勿体ないじゃないか」

早稲田大学の自習スペースで語ってくれた

 宇野先生は就職活動だけが目的ではなく、就活のその先まで見据えたコミュニティを作り上げている。企業に就職するとどうしても失われがちになる他社の同年代の人との「横の関係」を学生に提供し、社会人になった彼らのキャリア形成にも携わっているのだ。

 就職活動が目前に迫ると、どうしても視野が狭まってしまう人は少なくないだろう。宇野先生は「就職活動は人生の大枠を決める第一歩ではあるが、今の時代は容易に転職ができる。むしろ働くことで視野を広げてほしい。新卒時に就職した企業で一生過ごさなくてもいいのだから」と語る。最も大事なのは、その先を見据える力、30代への筋書きが自分の中で出来ていることなのだという。

キャリア形成では就活も通過点

 「就活は頑張らなくてもいい」とか、「1年生から就活を意識する必要は全く無い」とか、そのようなありきたりなまとめをするつもりはない。目の前の難題にとらわれ過ぎず、先のキャリアを意識して進めることが、就活の中で自分を見つける一つのヒントになるのかもしれない。キャリア形成≠就職活動であることを意識することが、学生にとって結果的にはより豊かなキャリアを築けることになるだろう。

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