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早稲田大ワークショップ2017(5)「お前の人生を取り戻せ」
~内定を蹴り世界一周の旅に出た僕が
君たちに言いたいこと~

authored by 早大ワークショップ受講生
早稲田大ワークショップ2017(5) 「お前の人生を取り戻せ」~内定を蹴り世界一周の旅に出た僕が君たちに言いたいこと~
 この記事は、早稲田大学の2017年度学部横断型授業「プロフェッショナルズ・ワークショップ」の日本経済新聞社実施講座を受講した学生による作品です。昨年、一昨年に引き続き、今年も4月から6月まで講座を実施しました。「日経カレッジカフェのコンテンツを作成しよう」という課題に対して、33人の学生がメディアの仕組みや取材、記事の書き方について学び、6グループに分かれて実際に独自記事を作成しました。他のグループの作品も順次、掲載します。
【早稲田大ワークショップ2017】
最優秀賞「留学生も早大生~WASEDAは本当にグローバル?~」
優秀賞「つぶやくことが仕事です!Twitterの「中の人」は何をしている!?」
「あなたの日常はもっと輝く 東大襖クラブに学ぶ大学生の『生き方』」
「就活だけでは不十分?!元早大講師に聞くキャリア形成」
人生の先輩から学ぶ~今からみんなが出来る「自分の持ち方」~

 「学生のうちに好きなことをやった方がいい」。使い古された言葉だ。言うのは簡単だが、実行するのは想像以上に難しい。まして、大手企業の内定を蹴って世界一周の旅に出るともなれば、その決断にはどれほどの困難が伴うのだろうか。それをやってのけた男がいる。今回の取材対象者、清澤一輝氏である。

人生を、取り戻しに行きました

 インタビュー当日、取材場所に指定された渋谷の人混みの中で、我々は清澤氏を待っていた。人混みでの待ち合わせとあって、清澤氏を見失うのではないかという不安を感じながら、ハチ公前で集合時間を迎えた。杞憂であった。間もなく、ひと際輝く瞳を持ったひとりの人物が、雑踏の中から我々の前へと歩み出て来たからである。取材開始前にもかかわらず、その場で熱く語り始めた清澤氏。当初は就活生に向けてのインタビューであったはずの内容も、日本の学生全体、さらには今日を生きる人々皆に向けた、より広範なものとなっていった。

清澤氏は“常識を疑う”という姿勢を旅を通して学んだという

 「世界1周しているので、周りからも旅慣れしていると思われがちなのですが、僕自身は1回もバックパッカーをしたことがなくて、そもそも一人で海外の経験もなくて、英語も話せなくて。ただ、行ってみたいっていう気持ちだけで行ったんです。でも、無知過ぎたからこそできた」

 「確かに不安はあるし、リスクマネジメントもしなきゃだけど、だからといって怖いからやらないというのはちょっと違うなと。内定も断って、この先どうするのか不安もあって。でも、結局今の僕でも、尊敬する誰かでも、不安は生まれると思うんですよね。不安の先に、やるかやらないかがある訳で、どっちにしろ不安があるのであれば、行ってみようと思いました」

 清澤氏が世界一周の旅に出たきっかけのひとつは就職活動だった。しかし、上手くいったはずの就職活動が清澤氏に与えてくれたのは達成感や安心感ではなく、「人生決まっちゃったな」という焦燥感だったという。そして長い自問自答の末たどり着いたのは、自らの"心のコンパス"に従い、無理を承知で人生を取り戻すという決断であった。

僕が前例になればいい

 清澤氏は語る。「前例が無いから、(日本では)常識じゃないんだって気付いたんですよ。じゃあ僕が前例になろうかな、ということで決めたんです」。「4年生でみんな就職活動して、新卒じゃなかったら大きい会社は入れませんよとか、ワケが分からない」

