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[ career-働き方 ]

曽和利光の就活相談室最終面接
会社のことより自分のことを話そう

authored by 曽和利光
曽和利光の就活相談室 最終面接会社のことより自分のことを話そう

 就活生の皆さん、こんにちは。人材研究所(東京・港)の曽和利光です。この時期になると就活は最終局面、という人も多いのではないでしょうか。最終面接では1次や2次などの初期面接などと違い、「志望動機」が重視されます。しかし、私の印象では就活生の8割方はあまりうまくできていません。差をつけるにはどうしたらいいのか、一緒に探っていきましょう。

今回の参加者
▽南沢恵(福岡大学薬学部6年)
▽山本圭太(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部4年)
▽渡辺菜々(東京大学工学部4年))
※希望する方の氏名を仮名にしてあります。

「WHY」に重点を

志望動機は「8割の学生がうまくない」という(模擬面接する曽和さんと就活生)

 まず、志望動機を山本さんと渡辺さんに話してもらいましょう。想定する会社の業種もお願いします。

山本さん はい、私は大手航空会社です。私は果敢な挑戦をいとわない御社の姿勢に感銘を受け、私が将来なりたい姿と一致しまして志望しました。例えば御社は航空連合の垣根を越えて外資航空会社と提携したり、ニッチな路線をつないだりして、とても挑戦的な印象を受けました。世界の空白地域との路線開設など、先見性をもった挑戦ができるマインドを持っているのが魅力です。学生時代に野球をしてきて、いざというときには飛び込む泥臭いプレーをしてきました。そうした心構えを忘れずに、貢献できるのは御社だと思い志望しました。

渡辺さん 日用品メーカーです。志望した理由はサークル活動の経験を通じて、ものづくりで人々にポジティブな影響を与えたいと考えているからです。いままで培ってきた自分の強みを、人々の日常生活に最も近い消費財を通じて人々の幸せを支えたいと考えております。

 その中でも確固たる基礎研究と事業分野の広さを持っているところに強く引かれました。日用品メーカーというと、基礎研究としては例えば生理用品やオムツ、シャンプーのようなものが主体との印象を抱いていました。しかしコンクリートの減水剤やインクジェットなど他産業に貢献できる研究開発もしています。さらにケミカル事業からパブリックホームケアまでさまざまな事業に携わっていて分野も広く、それぞれで強い商品を持っているので御社を志望しました。

 はい、ありがとうございます。志望動機として、形式的には悪くはないと思います。ただ、多くの就活生と同様に、欠けている部分がありました。これについて詳しくご説明しましょう。

 初期面接では、どんな人もたくさんの会社を受けている状態ですので、志望度についてはそこまでは重視されませんでした。しかし人柄など一通りの適性を確認したあとの最終面接となると、「本当にウチのことが好きなのか」という志望動機が重要視されます。

 志望動機の中身は「WHAT」と「WHY」の2つで構成されます。2人はそのうちの「WHAT」についてはしっかり言えていました。この会社のどんなところが好きかという部分です。山本さんなら「果敢な挑戦」「世界の空白地帯を埋めている」でしょうし、渡辺さんなら「事業分野の広さ」「しっかりした基礎研究」というところだと思います。就活生で一番多いのはこのWHATだけしか言わないケース。2人が言ってくれた志望動機も、ご多分に漏れず事業説明をしただけで、面接官は「まーまー、確かにウチはそうだよ」と思うだけです。

 では「WHY」とは何なのでしょうか。これは「なぜ、あなたはウチが好きなのか」「ウチじゃないとだめなのか」という部分。志望動機を最後に重視する理由は、入ってから頑張ってくれるくらいの「根っこ」の生えた動機を持っているかを確認したいからです。その中にみなさん自身のことが出てこなかったら、面接官はこの学生が会社で本当に頑張れるのかわかりません。WHYを訴えるときには、理屈や一般論ではなく、なぜそういう価値観になったのか、皆さんのライフヒストリーから説明するのがいいでしょう。

例をたくさん挙げるのも手

面接官は「根っこ」のある話を聞きたがっている

山本さん 大学3年生の夏に、バックパックで1人で2~3週間国内旅行しました。そのときこだわったのはスマートフォン(スマホ)を使わないことと、青春18きっぷで移動することです。何でも調べられる世の中で、調べたら面白くないと思ったからです。日本の中でも地域特性があって、そういう面を受け入れる力が一人旅でついたと思います。

