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[ liberal arts-大学生の常識 ]

変わる漫画喫茶
食事充実やVR、ライバルはスマホ

変わる漫画喫茶食事充実やVR、ライバルはスマホ

 漫画喫茶といえば小さなスペースにフリードリンク、そして1時間で数百円という利用料金の安さ、手軽さをイメージする人も多いだろう。かつては定住する住居がなく、寝泊まりする場に利用する人々のことを指す造語「漫喫難民」という言葉も流行した。ただ、そんなイメージとは裏腹に漫画喫茶の利用料金は一貫して上昇している。日本複合カフェ協会(東京・千代田)によると、2016年の漫画喫茶の平均客単価は前年比3%上昇の1281円で調査を開始した08年の1124円以降、右肩上がりが続く。なにが起こっているのか。

まるで南洋の高級リゾート

 5月中旬、横浜市都筑区北山田。最寄り駅から徒歩10分程度のある店舗に入ると、インドネシアの民族音楽「ガムラン」が流れていた。天井からはランタンをモチーフにした電灯が垂れ下がり、オレンジの光が受付を照らしていた。

快活CLUBの食事メニューは50種以上

 ここは漫画喫茶「快活CLUB 横浜北山田店」。一般にイメージされる漫画喫茶の店舗とは趣が異なる。受付で流れる音楽もそうだが、漫画を読んだり備え付けのパソコンを利用できるブースまでは赤いじゅうたんが敷かれ、南洋の高級リゾートホテルを思わせる造りだ。

 「現在はきれいな店舗に処理速度の高いパソコンをそろえ、レストラン並みの食事を出すのが主流」と話すのは快活CLUBを運営するVALIC(横浜市)の中林佑烝代表取締役会長。「客単価の上昇は漫画喫茶業界の業態の変化を反映している」と強調する。

 快活CLUBの食事メニューは50種類以上。「海老フライ&ハンバーグカレー」(650円、税別)、「チキン南蛮バーガーセット」(650円、同)、「ハッシュドビーフオムライス」(690円、同)などファミリーレストラン顔負けの食事が並ぶ。サービスをドリンクバーだけに絞っていた従来型とは大きく異なる。

 「売り上げに占める食事の割合は1割強で年々伸びている。客単価の上昇に不可欠な要素のため、将来的には2割以上に引き上げたい」(中林氏)。同社は30分250円程度のブース料金に、10分100円程度の延長料金を加算していく基本料金を設定している。食事などのオプションを充実させ、客単価を上げる戦略だ。

 漫画喫茶業界2位のランシステムは昨年7月、複合カフェ「自遊空間NEXT蒲田西口店」(東京・大田)を開いた。店内には緑色のシートで覆われたスタジオや木目調の個室が30室ほどならぶ。人気アニメなどの仮想現実(VR)映像が楽しめる部屋だ。VRを利用しながら通常のブースを使う顧客もいるため、客単価の上昇につながるという。

 漫画喫茶の変化を促す要因として大きいのがスマートフォン(スマホ)の普及だ。漫画喫茶のキラーコンテンツであった漫画はスマホのアプリで手軽にどこでも読めるようになりつつある。暇をつぶすにはスマホゲームで十分という消費者も多い。「暇つぶし産業」とも呼ばれる漫画喫茶業界にとっては、かつてない競合相手というわけだ。

漫画以外の価値を提供

 各社は店舗の清潔感を高めつつ、同時に単価の高い食事や漫画以外の価値をオプションで提供する。これまでのように1時間数百円で漫画を充実させ、できるだけ長く滞在してもらう戦略から方向転換しなければ生き残りは難しい。

 かつては「漫喫難民」という造語が流行った漫画喫茶。最近では機能の充実からカラオケ、ダーツにレストラン、そして漫画喫茶の機能を持った「複合カフェ」という名称が普及するなど、その業態は変貌を遂げている。客単価の上昇は業界の変化を如実に物語っている。
(商品部 飯島圭太郎)[日経電子版2017年6月1日付]

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