ゾウにまたがってラオスの森を進む清澤氏

 旅先で出会った海外の若者達がギャップイヤー(大学を卒業してから職に就くまでの猶予期間)を使って、自分の好きなことを自由に実践してから社会に出ていく様子を見て衝撃を受けたという。自身も大学を1年間休学して旅に出た経験をもとに、日本の画一的な採用システムに警鐘を鳴らす。「(日本のシステムが)若い可能性を潰しているなと。社会の仕組みとして、大学卒業したらすぐ就職っていうのを変えていきたいな、と思っています」

 とはいえ、画一的なのは採用システムばかりではない。日本の多くの若者の将来への向き合い方も画一的になってしまっていると清澤氏。インターネットの普及により、自分の頭で考えることなく、安易に正解を探せるようになってしまった結果、「他人に追従しがちだ」と言われる日本人の性癖はより強化されつつあるように見える。ただ、同氏の目標は、そうした日本にはびこる常識やマニュアルを打破するところにはない。あくまでも世間の常識や他人の意見は重要であると前置きはしたうえで、若者たちが一歩を踏み出すきっかけを作ることが大切なのだと語る。「十人のうち一人でも行動してくれればいいや、と今は思っています。それが少しずつ道を広げていって、みんなが行くなら、じゃあ俺も行ってみようって思う人が出るかもしれませんからね」

若者の力で日本を面白く

 日本の若者への不満を漏らした清澤氏だったが、こうした啓蒙的な姿勢を取るのも今の日本の若者に期待しているからなのだという。「少子高齢化とか言って日本の力が落ちているっていうなら、もっと若者の可能性を上げちゃえばいいと思うんですよ」

 旅にこだわる必要もない。ピアノでもバイオリンでも、ボランティアでも、或いは小説の執筆でも、何か新しい世界に踏み出そうとしている若者を清澤氏は激励する。何にでもチャレンジできる環境は、仕事や家族といった社会的地位を持たない、背負うものなき学生だからこそ享受できる特権だ。「最初はみんな初心者なんですよ。それを忘れないでほしいです。人生っていうのは白紙みたいなもので、何書いてもいいんです。何書いてもいいのに、何もやらないっていうのは少し勿体ないかな。僕は白紙のままにしたくはないと思いますね」

 "まず行動してみること"。これこそが今の日本の若者に足りない力ではないか。たとえどんなことでも、行動することに無意味なことなどないと清澤氏は続ける。失敗さえも例外ではない。「失敗って何だろうなって思って。見方を変えれば全然失敗じゃないのにって思います。若い時の失敗は特にそうで、俺には向いてなかったなと知るだけでも経験値になりますから」

一歩を踏み出せずにいる君たちへ

ボリビアのウユニ塩湖にたたずむ清澤氏

 「とりあえずやってみようって思っても、不安は不安です。僕も不安だったし(笑)。やることにはリスクが伴うと思います。内定断って世界一周の旅に出るなんて、傍から見ればリスクでしかない。でも今の世の中、やらなかったから人生がつまらなくなることもある。やるもリスク、やらないもリスクなら、面白い方をやった方がいい、みたいなのがすごくあります。やらなかった後悔はどんどん大きくなるんです」

 清澤氏は自信を持って語ってくれた。それは彼の旅を通じて得られた実感に基づくものであり、同時に日本の若者が持つ可能性への確信に裏付けられてもいる。インタビュー中、我々取材班は、堂々とこれからの展望について語る同氏を前にほとんど圧倒されてしまっていた。しかし、当の清澤一輝の願いは、自らがそうした唯一無二のカリスマ的存在として扱われるというところにはない。氏が求めるのは共に明日を切り拓く友人であり、共に競い合う好敵手なのだ。果たして私たち自身はそうした清澤氏と対等に渡り合える人間になれるのだろうか、ということを自問自答しつつ、今回の取材を終えた。

【清澤一輝氏:プロフィール】
 大学4年次に世界一周を経験。今年の3月に中央大学文学部を卒業。ライター/カメラマンとして旅をしながら世界中で記事を書き、雑誌やウェブサイトに旅の内容を掲載。現在も引き続きライターを中心に幅広く活動している。

E班「En爺」 山田楼里 安藤千香子 渡邊能寛 井澤樹里 佐藤壮馬 魚山裕慈

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