 なるほど。ただ、もうちょっと前に根っこはないですか。青春18きっぷや、スマホを使わないという考え方を生み出した要素が何かないですか。それがわからなければ、「ハードルが高いのが燃える」という実体験が他にもあれば、いくつも提示したほうがいいです。

山本さん 「自分を責めるのが好き」なエピソードがいくつかあります。高校3年のとき1週間走るだけのトレーニングを行いました。坂道ダッシュを50本をやるとき、燃えるというか......。

 なるほど。ここまで聞くと面接官は満足するでしょう。高い壁を前にすると燃えるという理由がすごくよく分かりました。

 渡辺さんの場合、「基礎研究をしっかりして他分野までやっている。事業分野が広い」というのは会社の話ですね。そのほうがいいと思うようになったのはなぜかという話はありますか。

渡辺さん 会社は今後注力していくヒューマンヘルスケア事業の中で「食品」をあげています。私の祖父が高コレステロールで糖尿病になったり、心筋梗塞になったりしてドクターヘリで病院に運ばれた経験があります。そういう人が身近にいることがあって健康にすごく興味を持っていて、その分野で活躍したいと思っています。

 それ、めっちゃいい話じゃないですか。それだけ身近な問題があってそれを解決したいという思いがすごく自然に表れています。偉大な業績を残した人の多くは身近な問題を解決しようとするケースが多いですからね。

 では、南沢さんも志望動機を話していただきましょう。

南沢さん はい、私は製薬会社です。まず、御社の考え方とそれに伴う行動に感銘しました。1つは医薬情報担当者(MR)個人が新しいサービスを通じて、価値を生み出すと断言しているところです。御社が出している薬はすごく難易度が高く、使い方が難しい薬ばかり出されています。ただ単に普及させるのか、お医者さんに寄り添って普及させるかで、価値はだいぶ違います。御社のあるMRの社員は専門医の話を聞いて非専門医の薬の使い方に対してあんまり良く思っていなかったと感じたそうです。そこで専門医と非専門医をつなげて、専門医が非専門医に薬の使い方を伝える試みについて教えてくれました。

 もう1つは御社の人事の社員と話を聞いたときのことです。会社説明の際にどういう話し方をすれば相手に響くかについてすごく考えていると感じました。実際に私も人を喜ばせる仕事をしたいので、MRを通して医療に貢献したいと思い志望しました。

 南沢さんも、会社やその社員をたくさん褒めたという感じですね。単に薬を運ぶのではなく、間に立って付加価値を出すのがすばらしいということですが、なぜそう思うようになったのでしょうか。

「会社説明」はできるだけ短く

志望動機で話す会社説明は短くていい

南沢さん 付加価値を付けるということは間接的に人に喜びを与えます。私は3人きょうだいの第2子として生まれました。親は兄と下の子に手を焼いていて、比較的しっかりしていた私は親に苦労をかけたくないという思いが常にありました。親が「ありがとう」と言ってくれるのがうれしかったです。

 もう一つは親の転勤で、幼稚園から高校まで10回も引っ越しを繰り返してきました。新しい環境を飛び込むとなると、人に支えられないといけません。人に助けられたので今度は自分が新しいことして恩返ししたいというのがあります。

 いい話ですね。そういうことを言うと根っこが生えているなと思います。

南沢さん 「WHAT」の部分だけでだいぶ長くしゃべった印象で、根っこの部分をしゃべるところまで時間内にたどり着けるか不安です。具体的な例は2つ言いましたが、2つとも省いたほうがいいのでしょうか。

 会社説明は短くして抽象度を高くしてはどうでしょうか。「御社は間に入るMRという付加価値を大事にしている。例えば......」というようにして1個にしてみるというように。文章に書き起こしてみればわかると思いますが、同じことを繰り返していたり、不要な話が入っていたりするので、うまく校正すれば収まります。

 とにかく会社の説明は長くはいりません。皆さんは「勉強してきた感」を出したいのかもしれませんが、会社のことは面接官がわかっていますから。WHYこそが、あなたが伝えるべき情報です。とにかくここに重点を置きましょう。

曽和利光(そわ・としみつ)
 1971年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に「就活『後ろ倒し』の衝撃」(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。
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[日経電子版2017年6月21日付]

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